軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お宝

逃げ惑う海賊たち。

海賊騎士たちも抵抗するが、多くは兵士に囲まれ倒されていく。

訓練を受けた兵士に囲まれては、騎士たちも数に押され倒れていくしかない。

副官の男が船内を逃げ回っていた。

「ゴアズの野郎。一人だけ逃げやがった」

自分たちに乗り込んできた敵の陸戦部隊の相手をさせ、いつの間にかいなくなっていた。

副官も何とかこの状況から脱出する方法を考えている。

端末で艦内の状況を調べる。

「駄目だ。どこも潰されて逃げ場がない。くそ――こんなところで」

座り込む副官。

すると、刀を持った騎士が率いる敵の部隊に見つかってしまう。

逃げようとするが、どこに逃げても敵ばかり。

副官は両手を上げて降参のポーズを見せた。

「ま、待ってくれ! 俺の話を聞いてくれ」

刀を肩に担いだ小柄な騎士が立ち止まり、話を聞いてくれるのか部下たちにも「撃つな」と命令していた。

声からすると若い騎士のようだ。

(チャンスだ。ここは泣き落としでも何でも良い。とにかく生き延びてやる)

「お、俺はゴアズに利用されていただけなんだ。頼むから見逃してくれ」

騎士はヘルメットをかぶっており、表情が見えなかった。

「そうだ! お宝のありかを知っている。鍵は開けられないが、場所を教えるから見逃してくれ。この通りだ!」

土下座をする副官。

騎士は何も言わない。

だが、騎士の部下が端末を操作して報告をしていた。

「リアム様、この男はゴアズ海賊団では副官をしていた男のようです。幹部が利用されていただけとは思えません」

リアムと聞いて、副官が顔を上げた。

「リアム? お前が――いえ、貴方様でしたか! 道理で王者の風格があると思いました。どうでしょう、俺を雇いませんか? このゴアズ海賊団を仕切っていた俺を雇えば、貴方の力に――力に――」

