軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第107話 金に汚く安っぽい女

ヨシノさんが家に来るということでリビングを少し片付けていると、8時を回ったところでインターホンが鳴った。

モニターを見ると、ヨシノさんだったのでカエデちゃんが出迎えに行く。

少しすると、スーツ姿のヨシノさんがリビングにやってきた。

ヨシノさんは後ろ髪をアップし、まとめていた。

服装はスーツなのだが、スカートがちょっと短いような気がする。

しかも、胸元が少し緩い…………

「ヨシノさん……色仕掛けしてくる保険の人みたいなんだけど……」

「これが私の勝負服だ!」

何を勝負するんでしょう?

金か?

まあ、金か……

「えーっと、じゃあ、どうぞ、座ってください」

俺は呆れながらもテーブルを勧め、ヨシノさんを座らせると、対面にカエデちゃんと並んで座った。

「いやー、遅くに悪いな。あまり時間をかけると、突撃しそうな議員さんがいるんだよ」

進藤先生みたいなヤツかな?

「そういえば、進藤先生は?」

「権力争いに負けたな。派閥の人もほぼ抜けた。あれはもう終わりだ。近いうちに汚職で辞職に追い込まれるだろう」

ありゃりゃ。

「ふーん、やっぱりゲートを閉じるって脅しが効いた?」

「だな。あれのせいで味方がいなくなった。まあ、古いタイプの議員だから時間の問題だったとは思うが、直接的な原因は魔女にケンカを売ったことだな」

まあ、俺は悪くないからいいや。

「他にも突撃しそうな人がいるの?」

「まあいるな……だから君というか、エレノアは本部には行かない方がいい。池袋ギルドはサツキ姉さんが門前払いしているから大丈夫」

「国会議員を門前払いできるのがすげー」

怖いものなしかよ。

「ギルドは日本所属のものじゃないからな。日本政府が何を言っても無視できる。でも、本部は日本の官公庁なんだよ」

ギルドはどこの国にも所属していない組織というのは昔、習ったことがある。

当時はよくわからなかった。

なお、今もである。

「本部長って大変なんだな……」

「ああ、大変だ。だから少しでもその負担を減らしてやってくれ。あの人はパワハラと飲みを強制するところがダメだが、基本的には冒険者のことを考える真面目な人だ」

微妙な評価だな……

俺は飲み会が好きだから飲みの強制はいいけど、パワハラ上司は嫌だ。

殺意さえ芽生える……おーっと危ない、危ない。

俺はカエデちゃんの手を握り、心を落ち着かせる。

「何してるんだ?」

俺が急にカエデちゃんの手を握ったのでヨシノさんが聞いてくる。

「先輩にパワハラとかブラック企業って言ってはダメなんです。かわいそうに……」

カエデちゃんが握っている俺の手を優しくさすってくれた。

「なんかすまない…………契約を進めようか……」

ヨシノさんは微妙な顔で謝ると、書類とペンを出し、テーブルに置く。

すると、書類の上に手を置き、見えなくした。

「ん?」

「気にするな。さあ、ここに名前を書いてくれ。あ、エレノア・オーシャンって書くんだぞ」

俺は手を伸ばし、書類の上の部分を隠しているヨシノさんの腕を掴んでどかそうとする。

「こらこら、セクハラだぞ」

ヨシノさんが上目遣いで睨んでくる。

しかも、ちょっと身を屈めているので胸元からチラッと白い肌が見えている。

「ヨシノさん…………」

「さすがにひどいです…………」

この女、騙す気満々だ。

「大丈夫だって。君達が損をするようなことじゃない」

「だったら見せろや」

「それはよしておこう」

ヨシノさんはそう言うと、さらに身を屈め、両手で書類を隠した。

ヨシノさんが身を屈んだため、テーブルの上で何かが柔らかそうに変形する。

「この女、ずるいな……」

「サツキさんがヨシノさんのことを安っぽい女って言ってた意味がよくわかります」

そんなことを言われてんの?

まあ、確かに安っぽいな。

「安っぽくない。私は身持ちが固いんだ」

「それはいいことだけど、もうすぐ30歳だぞ」

「君もだろ!」

ヨシノさんはがばっと身を起こし、俺を睨んできた。

だが、その隙にカエデちゃんが書類を奪う。

「あ……」

ヨシノさんがマヌケな声を出した。

「うーん、なるほどねー」

カエデちゃんが書類を読み込む。

「何かあった?」

俺は書類を見て納得しているカエデちゃんに聞く。

「予想通りです」

カエデちゃんはそう言うと、書類をテーブルに置き、とある項目を指差した。

そこにはレベル2回復ポーションの買い取り額が書いてある。

370万円……と。

「350万じゃなかったっけ?」

俺はカエデちゃんに確認する。

「私もそう記憶しています。確か、ヨシノさんが350万って言ってました」

だよね。

まあ、理由はわかっているんだけどね。

「ヨシノさんさー……」

俺は呆れながらヨシノさんを見た。

「まあまあ、落ち着け。カエデ、ちょっと席を外してくれ」

ヨシノさんが真剣な顔でカエデちゃんを見るが、2人きりになって色仕掛けする気なのがバレバレだ……

誰でもわかる。

「ホント、安っぽいなー、この人……まさかのAランクだよ」

「ひどいですねー」

「くっ……ああ、そうだよ! 20万ほどちょろまかす気だよ! なんか文句あるか!? 君らは350万でいいと言った! あとは私の努力だ!」

開き直りやがった……

「別に勝手にすればいいけど、やり方が最悪だな。俺が理性的で良かったわ」

20万かける100で2000万円を横領する気だったんだろうが、方法がせこいというか、ひどい。

「私がいて良かったですね?」

ヨシノさんのせいでカエデちゃんが冷たいぜ……

「君に4250万も払ったからその分を取り返そうと思っただけだ」

ひっでー言い分。

「もう勝手にしろよ……これでいいから金を寄こせ」

俺は書類にエレノア・オーシャンと書き、ヨシノさんに渡す。

すると、ヨシノさんの顔がぱーっと明るくなった。

金に汚く安っぽい女だけど、かわいいとは思う。