軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

田中家、一家で転生確定。

結局、家族全員揃ったのは夕食の時だった。

父と兄は狩りに母はお茶会に参加していた。

エマの容態がよくなるまで、ずっと仕事も社交も無視して看病していたツケが回ってきたらしい。

申し訳ない。

まあ、母のお茶会と言っても王都と比べると気楽なものらしいけど。

そして……なにより……。

いつもより静かな食卓。

いつも娘ラブな父が物思いにふけっている。

いつも次男ラブな母が物思いにふけっている。

いつも妹弟ラブな長男が物思いにふけっている。

誰も何も話さない、ウィリアムはというと私の出方を窺っている。

10日ぶりに回復したエマがいるのに食事前に軽く体調はいいのか確認されたあとはずっと無言である。

激甘に育てられたこれまでを考えるとちょっと異常な光景とも言える。

デザートのプリンだっていつもはゲオルグ兄さまは譲ってくれるのに一言もなく食べ出している。

使用人たちも顔には出さないが不安そうに給仕している。

これは、各々転生に戸惑っていると言うことなのか?

食後に一人ずつ部屋に確認に行くのも面倒になってきた。

もろもろ説明、話し合い、一括で終わらせたい。

この際私は、エマなのだから奇行には家族と使用人たちは慣れてるらしいので思いきって確認してみようか……。

ガタンっ

おもむろに席を立ち息を吸う……。

家族全員の視線がエマに集まる。

この世界の言葉とは異なる前世の日本語で声を張る。

『田中家ー!点呼ー!番号ーー!』

するとすかさず父レオナルドが

『いーちっ』と言って敬礼しながら立ち上がる。

『にーいっ』と言って母メルサが敬礼しながら立ち上がる。

『さーんっ』と言って兄ゲオルグが敬礼しながら立ち上がる。

『ダーっ』っと言って私と弟が拳を突き上げる。

もはや点呼でも何でもないが昔から田中家では旅行の際の人数確認の儀式として定着している。

大人になって旅行が無くなった代わりに家族である程度、酔っぱらうと誰かしらが仕掛けて皆で爆笑する流れである。

家族以外に見られたとすればめちゃくちゃ恥ずかしいやつだったりする。

つまり、考える前に体が勝手に動くのである。……田中家の一員ならば。

いつもなら爆笑間違いなしの鉄板ネタだがみんなきょとんとしている……反射的にやっちゃっていたので仕方がない。別にウィリアムはしなくていいのに体に染み付いたダーからは逃れられない。

『20分後にエマの小屋に集合』

と更に日本語で言うと三人とも目を大きく見開いて頷いた。

くるっと回れ右して自室に戻ろう。覚悟はしていたが使用人の視線が痛い。マーサに怒られる前に早く逃げよう。

「はっっお嬢様!廊下は走ってはなりません!」

結局怒られたけど……。

後でウィリアムに普通に日本語で言うだけで良かったのにって言われたけどダーの儀式は田中家の証明である。

用心深いが家族全員が意思疎通する前に確実に田中家だと知る必要があったのだ。

決して思い至らなかった訳ではないのだ決して……。