軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第192話 フロンティアの今

フロンティアには薬学もなければ、医学もないらしい。

「なんで失われたの?」

守らないといけない技術だろう。

「医者は戦争で皆、死んだんだ」

「戦地に送り込んだの? 全員?」

負傷兵とかがいるだろうから医者が戦地に行く理由はわかるが、全員はないだろう。

「もちろん、送り込まれた医者もいる。だが、直接の原因は別にある」

「ん? 戦争で死んだんでしょ?」

どういうこと?

「では、昼に言えなかった戦争の終わりを教えてやろう。戦争を終わらせたのは例の錬金術師だ」

すげー嫌な予感がするんですけど。

「こうなったら聞きましょう」

「ああ……各国が錬金術師を巡って争った。だがな、錬金術師は錬金術師でその状況に辟易していたんだ。人々を救うために錬金術を使ったのに人を救うどころか更なる悲劇を生んでしまった…………錬金術師はこの状況を良しとしなかった」

「その錬金術師はどうしたの?」

「錬金術の到達点…………賢者の石を作ったのだ」

あかんね。

何がダメなのかはわからないが、錬金術のスキルを持っている俺の脳内ではそれはヤバいという警告音が鳴り響いている。

「どういうものなの?」

「何でもだ…………何でもできる。詳しくはわからないが、そう言われている」

すごいね。

「材料はわかる?」

「人」

ほらね。

ヤバい。

「どれくらいの人が材料にされたの?」

「世界の9割が突如消えた」

あかん。

ヤバすぎる。

「私もレベルを上げたらそれを作れるようになるのかしら?」

「多分な」

これ、地球のお偉いさん方が知ったら間違いなく、俺は殺される。

「本当にこれ以上のレベルを上げるのはやめるわ…………正直に言いましょう。私は生命の水という人を甦らせることができるアイテムを作れる」

「生命の水か…………伝説のアイテムだな。あれを作れるのか…………」

「材料がないんだけどね。命の結晶だってさ」

「それもまた伝説のドロップアイテムだ。長いフロンティアの歴史でドロップした例は数回と言われている。まず手に入らない」

ダメじゃん。

使えねー。

「命は重いっていうことかしら?」

「そういうことだろう」

王様がゆっくりと頷く。

「ねえ? 生命の水って煙になる前に使えば蘇らせることが出来るアイテムなんだけど、フロンティアってなんで死んだら煙になって消えるの?」

俺は以前から思っていた疑問を聞くことにした。

「ステータスカードが原因だ。死ねばステータスカードも消える。そして、ステータスカードが消えた時に人は煙になる。実際、ステータスカードを破棄すれば、人は煙にならない」