急に視界が変わった。

体が動かず、それなのに視界が変わる。

無重力の中、自分の体が見えた。

それも正面から――。

「――ぇ?」

副官の意識はそこで途切れる。

戦場を見ていた案内人は唖然としていた。

宇宙空間――破壊された海賊船の上に立っていた。

「あり得ない。何だ。何だ、あの強さは!」

本来リアムが手に入れているはずがない力を前に、案内人は戸惑っていた。

一閃流などという流派はこの世界には存在しない。

そもそも、安士の嘘なのだ。

それを――リアムは再現してしまった。

「才能があったとしても、あの強さはどういうことだ? あの男、いったい何を教えてきた?」

自分が見ていない間に、想像以上に強くなりすぎていた。

まさか、ここまで強いとは思わなかったのだ。

案内人は両手で頭を抱える。

「痛い。胸が苦しい。くそっ!」

忌々しいリアムの感謝の気持ちが伝わってくる。

自分を信じている気持ちに――吐き気がする。

「こうなればなりふり構うものか。ゴアズ、貴様に特別に力をくれてやる」

腕を振るうと、黒い煙が発生した。

「私の流儀に反しますが仕方がありません。これも貴方が悪いのですよ、リアムさん。まったく、酷い目に遭いましたよ」

自分がちょっかいを出していた癖に酷い言い草だった。

船内に隠れているゴアズは震えていた。

錬金箱を両手で握りしめている。

「嫌だ。死にたくない。死にたくない。死にたくない。こんなところで死ねるもんか」

今まで散々暴れ回ってきた海賊団の団長だが、怯えて泣いていた。

そもそも、その豊富な資金源こそがゴアズの武器だ。

多少強いだけに過ぎない海賊なので、このまま見つかれば普通に殺されてしまう。

「い、命乞いをするか? だ、駄目だ。俺の懸賞金を得るために突き出される。そ、そうだ、こいつで財宝を用意すれば――」

錬金箱――もっとこれをうまく使えていれば、ゴアズは巨万の富を得ていただろう。

海賊などやらずにすんだのだ。

それなのに、好き勝手に暴れてきたからこのような状況になっている。

自業自得である。

もっとも、リアムに負けるなど誰も予想していなかったことだろう。

そんなゴアズを包み込むように発生する黒い煙。

「な、なんだ!」

聞こえてくる声は――案内人のものだった。

「ゴアズ、貴様にチャンスを与えてやる」

「だ、だだ、誰だ!」

怯えているゴアズの口に黒い煙が入り手込んでいく。

案内人が姿を見せると、ゴアズは苦しみ自分の喉を両手で握りしめた。

案内人が言う。

「誰でもいい。お前にリアムを倒すチャンスを与えてやる。このまま負けたいのか?」

ゴアズが首を横に振ると、案内人は口元を三日月のようにして笑う。

「それでいい」

黒い煙を吸い込んだゴアズは、錬金箱をその場に落としたが苦しみから解放されると自分の姿を見た。

「何だ? 力があふれてくる。それに、何も怖くない! 怖くないぞ!」

青黒い肌に染まった自分の体に違和感を覚えない。

むしろ、力があふれてくる。

ゴアズは笑みを浮かべた。

案内人も笑みを浮かべる。

「今のお前の肌はアダマンタイトの硬度を持っている。何も恐れることはない。今のお前は人を超えた存在だ。さぁ、行け!」

「小僧ぉぉぉ! 痛めつけて殺してやるからなぁぁぁ!」

走り去るゴアズを見送る案内人は、額に手を当てるのだった。

「――少し無理をしすぎましたね。少々、遊びすぎました」

異世界を渡るドアを何度も使い、無茶もした。

案内人にも疲れが見える。

「さて、これでリアムにゴアズは斬れないでしょう。調子に乗って乗り込んだことを後悔しなさい」

案内人がその場から姿を消すと、小さな光が錬金箱に近付いた。

その光は、アヴィドに入り込んだ光――そして、案内人を見張っていた光だ。

光は黒と茶色の犬の姿になると、通路を駆け出してリアムのところへと向かう。

通路を歩いていると懐かしい気配がした。

「――あれ?」

視界を横切ったように見えたのは、茶色の尻尾――犬の尻尾だ。

部下が俺に尋ねてくる。

「どうしました、リアム様?」

「いや、今――犬がいなかったか?」

「犬ですか? いえ、生体反応がありませんし、こんなところにいるはずがありません。まさか、犬にまで特殊な戦闘服は着せないでしょうし」

俺の見間違いだろうか?

少しばかり考え、尻尾に懐かしさを覚えた理由を考える。

――そうだ。

昔、前世で飼っていた犬だ。

ついでに、飼っていた動物が死に際に迎えに来るという話も思い出した。

俺の時は迎えに来なかったので、やはり迷信なのだろう。

迎えに来たのは案内人だったからな。

「今まで忘れていたな」

「何か?」

「いや、何でもない。それよりも、あっちに行くぞ」

尻尾が見えた方向へ歩いて行くと、綺麗な通路ではなくゴミゴミした通路に出た。

物が置かれ、倉庫のように使われている。

隠れる場所が多く、部下たちも慎重に進んでいたが人の気配はない。

犬もいないようだ。

ちょっとガッカリした。

溜息を吐いて下を見ると、床に何かが転がっている。

「何だ?」

拾ってみると、それは黄金の箱だった。

片手で持てるサイズである。

模様やら色々と装飾がされ、何だか得した気分だった。

「お、良い物を拾ったぞ。これは俺の物だ」

部下が俺を見て呆れていた。

「リアム様は黄金が好きというのは本当だったんですね」

「大好きさ」

「ミスリルやアダマンタイトはどうですか?」

「ん? あぁ、好きだよ。でも、黄金が一番だ」

部下たちが何故か呆れているような気がするが、ミスリルって銀だろ?

