軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第121話 まったり電話

寿司屋からまっすぐ家に帰った後、スマホを見たのだが、ナナポンからもヨシノさんからも連絡は入っていなかった。

その後、家でダラダラと過ごしていたのだが、やはり連絡はなかったため、就寝した。

そして、翌日。

この日はカエデちゃんが急遽、仕事に行きたくないと言い、有給を取っていた。

朝食後、俺達がソファーでまったりとコーヒーを飲んでいると、スマホから着信音が聞こえてくる。

スマホの画面を見ると、電話の相手はヨシノさんのようだ。

『もしもしー?』

『おはよう、沖田君』

やはりヨシノさんである。

『おはよー。早いねー』

時刻はまだ9時である。

俺も普段は寝ているのだが、今日は朝からカエデちゃんに起こされたため、早いのだ。

『私は仕事だからな』

冒険者の仕事ではなく、ギルド本部の仕事だろう。

多分、あのエロ秘書の勝負服を着ていると思われる。

『おつかれー。ナナポンから聞いた?』

『ああ、聞いた。恐ろしいスキルがあったもんだな』

嘘を見抜けるんだもんなー。

ナナポンの透視もだけど、すごいわ。

もしかして、桐生がモテるのはそのスキルのせいかもしれん。

『本部長には報告した?』

『朝一で報告した。どうやらこれまでも渋谷支部の支部長と協議の時に桐生が現れたことがあったらしい』

桐生は完全に渋谷支部長の子飼いだな。

『フロンティアよりもそっち方面で活躍するだろうしね』

『ああ、そうだ。多分、あいつはそれで金を得て、成り上がったんだろう』

若くしてAランクになるにはいくつかのパターンがあると思う。

1つは戦闘用のユニークスキルだ。

クレアの認識阻害や見たことはないが、ハリーの鋼糸がそうだろう。

2つ目に俺やヨシノさん、リンさんもだろうけど、最初から武術の心得があり、強いパターン。

あとは金で良い装備を揃えるパターンだろう。

フロンティア産の武器は高いが強い。

俺が持っているエアハンマーを出せるマジックワンドがあれば、子供だってモンスターに勝てる。

それでレベルを上げ、強くなるんだろう。

おそらくだが、桐生はこのパターンだと思う。

テレビで見た時はいい装備だったが、昨日会った時は特に強そうには見えなかったし、実力者って感じはしなかった。

やろうと思えば、すぐにでも首を刎ねられたと思う。

……いや、やんないけどね。

『渋谷支部長が援助したって感じかね?』

『だろうな。実際、私達も本部長から援助されて、良い武器や消耗品を回してもらった』

援助交際だ。

『ウチは援助してくれねーぞ』

サツキさん、良い武器を流してよ。

『サツキ姉さんは金に汚いからしないだろ。というか、元Aランクの自分を雑魚呼ばわりしやがって、って怒ってたから絶対にしてくれないと思う』

僕がそんなスーパーイキリマンみたいなことを言うわけないじゃないかー。

『誇張が入ってるわ』

『私程度の雑魚だって?』

あの人、ペラペラしゃべりすぎ。

『ヨシノさんはねー、防御に寄りすぎ。例のトラウマかは知らないけど、あれだったら攻撃しまくれば押せる。力はこっちが上だしね』

サツキさんは逆。

戦っているところを見たわけじゃないが、意識が攻撃に寄りすぎ。

前のめりだもん。

『私は君やリンのように凶暴な性格をしていないんだよ』

『ドMだもんね』

『私はMじゃない……Mじゃない……Mじゃない……』

何があったんだろう?

実はしょっちゅう言われているのかもしれん。

『ごめんって……それよりも明日、エレノアさんが渋谷支部に行くことになってるんだけど、どうしよっか?』

『あー、ナナポンから聞いたな。さすがにその件は行くべきだろう。本部長もそう言っている。未成年はめんどくさいんだよ。でも、本部長は褒めてたぞ。そういう心がけは素晴らしいってさ』

本部長さんの人間性がよくわからんな。

パワハラ上司なのか、良い人なのか…………

まあ、良くも悪くも真面目なんだろう。

『まあ、行くよ。問題は渋谷支部長や桐生が出てきそうなこと』

『渋谷支部長は相手方との間に入る必要があるから絶対にいる。でも、桐生はその場にはいないと思う』

その場には、か……

『監視カメラとか?』

『真偽とかいうユニークスキルがカメラ越しに通じるかは不明だが、通じると思っていた方がいい。渋谷支部では桐生がその場にいなくても安易にしゃべるな』

それがいいな。

『わかった。敵地だもんね』

『そういうことだ。あと、普通に接触してくる可能性もある。君が知っているかは知らないが、あの男は女好きで有名なんだよ』

それはカエデちゃんから聞いたから俺も知ってる。

桐生はヨシノさんと同様にゴシップネタも多いし、あの手の顔はそんなもんだろう。(偏見)