ステータスカードのせいかよ。

「つまり、死んだ後にステータスカードを燃やせば、死体は残るってこと?」

「そうなる。なお、これは絶対に誰にも言ってはいけない」

「なんで?」

「皆がステータスカードを返せと暴動を起こすからだ」

ああ、そういうこと……

まあ、そうなるわな。

前にカエデちゃんに聞いたが、フロンティアで死んだ冒険者の葬儀は遺体もなく、本当にいたたまれない葬儀になるらしい。

それはこの世界でも一緒だろう。

もし、ステータスカードと遺体が消える因果関係を国民が知れば、絶対にステータスカードを返してほしくなる。

だが、それはスキルを管理したい国側にとっては不都合なんだ。

「まあ、あなた達とミーア以外に知り合いはいないし、こんなやばいことは地球でも言えないわ」

「そうしてくれ」

正直、だったら言うなとは思う。

「しかし、賢者の石か…………生命の水ですらヤバいと思っていたのにそれを遥かに超えるアイテムがあるのね」

「どんな願いも叶うアイテムだ。いらんのか?」

「私の願いはもう叶っている。あとはこれを守るだけ」

俺の願いは金とカエデちゃん。

「そうか……」

「というか、9割が死ぬって、私の大事な人も死ぬかもしれないじゃん」

「そうだ。例の錬金術師の最大の誤算はそれだった。あの錬金術師は賢者の石を作り、自らの家族を失った。賢者の石の材料は大量の人だが、その人を選べなかったのだ」

やはりランダムか。

「その錬金術師はその後、どうしたの?」

俺はわかっていることを聞く。

「自害した。自分の恐ろしさをようやく理解したのだ」

やっぱりな……

どう考えてもこの世界にその錬金術師はもういない。

死を選んだんだ。

「やっぱりそんなもんはいらないわ。私は魔女ではないし、愚かな錬金術師でもない。本当にその辺にいる庶民なのよ」

「そうしてくれ。本当なら錬金術師は殺した方が良いと思う。だが、現状、そうは言っていられない」

あ、殺す気だったんだ。

やめてよ。

「医者も薬師も賢者の石にされちゃったのね……本とかは残ってないの?」

「ほぼ残っていない。いきなり人が1割になり、それどころではなかったのだ」

まずは食料の確保だったり、生き残った人々をまとめることを優先か……

「回復魔法とかないの?」

「ある。だが、使い手が圧倒的に少ないんだ」

「だからポーションね…………アルクの兄弟姉妹も病気になったけど、助からなかった」

「そういうことだ。あと私の妻もだな」

王妃様がこの屋敷にいない理由はそれか。

「重い話を聞いちゃったわ。そら、危険を犯してまでフィーレに支援物資を要求するわ」

「ああ、食料を求めたのだ。お前の国はその他にも色んな物を送ってくれた。だから日本には多くのゲートを設置したし、貸しているエリアも多いんだ」

日本は本当にこういうのが上手なんだよな。

「ゲートを閉じた国は逆に攻め込もうとしたのね?」

「そうだ」

「もう1つ聞くわ。フロンティアで地球の重火器を使えないのは何故?」

銃もダメだし、ドローンやヘリコプターも無理らしい。

「かつてはフロンティアにもそういう兵器はあった。飛行船、大砲、爆弾…………でも、今は一切、使えん。使えるのは剣や魔法といった原始的なものだな。そうなった理由は簡単だ。錬金術師が死ぬ間際に賢者の石を使ったからだ」

戦争で悲劇になった錬金術師はこのようなことが2度と起きてほしくないと思ったということか。

だから最後に賢者の石を使って、重火器を使えない世界にしたんだ。

「なるほどねー。それが良いか悪いかはわからないけど……」

「良い面もあれば悪い面もある。確かに人々の争いは減ったが、モンスターの駆逐が厄介になった。これが強化ポーションを欲する理由だ」

まあ、これがなかったら地球と接触してないわな。

怪我の功名…………でいいんだろうか?

「この世界の事情はわかったわ。それでアルクが男の子のふりをしているのは何故?」

「跡継ぎの問題だ。王は男にしかなれん」

それか…………

「あなたが死ぬか、譲位すれば自動的にアルクが王になるわけね。でも、アルクは女の子。この場合、どうなるの?」

「次の王を巡って争いになる。こんな状況でそれは何としても避けなければならない」

確かにねー。

「次の王が誰になるかはわからないけど、ゲートの問題はどうするの? あれって王族の転移魔法でしょ?」

「そうだ。だからアルクの婿が次の王となる」

なるほど。

それならば、血筋は絶えないし、アルクの子が転移魔法を使える。

「いっそ、アルクのお婿さんをあなたが指名すれば?」

「それがもう1つの問題に繋がる」

「問題があるの? 良い人がいないの?」

「権力者の子辺りになると思う。いるにはいる」

こんな世界でも王様以外の権力者はいるんだな。

いや、そりゃそうか。

どんな世界でも金持ちと庶民では力に差があるもんだろう。

「そいつでいいじゃん。えり好みは良くないわよ」

俺はカエデちゃん以外はノーだけど。

「うむ……実はな、アルクが男のふりをしているのは後継者問題が起きる前からなんだ」

「はい? なーに? アルク、あなたって男装家? それともガチレズさん?」

「うん」

うん?

…………おい、このガキ、普通に頷いたぞ!

どっちだ!?

どっちに頷いたんだ!?

それによって、今後の俺の対応が変わってくるぞ!