それにアダマンタイトなんて武器の素材みたいなイメージしかない。

貴重って言われてもね。

箱を眺めていると、またしても視界に犬の尻尾が見えた。

「――まただ」

「リアム様、先行しないでください!」

部下たちを置いて犬を追いかけると、行き止まりに辿り着いた。

だが、何だか不自然な気がする。

ヘルメットを操作して確認すると、隠し扉であるのが分かった。

「お宝の匂いがする」

部下に爆破させて隠し扉を破壊して中に入ると、そこには確かに宝の山があった。

だが、俺が思っていた金銀財宝ではなく、骨董品関係ばかりだった。

「――外れかよ」

部下が驚く。

「い、いえ、大当たりじゃないですか! 何だか高そうな物ばかりですよ」

「骨董品とか偽物のイメージしかないんだよ」

実際、バンフィールド家が所有していた骨董品の数々は偽物ばかりだったからね。

とりあえず確保するとして、俺は何かないか探してみた。

「お、刀がある」

随分と古そうな刀は、ファンタジー系のゲームに出てくる刀だった。

鞘とか柄のデザインとか、いかにもって感じだった。

割とシンプルで派手さはないが――。

手に取って見ると、刃が随分と綺麗だった。

「使ってみようかな」

「使わない方が良いんじゃないですか? 高価そうですよ」

「使ってこそだろ。いいんだよ。海賊から奪った物なんだから」

腰の後ろにある大きめのポーチに金の箱を入れて、俺はライフルやブレードを部下に持たせて刀を手に持った。

よく考えたら、俺が戦う必要がない。

「さて、次はどこに――」

「リアム様、緊急通信です!」

部下が叫んだ。

ゴアズを発見した陸戦隊。

だが、パワードスーツを着用した兵士たちが、黒いゴアズに片腕で投げられていた。

「くそっ! 何で銃弾を弾くんだ!」

「光学兵器も駄目だ!」

「退け! 俺がやってやる!」

バズーカを持ち出した兵士がゴアズに撃ち込むが、爆発と煙の中からゴアズは何事もなかったかのように歩いてくる。

兵士たちの顔が青ざめていた。

ゴアズが首に手を当て、そのまま首を回した。

「人の船で好き勝手に暴れやがって。全員、無事に帰れると思うなよ」

手に入れた力と、何でも出来てしまいそうな気分にゴアズは酔っていた。

今ならどんな騎士が相手でも負ける気がしない。

拳を握ると、人の手が出すような音ではない――金属が軋むような音が聞こえてきた。

「全員、俺の玩具にしてやる」

案内人が与えた力で、兵士たちを吹き飛ばしていくゴアズ。

銃弾もレーザーも爆薬も無意味。

兵士が機転を利かして、通路内の気圧を弄るが――それもゴアズに効果がなかった。

「こいつ、どんな改造をしやがった」

「サイボーグか?」

兵士たちがゴアズから離れようとすると、走って追いかけ殴り飛ばす。

掴んでは投げつけ、ゴアズはその力で暴れ回っていた。

「小僧を連れてこい! この俺様が直々に相手をしてやる!」

兵士の一人が大声で周囲に命令する。

「リアム様を船内から連れ出せ。絶対にこいつをリアム様に会わせるな!」

兵士たちが効かないと分かりつつも攻撃を開始すると、ゴアズはその中を暴れ回った。

「どうした? その程度か!」

兵士を殴るとヘルメットごと頭部を潰し、投げつけると曲がってはいけない方向へ体が曲がる。

一人の兵士を盾代わりに使うと、銃撃が止む。

「今度はこちらがお前らを――」

盾代わりにした兵士を投げ捨て、一歩踏み出すとゴアズの体中に傷が入った。

「――なっ、何!?」

驚くゴアズが自身の体を見れば、いくつもの傷が入っている。

一体何が起こったのか分からずにいると、真上から一人の人間が降りてきた。

降り立ったその男は、ゆっくりと立ち上がりながら刃こぼれの酷いブレードを見ている。

「これ硬すぎ」

少し笑っている様子だった。

ヘルメットをしており顔が見えない。

ゴアズは右手を伸ばして捕まえようとするが、ボトリと何かが落ちた。

そして、自分の右腕は肘から先がない。

「――え?」

驚いていると、目の前の小さな男がブレードを投げ捨てた。

手に持っているのはどこかで見たことがある刀だ。

骨董品を放り込んだ部屋で見かけたことがある。

とても貴重な刀だった。

「お、お前、それは俺の!」

男は笑っていた。

「これ? 貰ったんだ。それより、随分と暴れてくれたみたいだな」

肩に刀を担ぎ、笑っている男に左手を伸ばした。

今度は左腕が落ちる。

「――っ!」

ゴアズは何が起きているのか分からなかった。

それどころか、目の前の男は――いつの間にか刀を抜いていた。

感心したように刃を見ている。

「凄いな。刃こぼれ一つない。凄い切れ味だ」

失った両手。

ゴアズが混乱していると、切断面から黒い煙が吹き出してそのまま肉の触手となる。腕から鞭のようなものが生えた。

「お、お前がぁぁぁ!」

わけも分からず目の前の男を攻撃する。

だが、男はゴアズを無視していた。

「これいいな。今度からこれを使うわ。いや~、お宝の山だったね」

振り下ろした鞭は細かく斬り裂かれ、今度はゴアズの片足が斬られる。

膝をつくゴアズの体からは黒い煙が漏れ出していた。

「う、うぁ――」

先程までの威勢もなく、ゴアズは震えていた。

切断面から黒い血が流れ出ている。

敵が集まり、騎士を守ろうとしていた。

「リアム様!」

その名前を聞いて、ゴアズが顔を上げた。

眉間に皺を寄せ、鬼のような形相で目の前の男を見上げた。

「お前が――お前がリアムか!」

男は新しく手に入れた刀に夢中でゴアズを見ていなかった。

「そうだよ。俺がリアムだ。あと「様」を付けろ、ゴミ屑。それより、この黒いのって誰? 改造人間か何か?」

周囲の部下たちが多少疑問を持ちながらも答えた。

「皮膚の色は違いますが、ゴアズではないかと」

「こいつが?」

ゴアズの左腕に今度は鋭い角のような物が生える。

「俺を無視するなぁぁぁ!」

左腕を突き出し、リアムの心臓を貫こうとすると――今度は左肩から先が斬り飛ばされた。

リアムが膝をついたゴアズに視線を向ける。

刀を肩に乗せてゴアズの顔をしげしげと見ていた。

「お前がゴアズか?」

ゴアズは震えてくる。

(何だ。何なんだよ、こいつ! どうして銃弾すら弾く俺の体を斬れるんだ。おかしいだろ。こんなのおかしいだろ!)

混乱するゴアズは、リアムに命乞いをする。

「――ゆ、許してくれ」

「え?」

「助けてくれ。いえ、助けてください。もう二度と逆らわない。も、もしも見逃してくれるなら、とんでもないお宝を譲る。だから――許してください!」

そんなゴアズの申し出に、リアムは笑っていた。

笑って、

「――嫌だね」