軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第141話 打ち合わせ

同行する自衛隊員の1人である女性隊員の前田さんは地獄耳というユニークスキル持ちらしい。

地獄耳という名前からして、聴力を上げるスキルだろう。

おそらくだが、どんな小声も聞き逃しはしないと思われる。

「とりあえず、戻ろうか。あまり待たしては悪いし」

ヨシノさんが俺の肩を叩いた。

しょうがないか……

会話には気を付けて行動するしよう。

「そうね、戻りましょう」

俺はヨシノさんと背中にいるナナポンを連れて、2人の自衛隊員のもとに戻る。

「ごめんなさいね。ちょっと商売の話があったもので」

俺は全部聞こえているのなら嘘をついても仕方がないと思ったので正直に話して謝った。

「いえ。問題ありません」

「もうよろしいのですか?」

2人は丁寧に対応してくる。

「ええ。では、打ち合わせに入りましょう。と言っても何の打ち合わせなの?」

俺はいまいち把握していないのでヨシノさんを見た。

「まずは今回の目的を明確にしよう。我々5人の仕事はクーナー遺跡で見つかった地下遺跡の調査でいいね?」

俺がヨシノさんに話を振ると、ヨシノさんが柳さんに確認する。

「ああ、そういうことになる。具体的に君達にお願いするのは地図の作成になる。他にもモンスターの調査や罠の有無といった危険性の調査もあるが、それは私達も行う」

まあ、5人一緒に行動するわけだし、そうなるか。

「了解した。エレノア、地図を頼むぞ」

「はいはい」

歩くだけだから楽勝だ。

「それなんだが、私達はそのスキルだったか、魔法だったかを詳しく知らない。もちろん、商売道具だろうし、民間の冒険者の情報を探るつもりはないが、どういったものかを教えてほしい。なので、今日はお試しでダイアナ鉱山の地図を作成してほしいんだ。もちろん、料金は払う」

まずは地図の精度を知りたいわけか。

「いいでしょう。帰りに渡すわ」

歩けばいいからな。

楽なもんだ。

「次にだが、モンスターは君達が対処してくると聞いているのだが、それで大丈夫なのかい?」

ヨシノさんが次の確認事項に入った。

「ああ。基本的には我々が対処する。しかし、フロンティアでは何があるかはわからないから君達も戦えるようにはしておいてほしい。一応、確認されているモンスターはスケルトンだから問題はないと思うが、他にもいるかもしれん」

ん?

八腕スケルトンのじごくのきしは?

もしかして、確認されていないのかな?

「スケルトンだけ?」

俺は探りを入れてみる。

「地上のクーナー遺跡と一緒だと思う。だから夜になると、どうなるかはわからん。とはいえ、夜は危険だから調査はしない。そっちは地図が出来てから別のチームが行うことになる」

