軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第048話 誘拐(今週2回目)

レベル2の回復ポーションの交渉が決裂して帰ろうとすると、またもや誘拐されてしまった。

「今週、2回も誘拐されちゃったわ」

「いや、1回目は否定できんが、今回は自分で乗ってきただろ」

まあね。

「ハァ…………つまんないわー。ハリー、適当なお店に向かってちょうだい。奢ってあげるから」

「俺、ラーメンが食いたいな。日本のラーメンって美味いんだろ?」

海外のラーメンを知らんわ。

「それでいいわ。ニンニクマシマシでも頼みなさい。私は普通のやつにする」

今日はカエデちゃんのおにぎりしか食べていないし、ラーメンくらいなら食べられる。

「ラーメン屋ってどこだ?」

「そこら中にあるわよ。行きたいところを自分で探しなさい」

「そうするか」

ハリーは運転しながらスマホを操作するという警察にケンカを売る行為をしだした。

「ねえ、あなた達って暇なの? もしかして、ずっと私をつけてた?」

俺は隣に座っているクレアに聞く。

「いや、今回は偶然ね。本部に用があったんだけど、そうしたら偶然、あなたが本部に入っていった。だから慌ててタクシーを取りに戻ったのよ」

別にタクシーじゃなくてもいいじゃん。

普通に声をかけろよ。

「まあいいわ。何か用?」

「今日は殺気を向けないのね?」

「その価値すらないわ」

だって、もうステータスカードを見たし。

「そ、そう? なめられたものね」

「この距離で銃を頼るようではねー……ホントに軍人?」

「銃は脅しにいいのよ」

「なるほど。確かに」

ビビるわ。

特に銃が禁止なこの国ではそうだろう。

「でしょ? まあ、どういう反応をするかの確認よ。こちらとしては別に攻撃する意思はないしね」

嫌な心理テスト……

「そうしてちょうだい。で?」

用事があったんだろ?

「質問、いいかしら?」

「どうぞ」

「あなたは本当に何者?」

「黄金の魔女、エレノア・オーシャン。それ以上でもそれ以下でもない」

魔法が使えない魔女でーす。

というか、この前も言っただろ。

「あのアイテム袋は何? 1000キロなんて馬鹿げている」

「便利でいいじゃない? まあ、1000キロも入れることがないから持て余しているけどね」

俺はそう言って、持っているカバンを叩いた。

「それも1000キロかよ……」

ハリーがバックミラー越しにチラッとこちらを見ながらつぶやく。

「女子同士の会話に入ってこない。あんたは男子らしくラーメン屋を探しなさい」

「なあ、塩と醤油と味噌と豚骨で悩んでんだけど」

ほぼ全部じゃねーか!

「今日は醤油にしなさい。別の日に1人で店巡りでもしてよ。どうせ暇なんでしょ」

「そうするか」

ハリーがラーメン屋の検索に戻った。

「ねえ、売ってくれない?」

ハリーが黙ると、クレアが聞いてくる。

「売ってるわよ。オークションに参加しなさい」

「思ったより、敵が多そうなのよね」

「そうなんだ。それは良いことを聞いた。儲かりそう」

これは高く売れそうだ。

やったぜ。

「落札できるか不安なのよね」

「じゃあ、ダメだったら次も出してあげるわ。それまでにお金を貯めなさい」

「次…………ねえ、2000キロは持ってる?」

「2000? 欲張りねー。持ってないわよ」

輪ゴムを2000個も入れるの?

めんどい。

「他に何を売る気?」

他か……

やっぱりレシピを増やさないとな。

ずっと同じ商品だとインパクトに欠けてしまう。

「決めてない」

「ドロップ品じゃないの?」

「何をドロップするかを決めてない」

でも、落とすのはスライム君です。

「本部には何の用だったの?」

「ポーションを売ろうと思ったんだけどね」

「ポーション? この前の翻訳ポーションかしら?」

「いや、回復ポーションね」

俺が回復ポーションと言った瞬間、クレアの雰囲気が変わった。

「交渉はどうだった?」

「話になんない。なんか議員さんが出てきたんだけど、すごく安い額だったわ。しかも、脅されるし…………最悪」

「どうりでご機嫌斜めなわけね」

すげームカつくわ。

「やっぱりオークションがいいかも……」

サツキさんも言ってたし、そっちにするかなー。

「そんなことをするより、私に売ってちょうだい。私は商売もやっているのよ」

商売?

冒険者の副業かな?

