軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第194話 性転換ポーションの価値

TSポーションを飲むと、すぐに視界が上がった。

そして、鬱陶しい長い髪も無駄に重い胸も消えた。

「一応、初めましてと言っておこう。俺が沖田ハジメ。黄金の魔女でもなければ女ですらない。ただの冒険者だな」

俺は改めて挨拶をすると、座った。

「…………………………」

「…………………………」

王様とアルクは呆然と俺を見続ける。

すると、王様は手をこめかみに持っていき、アルクは徐々に顔が赤くなっていった。

「ねえ? つまり君は男?」

「見りゃわかんだろ」

「お風呂で僕の裸を見たの?」

あ、アルクの顔が赤い理由がわかった。

「お互い様だろ」

「いや、違くない?」

「違くない。俺は男だから男湯にいた。でも、そこに女のお前が来た。さて、悪いのは俺か? お前か?」

「え? 僕は女だけど、男に偽っているから男湯に行った…………君は男だけど、女に偽っているから男湯にいた?」

よくわかんないね。

「女湯でもいいんだけど、ヨシノさんがいるだろ? あの人は俺が男なことを知っているから別々にしたんだよ」

「あー、そうか。なるほど?」

「アルク、この事は深く考えるな」

正直、頭がこんがらがってきた。

「うーん、納得できない…………」

アルクは首を傾げながら悩んでいる。

「さっきのポーションは性転換ポーションか?」

ずっと黙っていた王様が聞いてくる。

「知ってんの?」

「ああ。文献でしか見たことないが、性別を自由に変えられるポーションだと……」

「合ってるね。でも、レアなアイテムなのか……俺は初期から作れたんだけどなー」

もしかしたら例の錬金術師も作れたのかもしれない。

「少なくとも、フロンティアの歴史上では見つかってない。どのモンスターが落とすのかもわからない伝説のアイテムだ。もっともエリクサーやオリハルコンといった伝説のアイテムと違って需要がほぼないため、知名度は極端に低い」

まあ、性別を変えるだけだもんな。

地球の場合、どっかで手術すればいい。

「まあ、俺はそれを作れるわけだ。だから俺はエレノア・オーシャンという隠れ蓑を作った」

「ステータスカードはどうした? あれは沖田ハジメのままだろう」

「いや、性別を変えたらステータスカードが出てきた。だから俺は沖田ハジメのステータスカードとエレノア・オーシャンのステータスカードの2枚を持っている」

まあ、沖田君のステータスカードは痛い彼女が肌身離さず持っている設定になっているからカエデちゃんが持っているんだけどね。

「ステータスカードが2枚? そんなことになるのか……」

「俺もその辺はよくわかんない。でも、その2枚のステータスカードは連動している。レベルもスキルも一緒だし、俺がレベルを上げればエレノアさんのステータスカードのレベルも上がっている。逆も一緒。違うのは名前だけ」

「うーむ……そんなケースは今までなかった……私達もステータスカードのことは未だによくわかってないからな」

本当に神様の贈り物なのかね?

「大体わかった? では、商売の話をしよう。この性転換ポーションは1度飲めば、もう一度、性転換ポーションを飲むまではどんなに時間がかかろうが、変わらない。要は効果時間がない」

地味にこれはありがたかったりする。

女物の服を着ている時に沖田君に戻ったら泣く。

逆はまだしもキツすぎる。

「つまり、これをアルクに飲ませろと?」

「それを判断するのは俺じゃない。王様がどう思い、アルクがどうするかだ。ただ、アルクが男になれば問題はなくなる。アルクは本当の男として次の王様になり、例の商家の娘と結婚すればいい」

万々歳。

「うーむ……」

王様が悩み始めた。

「エレノア……じゃない、ハジメ、性別が変わって何か感じた?」

アルクが聞いてくる。

「別に何も。似てねーなーとか弱っちいなーとかかな?」

下のナニがなくなった不安感もあったが、それはこいつには関係のない話だ。

「男になる、か……」

「嫌だったら別に戻ってもいいぞ。俺だってコロコロ変わってるし」

「そうみたいだね。というか、口調が変わりすぎて別人に入れ替わったとしか思えない」

「私と沖田君の口調が一緒だったらマズイでしょ。オカマになっちゃうじゃないの」

俺はエレノアさん口調でしゃべる。

「うん。気持ち悪いね」

俺も気持ちが悪い。

「まあ、お前は口調を変えなくていいだろ。そのままで十分。いけるいける」

「副作用は?」

「別にないな。あー、でも、男になるうえでのアドバイスをすると、金的はガチでヤバいぞ。ね?」

俺が王様に振ると、王様も深く頷いた。

「攻撃されなければいいんでしょ」

シロウトめ!

攻撃じゃなくても当たる時は当たるんだ。

そして、地獄の苦しみを味わうんだぞ。

「あとは何だろ? うーん…………」

おっぱいに異常な執着をすること?

でも、アルクもそうなるかはわからない。

単純に俺の性癖のような気もするし

「正直な話、性転換ポーションは俺しか使ってないから女から男になったらどうなるかはわからない」

よく考えたらエレノアさんになってもカエデちゃんやヨシノさんの胸部をよく見てるし……

ナナポン?

