軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第030話 テレビ

俺はホテルの一室でカエデちゃんとビールを飲みながらテレビを見ることになった。

「先輩、キョロキョロしすぎですね」

テレビを見ているカエデちゃんがめっちゃ嬉しそうに笑う。

テレビの中のエレノアさんは椅子に座っており、キョロキョロと目が動いていた。

「緊張してたんだよ。テレビなんて初めてだもん」

「シロウト感満載ですね」

シロウトだもん。

「でも、先輩、お化粧がばっちりです。髪も結んでいますし」

テレビの中のエレノアさんは濃くはないが、化粧をしており、唇がちょっと赤い。

それに長い金髪も少し編み込んでいた。

「メイクさんがやってくれた。俺、できねーし」

「でしょうね。でも、綺麗ですよ」

「皆、そう言ってくれた」

おきれいですぅ!

そうかな? えへへ?

という会話をメイクさんとした。

「でも、服はいつもの黒ローブなんですね」

「俺も衣装に着替えるのかと思ったけど、あなたはそれで行ってくださいって言われた」

「ほぼトレードマークですもんね」

まあね。

番組が始まり、例の女子アナが番組の趣旨とかを説明をしている。

この番組はそんな大層なものではなく、エレノアさんと評論家、あと元冒険者さんのコメンテーターと討論というか、質問に答えるだけである。

しかも、間に司会役の女子アナさんが入ってくれたのでそんなに難しくなかった。

『では、今日のゲストです。今、時の人と言っても良いでしょう。黄金の魔女と噂されるエレノア・オーシャンさんです』

女子アナがエレノアさんを紹介してくれる。

「あ、やっぱ黄金の魔女なんだ」

「らしいよ。俺もそれで呼ぶんだ……って思ったもん」

魔女呼ばわりはちょっとひどいと思ったが、撮影終了後に番組プロデューサーからキャラ付けが大事って言われた。

プロがそう言うならそうなんだろう。

『はじめまして』

エレノアさんが挨拶をし、頭を下げる。

なお、動きが少し変である。

「固っ!」

「緊張だってば」

初めてだもん。

しゃーない。

『はい。よろしくお願いします。では、早速ですが、エレノアさん。エレノアさんは先日、アイテム袋をオークションに出されましたよね?』

『ふふっ。そうね。出したわ』

さっきまで真顔でガチガチだったエレノアさんが急に足を組みだし、優雅にしゃべりだした。

「急にどうした?」

カエデちゃんが隣の俺を見てくる。

「いや、この時の俺の頭の中はミステリアスという言葉しかなかった」

ミステリアス、ミステリアス!

ミステリアスでいかなくては!