まあ、俺もやってるし、そういうのもあるか。

「回復ポーションだけど、買う?」

「日本の相場は日本円で50万だったかしら?」

「レベル1でいいんだ」

今、レベル1なら400個くらいの在庫があったはず。

「ちょっと待って! レベル2以上もあるの!?」

クレアが驚いたように聞いてきた。

「レベル2の交渉だったのよ」

「ちなみに聞くわ。いくらって提示されたの?」

「100万円だって」

「は? レベル2の回復ポーションが?」

クレアが唖然とする。

「そうね」

「バカじゃない?」

クレアが鼻で笑った。

「そう思う。どうせ、差額が議員さんの懐に入るんじゃない?」

知らないけど。

「さすがにひどいわね。私なら唾を吐きかけるわ」

きったね。

「そこまではしないけど、捕まえるぞって脅されたからゲートを閉じてやるぞって逆に脅して帰ってきたわ」

冷静を取り繕うとしてたけど、目に見えて動揺してた。

汗がすごかったし。

ざまあ。

「え? できるの?」

「できるわけないじゃない。適当に言ったの」

「あなたが言ったら効果てきめんでしょうね」

「でしょ?」

謎の魔女だもん。

世間では私が本当にフロンティア人と信じている者もいる。

「それで決裂、ね…………」

「そうそう。それで? 買う?」

「いくらよ?」

「うーん、じゃあ、500万円」

カエデちゃんとサツキさんがそう言ってた。

「高いわよ。個人で使うならそれくらいは出すけど、転売なら元が取れない」

まあ、そうかも。

「どれくらい出す?」

「320万円ね」

うーん、まあいいけど。

「もう一声。今なら受け渡し用に100キロのアイテム袋をつけるわ」

持ち運びが面倒でしょうし。

「そのレベル2の回復ポーションはいくつ売ってくれるの?」

「今は100個しか持ってないわね」

「400万出しましょう」

回復ポーションが4億で売れる……

320万の場合は3億2000万円だから差し引きで5200万で売れたアイテム袋が8000万か……

「いいでしょう」

売れれば何でもいいや。

「良い交渉ができて良かったわ」

あ、この反応はもっと出したな。

まあ、いっか。

在庫はほぼ無限だし。

「でもさ、あなた、アイテム袋のオークションに参加するのに4億も出すつもり?」

「…………今じゃなくてもいい? 正式な契約はオークションの後」

まあ、今すぐお金が欲しいわけじゃないからそれでもいっか。

「いいわよ」

「それとさ、できたら他のところには売らないでちょうだい」

「なんで?」

「あなたが何千個も市場に出したら価値が暴落するかもしれないじゃない。そうしたら私は破産よ」

あー、そうなることもあるのか。

「レベル2の回復ポーションだけでいい?」

「ええ。他は関係ない」

「個人で売る分には? ほら、友人に数個売るって感じ」

「それはいいわよ。お店とかギルドに大量に卸すなってことだから…………あなた、友達っているの?」

…………………………。

「ギルドに言って、あなたはオークションに参加できないようにするわ」

「ごめんなさい」

ケッ!

俺にはカエデちゃんがいるわい!

「話は終わったか? なあ、エレノア、この店でいいか?」

ハリーがスマホを見せてくる。

「知らないわよ。そこでいいわ。行きましょう」

ラーメン屋が都内にいくつあると思ってんだ。

「ねえ、ハリー、本当にこのメンツでラーメン屋に行くの? 日本に来たら寿司、天ぷらじゃないの?」

クレアはちょっと嫌そうだ。

「そんなもんはアメリカでも食えるだろ。アレックスが日本に来たらラーメンを食えって言ってたんだよ。世界が変わるってよ」

アレックスって誰だよ。

「ふーん、グルメのアレックスが言うならそうかもね」

ラーメン好きのグルメ?

そいつ、大丈夫か?

そうこうしていると、タクシーが止まった。

「ここだぜ。地理を覚えて良かったぜ」

窓から外を見ると、確かにラーメン屋がある。

でも、結構な人が並んでいた。

「私、並んで待つのは嫌よ」

「私も」

「任せとけって。外国人の必殺技を見せてやるぜ」

ハリーがそう言って、車を降りたため、俺とクレアも顔を見合わせながら車から降りる。

すると、ハリーは並んでいる最後尾に向かった。

「なあ、兄ちゃん、俺はこれから仕事もあるし、日本に来れる機会はそれほどない。でも、どうしてもこの店のラーメンを食いたいんだ。譲ってくれねーか?」

ハリー……

必殺技ってそれかい……

「国の恥ね」

クレアも呆れた。

「あ、はい。どうぞ。あの、ハリーさんですよね。握手してもらってもいいですか?」

並んでいた学生っぽい男子がハリーにお願いする。

「おー! 俺を知っててくれたか!」

ハリーはそう言って、男子と肩を組み、握手をした。

「もちろんですよ!」

すると、並んでいる人もハリーに注目し始める。

「嫌だわー」

「ねえ、エレノア、私達は別のところに行かない? 私はやっぱり寿司か天ぷらがいい」

ナイスアイディーア!

「あ、おい! クレア、エレノア! お前らも握手くらいはしてやれよ」

こっちに振んな!

帰ろうとしてんのに!

だが、時すでに遅し、並んでいる人が一斉にこっちを見てきた。

「あいつ、最悪」

「ホントね」

こうなったら行くしかない。

俺とクレアはお互いに嫌そうな顔をして、ハリーのもとに行くことにした。