ふっ……

「そう……」

「まあ、お前に言えることは例の商家の子を手に入れることができるってことだ。さっき、俺が手に入れたいものは手に入れたって言っただろう? それは異性だ。俺は俺を癒してくれる子を手に入れた。今度、結婚する予定。子供も産んでくれると思う」

ぜーんぶ、俺の中の予定だけどね。

本人には何一つ言ってない。

「君は幸せ?」

「俺はそれはそれは辛い職場にいた。しかし、今は幸せだし、これからもそれを守り続けていく」

金はある。

カエデちゃんも逃げない……と思う。

「沖田、性転換ポーションを売ってくれ」

アルクが答えを出す前に王様が頼んできた。

「いいぞ。さて、この伝説のアイテムをいくらで買う? 今なら戻れる分も考慮して、永久交換券にしてやる」

元が小麦粉と水だからいくらでもやるわ。

「いくら、か……正直、伝説のアイテムの値段がつけられん。逆にいくらで売ってくれる?」

俺は王様にそう聞かれると、カバンから性転換ポーションを取り出し、飲んだ。

すると、俺の姿がエレノアさんに変わる。

「いくらねー……金ばっかりではつまらない。何と交換がいいかしら?」

「どうでもいいけど、なんで魔女に戻った?」

王様が呆れたように聞いてくる。

「このように簡単に性別を変えられるという商品のアピールね。それに商売は私の範疇だもの」

沖田君はただの冒険者であり、商売とは何も関係ない。

「そうか……では、黄金の魔女に改めて聞こう。性転換ポーションをいくらで売ってくれる?」

この問いに対する黄金の魔女の答えは……

◆◇◆

翌日、俺は朝からヨシノさん、アルク、ミーアに手伝ってもらいながら各種ポーションを作っていた。

「アルクって本当に女の子だったんだな」

フラスコに薬草を入れているヨシノさんがアルクを見る。

今日のアルクは鎧を着ておらず、白いドレスっぽいものを着ているため、女の子にしか見えない。

「本当にって…………わかってたの?」

アルクが驚いたようヨシノさんに聞く。

「まあ、なんとなくだな。私は弟がいるし、なんとなくわかる。あと常時、鎧っていうのが変だと思った。こんな窓も扉もない屋敷でそんなことをする必要はない。事実、王様は普通だった」

「そっかー。それは違和感がすごかっただろうね」

俺もヨシノさんほどじゃないが、変だなーとは思っていた。

「ああ。でも、私達には関係なかったからな。特に言及しなかった」

「うん、ありがとう。実は僕は女なんだ」

「ああ。ところで、なんで急にカミングアウトする気になったんだ?」

「昨日、男風呂に行ったら鉢合わせちゃったんだよ」

アルクが俺を見てくる。

「あー、なるほど。すまん、そいつに男風呂に行けって言ったのは私だ」

「仕方がないよ。この人、男でしょ?」

アルクが黙々と作業をしている俺を指差した。

「知ってるのか?」

「昨日、ハジメに会った。人が変わりすぎてびっくりした」

「あー、気を付けろ。沖田君は人間が小っちゃいうえにすぐにマウントを取ってくるぞ」

「ロクな男じゃないね」

こいつら、うぜーな。

「ミーア、しゃべれなくなる毒とかない?」

「ないです……」

「じゃあ、この眠り薬をこいつらのお茶に入れて」

俺はカバンから眠り薬を取り出した。

「やりません……」

使えねーメイドだな。

「な?」

「うん」

ヨシノさんとアルクが頷き合う。

「いいから手を動かしなさい。間に合わないでしょうが」

俺はペチャクチャしゃべり、手が止まっている2人を叱責する。

「うーん、無理じゃない?」

「エレノア、別に後でもいいよ」

こいつら、飽きたな……

ミーアは黙々とやってくれてるというのに。

「と言っても他にやることないでしょ? それとも帰る?」

今日も泊まるんじゃないの?

「僕、君達の世界に行きたいよ」

アルクが唐突に要望を出してきた。

「無理でしょ。フロンティア人はフィーレには行ってはダメ」

「僕、考えたんだよね。フィーレに行けないのはフロンティア人のアルクという王子様。でも、僕は存在しない人だからオッケー。君理論」

まあ、そういう考えもある。

「別に来るのはいいけど、どこに泊まんの?」

「君の家に泊めてよ」

えー……

「部屋がないわよ」

ウチは2LDKなんだ。

「アルク、私の家に来るか? 部屋は空いている」

ヨシノさんの家か……

Aランクだし、すごそうだな。

「いいの? じゃあ、そうする!」

マジで来るの?

いいのかな?

「あんた、王様に確認しなさいよ」

「じゃあ、してくる。ついでに精算もしてもらうよ」

アルクはそう言うと、ミーアを置いて、消えてしまった。

「いいの?」

俺はミーアに確認してみる。

「あんなに楽しそうなアルク様を見るのは久しぶりです。私には止められません」

兄弟姉妹も母親も死んでるもんなー。

アルクは大変だったのだろう。

「あなたも来る? アルクの護衛を兼ねた侍女でしょ?」

「私はフロンティア人ですので無理です。御二方にお任せします。どうか、アルク様をよろしくお願いいたします。あと、おみやげをよろしくお願いします」

ちゃっかりしてんな。