軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第172話 面会

俺がゲートをくぐった先は石づくりの小さな部屋だった。

部屋の広さは4畳半程度であり、窓もなければ扉もない。

もっと言えば、電灯もない。

だが、部屋は明るかった。

この前の地下遺跡と同様に壁が光っているのだ。

そして、部屋の真ん中には机と椅子が2脚置いてあり、その1脚には人が座っていた。

その人は金髪碧眼であり、銀色の鎧を着た人間である。

また、かなり若そうであり、顔は……恐ろしいほどに整っていた。

「こんにちは。僕のしゃべっている言葉がわかるかな?」

その謎の人間がしゃべりかけてきた。

もちろん、意味は通じている。

俺は念のため、翻訳ポーションを飲んできているのだ。

「通じてるわよ」

「おや? 何故? うーん、君は翻訳のスキルを持っているのかな?」

俺はポーションを飲んでいるだけだが、スキルだと思ったらしい。

「私がフロンティア人とは思わないの?」

だったら言葉が通じてもおかしくない。

「今の言葉で君が我々の同胞でないことがわかるよ。我々にはフロンティア人っていう言葉がない。実は僕達も君達のことをフィーレ人って呼んでるんだけど、僕が逆にそう聞いてきたら変でしょ?」

こいつが僕がフィーレ人とは思わないのって聞いてきたら絶対に地球人ではないわな。

それと同じことか。

「ふーん。ちなみに、あなた達は何ていうの?」

「特にないんだな、これが。だからフロンティア人でいいよ」

「あっそ。じゃあ、こっちもフィーレ人で良いわ。正式にそう呼んでちょうだい」

「勝手に決めていいの?」

「どうでもいいでしょ。それとも蔑称を含んでるの?」

ジャップ?

「含んでないよ。じゃあ、そうしよう。君、大物だね」

「どうでもいいわ。あと、レディーに座るように勧めない人間は最低だと思うわね」

「ああ、ごめん、座って、座って」

俺は勧められたのでようやく席に着いた。

机を挟んでこのフロンティア人と顔を合わせているが、このガキ、マジで顔が整っている。

「ごめんだけど、まず聞いていい? あなた、性別は?」

髪は女とすれば短めだが、顔が整いすぎてわからん。

しかも、鎧のせいで体つきがわからない。

「ああ、男だよ。女性の方が良かった?」

「どちらでも。名前は?」

「アルクさ。君はエレノア・オーシャンさんでいいかい?」

まあ、俺の名前は知ってるわな。

問い合わせがあったわけだし。

「そうね。呼び捨てで呼ぶことを許可しましょう」

「うーん、偉そうだ…………ねえ、君って魔女なの? お姫様なの? どっち? いまいち、僕達も要領を得ていないんだよね」

「何て問い合わせがあったの?」

「いっぱい。色んな国から問い合わせがあったんだよ。やれお姫様がー、やれ魔女がー…………意味わかんない」

1つの国ではなかったのか……

そら、情報もどこからか漏れるわ。

「全部、無視してちょうだい」

「そういうわけにはいかないんだよね。だからまず君がフロンティア人なのかどうかを調べたい」

「どうやって?」

「ステータスカードを持ってる? それを見せてくれればわかるよ」

ステータスカードでわかるの?

国籍というか、所属惑星は書いてないぞ。

「嫌。なんで見せないといけないのよ」

大事なスキルが書いてあるのに。

「それが確実なんだよ」

「そもそも私の知ったことではないわ」

知るか。

「でも、このままだと君はフロンティア人認定されるよ?」

「それが何か問題?」

「いや、連れて帰らないといけなくなる」

「得体の知れない人間を? バカじゃない?」

俺が悪いヤツだったら大問題だろ。

「うーん、じゃあ、殺さないといけないと言い換えよう」

「どうやって殺すの?」

「え? どうやってって…………」

アルクが言い淀んだ。

「言っておくけど、あなたとそこにいる透明人間さん程度では私には勝てないわよ? 3秒で首を刎ねてあげるわ」

俺は座っているアルクの右後ろを指差した。

もちろん、俺の目には何も映っていない。

「え!? わかるの!?」

アルクは俺と俺が指差した方向を交互に見ながら驚く。

「私、気配察知のスキルを持ってるのよ」

「あちゃー! いや、なんでメイジがそんなもんを持ってるんだよ!」

アルクが天井を見上げながら手で目を押さえるが、すぐに前のめりになって聞いてきた。

「ごめんなさい。私、魔女って呼ばれてるけど、剣士なの。剣術レベル6なのよ」

ふふん!