と思っていた。

『そ、そうですか…………』

女子アナは急に豹変したエレノアさんに動揺したが、さすがはプロである。

すぐに立て直し、質問を始めた。

質問内容はそこまで難しいものではなく、この前聞かれたようなことばかりだった。

多分、気を使ってくれたんだと思う。

『では、次に専門家の話を聞いてみましょう。三村先生、どう思いますか?』

女子アナがそう振ると、画面が専門家のおっさんを映し出した。

この三村というのは冒険者に詳しい専門家の先生らしい。

でも、冒険者ではないし、フロンティアにも行ったことがない。

ちょっと意味がわからなかった。

『まずですねー、アイテム袋を一度に8個もオークションに出すっていうのが考えられません。何かのデモンストレーションか何かでは?』

あと、このおっさん、エレノアさんが楽屋に挨拶に行った時にお尻を触ってきたからちょー嫌い。

『なるほどー、エレノアさん、どうなんでしょう?』

女子アナがエレノアさんに振ると、画面がエレノアさんを映し出す。

なお、エレノアさんは完全に油断しており、お茶を飲んでいた。

『………………何のデモンストレーションでしょう? 私は一冒険者であり、デモンストレーションをする意味がありません。それにルーキーですのでスポンサーもおりません』

エレノアさんは慌てて、お茶を置き、優雅に答えた。

「なーにしてんですか」

「緊張で喉が乾くんだよ。お前もあそこに行けばわかる」

照明も暑かったし、緊張でのどがカラカラになるのだ。

『企業の回し者ではないと?』

おっさんが再度、確認してくる。

『もちろんです。先程も答えましたが、たまたまドロップしたものを売っただけです』

『たまたまアイテム袋を8個も入手したと?』

『はい、そうです。運が良かったです』

『ありえん! アイテム袋はそう簡単にドロップせん!』

『実際、ドロップしましたよ?』

『不正だ!』

『何の?』

これはマジで意味がわからなかった。

何の不正をしたらアイテム袋が手に入るんだよ。

『先生、すみませんが、次に移らせてください。では、元冒険者の土屋さんに御意見を聞いてみましょう』

女子アナはヒートアップし始めたおっさんを遮って、もう1人のコメンテーターに振った。

この辺は本当に助かった。

『僕もアイテム袋をこれだけ一度に手に入れたことが信じられませんね。お聞きしたいんですけど、スキルは何をお持ちで?』

この人は冷静だった。

だが、嫌な質問をしてくる人だった。

『それは言えません。自分のスキルは商売道具です。人に教えるものではありません』

『ギルドもすべてのスキルを把握しているわけではありません。毎年のように新スキルが発見されています。あなたも新スキルを持っているのでは? スキルを教えてくれるとわかるんですが』

ね?

嫌な質問。

だって、合ってるもん。

『お答えできません。ですが、私はステータスカードをちゃんとギルドに提出しておりますし、ギルドも私のスキルを把握しています。それでも新スキルの報告がないということはそういうことでしょう。私の所持スキルは一般的なスキルです』

剣術は一般的なスキルだ。

だから合ってる。

その後も評論家の三村や元冒険者の土屋がエレノアさんに質問していくが、エレノアさんははぐらかすように答え続けた。

『白熱してきましたねー。ですが、そろそろお時間のようです。エレノアさんには今後も出演いただき、話を聞きたいですね』

女子アナさんが良い所で話を切ってくれた。

この人は本当にいい人だった。

美人だし。

『そうね。機会があれば』

『ありがとうございます。あのー、最後に質問を1つ、よろしいでしょうか?』

女子アナさんが番組の締めの前に聞いてくる。

これはエレノアさんが事前に聞くように頼んだことだ。

『何でしょう?』

『エレノアさんは今回、オークションで8個のアイテム袋を出品なさいました。今後もこういうことがあるのでしょうか?』

『そうね……私は冒険者ですので、今後もレアなアイテムを入手したらそうなるでしょう』

『おー! それは素晴らしい。期待してもいいんですか?』

『ふふふ……ええ、そうね。実は先日、運がよく、またアイテム袋をドロップしたわ。だから、またオークションに出したわね』

優雅に笑ったつもりだったが、ちょっと悪い顔になってるな……

ミステリアスというか、本当に魔女やんけ。

『ま、また、ドロップしたんですか? 今度も100キロ?』

『いいえ。今度は1000キロです』

『は?』

さすがの百戦錬磨の女子アナさんも固まる。

『1000キロですね。これもこの前と同様に2個』

『はい?』

女子アナさんの笑顔が消えた。

『ふざけるな! アイテム袋の最大容量は400キロだぞ!』

三村のおっさんが怒鳴った。

『それは今まででしょう。記録は常に更新するものです』

『で、でたらめだ!! 1000キロなんてありえん!』

『では、そんなあなたに良い言葉を贈りましょう。ありえないという言葉がありえない。この放送後にギルドで告示されるでしょうからご自分の目で確かめてみてください』

入札しな。

落札できるとは思えないけど。

『…………魔女め! 貴様、何者だ!!』

『ふふっ。ご自分でおっしゃってますし、冒頭でも紹介してたじゃないですか』

あ、めっちゃ悪い顔をしてる。

完全に悪女だ。

『黄金の魔女…………』

元冒険者の土屋さんのつぶやきが聞こえた。

『……っと、では、番組はここまでです。先生も土屋さんもエレノアさんもありがとうございました! では、来週はAランク冒険者の特集です。また来週! お楽しみにー!』

女子アナさんは引きつった笑顔で強引に番組を閉めた。

「もう完全に魔女ですね」

番組が終わると、カエデちゃんがリモコンでテレビを消しながら言ってくる。

「だねー」

「前半は退屈でしたけど、後半は荒れましたねー」

「あれ、かなりカットされてるよ。おっさんがめっちゃヒートアップしてたしね」

バケモノとか呼ばれたが、さすがにカットされている。

おっさんは生放送じゃなくて良かったな。

「まあ、これで宣伝は十分でしょう。高く売れそうです」

「だなー。さてと…………」

テレビも終わり、今は11時半だ。

いい時間。

「飲みましょうか! オークション成功の前祝いです!」

「うん!」

チッ!

あれをコンビニで買ったのがバレたか?

俺達はこの後、飲みまくり、騒ぎ、朝4時に潰れた。

でも、朝起きたらベッドでカエデちゃんが俺に抱きつきながらスヤスヤ寝てたのがかわいかったので大満足だった。

北海道が寒くて良かったわ!