じごくのきしを確認してないな……

まあ、雑魚だろうし、問題ないか。

「わかった。基本的にはあなた達に任せるわ」

「ああ。ただ、行動の主導権は地図を作る君になる。私達は後ろについていく形になるから奇襲には気をつけてくれ」

その辺はナナポンがいるから問題ないな。

「ドロップ品はどうなるの?」

「それは私達が倒した分も君達のものにしていい。本当は所有権が自衛隊になるのだが、アイテム袋の容量が少ないため、その場で放棄することになる」

放棄したものを拾ったという建前なわけね。

アイテム袋がないとスケルトンの剣は持って帰れないもんな。

「他の拾ったものも私達のものでいいのよね?」

これが一番重要な確認事項だ。

ちゃんと決めておかないと、金の延べ棒の所有権で揉める。

そして、国相手に揉めると、とんでもなく時間がかかるし、負ける可能性だってある。

「ああ。それは上が交渉済みだ。我々のチームが発見したものは基本的には君達のものだ」

「基本的には? 嫌いな言葉ね」

俺もさっき使ったけど……

「その辺りに関しては昨日、三枝さんと話してある。契約書を渡したのだが…………」

柳さんがヨシノさんを見た。

「エレノア、何も問題はない。基本的にはというのは危険物や遺跡の維持に関わるものは持って帰ってはダメというものだ」

「危険物はわかる。毒とか爆弾とかでしょう? 遺跡の維持とは?」

「ほら、映画とかであるだろう? お宝を持って帰ったら遺跡が崩壊するとか、自爆するとか……」

ああ、そういうことね。

「それは私達もヤバいじゃないの」

「そうなるな。まあ、そういう類のことだ。本部長やサツキ姉さんも確認しているし、問題はない」

少なくとも、金の延べ棒は持って帰ってもいいってことね。

「ならいいわ。私を騙す人間は不幸にしてあげるだけだしね」

ゲートを閉じちゃうぞー。

「確認事項は以上かな?」

ヨシノさんが柳さんを見た。

「ああ。最後にだが、君達3人にはこの書類にサインをもらいたい」

柳さんはそう言って、書類を取り出した。

「サイン?」

「ああ。簡単に言えば、私達との調査で見聞きしたものは外部には漏らさないという誓約書だ。自衛隊の冒険部隊は極秘事項だし、クーナー遺跡の地下遺跡もまた国家秘密だ」

…………すでにクレアに言っちゃった。

まあ、サインする前だからセーフにしよう。

「書かないとダメ?」

「ああ。そうなる。もちろんだが、我々も君達のことを漏らさない」

漏らさない?

「ふーん…………」

俺は柳さんの後ろに控えている前田さんをマジマジと見る。

「…………何でしょうか?」

前田さんは自分を見てくる俺に対し、表情を変えずに聞いてくる。

「事故には気を付けなさいね。藪蛇って言葉があるし」

「…………気を付けます」

ふん!

地獄耳なんてユニークスキル持ちを連れてきておいて、よくそんな誓約書を書かせるもんだわ。

そっちは探る気満々じゃん。

まあ、こっちもナナポンがいるけど…………

「本当に気を付けなさいね。あなた達もだけど、ギルド関係者、冒険者が職を失ったら可哀想でしょ? そう思わない?」

「…………思います」

前田さんは表情こそ変えてないが、声のトーンがどんどんと下がっていっている。

自分のせいでゲートを閉じられるという責任は負えまい。

「よろしい。書類を寄こしなさい。サインを書くわ」

「…………どうぞ」

俺は柳さんから書類を受け取ると、エレノア・オーシャンと書き込んだ。

うーん、偽名なんだけど、効力はあるんだろうか?

まあ、どうでもいいか。

俺は書類に名前を書き込むと、ナナポンに書類を渡す。

ナナポンは書類を受け取ると、ペンを手に持ち、名前を書こうとしたが、止まった。

エージェント・セブンか横川ナナカで悩んでいるな…………

「えっと……」

「本名で書きなさい。多分、書き直させられるわ」

俺も偽名だが、ナナポンのエージェント・セブンはない。

「わかりました」

ナナポンも横川ナナカと署名する。

そして、名前を書き終えると、書類をヨシノさんに渡した。

「はい」

ヨシノさんは普通に本名なため、三枝ヨシノと書き込み、書類を柳さんに返した。

「確かに。では、鉱山に行きましょう。地図の作成と動きの確認をします」

柳さんは書類をしまうと、鉱山入口を見る。

「じゃあ、私とエージェント・セブンが先行するわ。ヨシノさんは援護をお願いね。いらないけど…………」

ダイアナ鉱山に出るハイドスケルトンは透明なスケルトンという恐ろしいモンスターだが、ナナポンの前にはただのスケルトンだ。

「まあ、柳さんと前田さんがやってくれるでしょ。索敵よろしく」

ヨシノさんは俺とナナポンの肩を叩くと、一歩下がった。

「ナナカさん、地図を作ることが目的だから適当に歩きましょう。何かあったら言いなさい」

「エージェント・セブン…………」

めんどくせーなー……

ちょっと気に入ってんじゃねーか。

その名前は言いにくいんだよ。

「はいはい。じゃあ、エージェント・セブンさん、行きましょうか」

「はい」

俺とナナポンが先行して鉱山に入ると、ヨシノさん、柳さん、前田さんも後に続いた。