「6っ!? バケモノじゃん! 全然、魔女じゃねーし! 魔法封じの結界が意味ないし!」

魔法封じの結界?

魔女と聞いていたから用意してたわけか。

「どうでもいいけど、透明人間さんはいつまで透明人間なの?」

「ごめん、ごめん。この子は僕の護衛なんだよ。でも、透明化ポーションを使っているからちょっと待ってて」

お!

透明化ポーションだってさ。

「もう一回飲めばいいじゃないの」

透明化ポーションの持続時間は1時間だが、透明化中に透明化ポーションを飲めば、それで透明化は解ける。

俺がいつもやっていることだ。

便利だが、トイレが近くなるのが難点。

「貴重な透明化ポーションを無駄にするわけにはいかないだろ」

貴重?

「あげるから姿を現しなさい。私は姿が見えない人がハイドスケルトンに見える病気にかかっているの。斬っちゃいそう」

俺はそう言って、カバンから透明化ポーションを取り出し、机に置いた。

「え? 本物? ってか、なんだその病気!?」

アルクは俺が置いた透明化ポーションを見ながらツッコんでくる。

「本物。それを飲ませなさい。さもないとマジで斬るわよ」

「わかったよ。ミーア、これを飲んで。この魔女、殺人鬼っぽいから」

アルクはそう言って、透明化ポーションを右後ろに差し出した。

すると、アルクの手にあった透明化ポーションが消える。

「誰が殺人鬼よ」

「君」

アルクは真顔で俺を指差してくる。

「私は優しいことで有名なのよ」

「そういうことを言うヤツは絶対に優しくない…………あ、本物だったみたいだね」

アルクが後ろを見ていると、メイド服を着た金髪の女性が姿勢よく現れた。

「偽物だと思ったの?」

「まあね。あ、この子は僕のメイドのミーア。基本的にいないものだと思っていいよ」

まあ、さっきまでは姿が見えなかったしね。

「ふーん、これでようやく落ち着いてしゃべれるわね」

「いや、君、大分、落ち着いてない? 堂々としすぎっていうか、偉そう。普通はもうちょっと固くなるもんだと思うけど」

「あなたが子供じゃなかったらねー」

どう見ても中学生くらいにしか見えない。

ナナポンとお似合い。

「僕はこう見えても13歳なんだけど」

いや、想像通りですけど……

「子供ね」

「君は何歳?」

「女性に年齢を尋ねるのはよしなさい。ダブルスコアを決められたから落ち込んでいるの」

「え? 君、26歳!? おばさん…………」

イラッ……!

「ミーア、このガキを殺せ!」

「拒否します」

「いや、なんで君がミーアに命じるのさ……」

うわー……

俺ってもうそんな歳なんだ。

やさぐれているサツキさんの気持ちが痛いほどにわかる。

「ミーア、あなたの年齢は?」

俺はメイドさんに一応、確認してみる。

「17歳です…………すみません」

謝られちゃった……

今日からサツキさんに優しくしようと思う。

「まあいいわ。私はただのフィーレ人のおばさん。それでいい?」

「よくないよ、おねーさん」

ふむ。

空気が読める子だな。

「失礼ですが、エレノア様。ステータスカードの色は何色でしょうか?」

「色? 色があるの? 黒だけど」

「アルク様、間違いなくフィーレ人かと」

「みたいだね」

色が違うのかな?

「あなた達は何色なの?」

「白だよ。ほら」

アルクはそう言うと、何もないところから手品のように白いカードを取り出し、ぴらぴらと振って見せた。

俺はカバンからステータスカードを取り出し、見てみるが、色は黒だ。

「黒じゃん」

俺のステータスカードを見たアルクが真顔で指差した。

「そうね」

「じゃあ、フィーレ人だ。はい、終了。君はフロンティア人ではありません。ミーア、後で陛下に伝えておいて」

陛下?

王様がいるんだ。

「かしこまりました」

メイドのミーアが恭しく頭を下げた。

「それを問い合わせがあった国に伝えるの?」

「そりゃね。問い合わせの回答はしないとさ」

「じゃあ、私が言ったことを伝えて。エレノア・オーシャンはフロンティア人ではないような気がするけど、ミステリアスな怖い魔女だよ」

「え? 何それ?」

アルクが呆れた感じで聞いてくる。

「私をフロンティア人認定するのも困るけど、明確に否定されるのも困るのよね」

「それ、君の勝手じゃない?」

「そうね」

うんうん。

「…………え!? 頷いて終わり!?」

実際、そうなんだから仕方がないだろ。