『ついにエレノアさんも初ナンパか……』

『君、ナンパされたことないの?』

君って言うな。

沖田君になっちゃうだろ。

エレノアさんと呼べ。

『お前にされたわ。電話番号を聞かれた』

『あれはナンパではないんだが…………』

『知ってる。初対面で名前を呼ばれたし』

『ドジったか……』

ドジっ子ドM巨乳(26歳)め。

『というか、Aランクから声をかけられたらわかるわ』

『まあ、実際、君の剣は見事だったしね』

ふふ。

そうだろう、そうだろう。

でも、俺の剣を褒めてくれるのはヨシノさんだけだよ……

『今度、ジュースを奢ってやろう…………ってかさー、ヨシノさんは渋谷支部に行ったことがある? 人が多い?』

『あんまりないけど、多いよ。池袋とは天と地だね』

『平日の昼間でも?』

明日は金曜日だし、約束は午後一だ。

『専業が多いからねー。でもまあ、渋谷支部長が通達してるだろうし、トラブルはないと思うよ。冒険者の皆だって、エレノアが重要人物なことはわかってるしね。あとまあ、単純に魔女が怖い。ネットを見るといいよ。呪い殺せるとか、人を食べるとか色々ある。ナナポンが弟子じゃなくて、生贄になってるしね』

そんなことをクレアが言ってたな……

『お前が魔女とか呼ぶからだぞ』

『それは悪いと思っているが、どう見ても魔女だろ。私が言わなくても、その内、根付いたと思うな』

まあ、俺も鏡を見て、魔女っぽいなって思ったからな。

先日のハロウィンの集まりに行こうかと思ったもん。

『まあ、しゃーないかー。これも有名税だもんな』

『そうそう。君はまだいいじゃないか。沖田君は有名ではないんだから。私なんかひどいぞ』

確かにひどいね。

ゲスいゴシップネタばっか。

『全部、嘘? AVは?』

『なんで出ないといけないんだよ…………』

皆のため。

平和になると思う。

『ガセかー。桐生もだけど、ひどいのが多いね』

『これでもギルドが抗議して、少なくなった方だよ。私達の先輩の代はもっとひどかったからね』

怖いなー。

『俺も気を付けよう』

『エレノアはともかく、君は大丈夫だと思うけどね』

『なんで? いい人だから?』

『いや、池袋は大丈夫。噂をする人もトラブルになる人もいないから。昼間なんか誰もいないでしょ?』

悲しいなー……

『隣にいるカエデちゃんがへこんじゃったぞ』

本当はそんなにへこんでない。

スマホをポチポチといじっているだけ。

『あれ? カエデもいるんだ? 休み?』

『仕事に行きたくないんだって』

俺は毎日、思っていた。

まあ、それは皆、そうか。

『まあ、そういう日もあるだろう。休めるうちに休むべきだ』

『ヨシノさんは?』

『休憩後、本部長と協議だ。桐生のこともあるが、他にも問題があってね。大変だよ』

忙しそうだなー。

『そっかー。じゃあ、長電話は悪いし、切るわ。明日、何かあったら連絡する』

『頼む。ああ、あと、急ぎではないが、本部長が翻訳ポーションを買いたいと言っているからまた売ってくれ』

『翻訳ポーション? あんなもんがいるの?』

すごい効果ではあるが、効果時間が24時間なのがネックなのだ。

『クレアのオークションが好評でな。どっかのお偉いさんが欲しいらしい。値段交渉はまたでいいからそういうつもりで頼む』

『わかったー』

『よろしく。また冒険に行ける日を連絡してくれ。じゃあね』

『はいはーい、お仕事頑張ってー』

俺はそう言って、電話を切った。

「うーん、翻訳ポーションねー」

そんなに高いんだろうか?

「クレアさんのサイトを見ると、現在、5000ドルですね。予想では1万ドルを超えるとか超えないとか」

カエデちゃんはスマホから顔を上げて、教えてくれる。

「レートがわかんないけど、100万円越えは確実ってところか」

「ですねー。それで羨ましくなったんじゃないですか?」

子供か!

でもまあ、金持ちなんてそんなもんなもんかもしれん。

俺もリンさんの伸びる剣が欲しいし。

「金になるんだったらなんでもいいや」

「ですねー」

カエデちゃんは頷きながらコーヒーを飲んだ。