軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第65話 コンタクトレンズ

今日はベルベットさんとドニーさんが王都へと戻る日。

シーラさんとライムに負けてから、ベルベットさんから常に冷ややかな視線を向けられていたドニーさんだったが、そんな視線に屈することなく最終日まで手伝ってくれた。

そのお陰で、過去一番で作物を育てることができた気がする。

そして今日は最終日ということで、日本の料理で2人をおもてなしする予定。

ドニーさんにとっては初めての日本料理であり、私とシーラさんには無骨な態度を取ってくるドニーさんがどんな反応を見せてくれるのか楽しみ。

例のごとく、お昼休憩を返上し、いつも以上に全力で作業に取り掛かる私達。

基本は常に緩い感じだった中、最終日だけ異様にテキパキと動いている私達にドニーさんは面を食らっている様子だったけど、すぐに慣れてくれるだろう。

「これで全部終わったわね。はぁー、お腹空いたわ!」

「お疲れ様でした。今日もお昼過ぎに終わらせることができましたね」

「佐藤さん! 今日は日本の料理を頂くことができるのでしょうか!?」

シーラさんがキラキラとした目で私に問いかけてきた。

料理を振舞う予定ではなかったとしても、このキラキラの目を見たら作ってしまうくらいの破壊力がある。

「もちろんです。シーラさんもドニーさんも最終日ということですし、日本の料理を振舞わせて頂きます」

「楽しみすぎます! 佐藤さん、ありがとうございます!」

「やったー! 実はだけど、漫画と同じくらい異世界の料理を食べるのを楽しみにしていたの」

「シーラとお嬢様は今までにないくらいテンションが高いな。……そんなに異世界料理って美味いのか?」

「そりゃもう、めちゃくちゃ美味しいですよ!」

「まぁドニーは馬鹿舌で、何でも美味しい美味しいって言うから分からないけどね」

「子供の頃は極貧で、確かに何でも美味しくは感じますが……お嬢様、馬鹿舌は酷いです」

この世界の料理を食べて、何でも美味しいと感じるのならきっと大丈夫だろう。

心配なのはどれだけの量を食べるか。

体が大きいしめちゃくちゃ食べそうだけど、そこまでの量を作ることができないのが少々申し訳ない。

「それでは今すぐに料理をしてきます――と言いたいところですが、その前に一ついいですか?」

「ん? 何かあるのかしら?」

「先にドニーさんへのプレゼントを渡そうと思ってまして。ドニーさんにはこの場で試して貰いたいんです」

私はそう告げてから、タブレットを操作してコンタクトレンズをポチった。

ドニーさんの目の具合については事前に聞いており、乱視とも分かっているからきっとこれで大丈夫なはず。

「俺へのプレゼント? それはなんなんだ?」

「コンタクトレンズというものです。目の中に入れる眼鏡みたいなものです」

「め、目の中に入れる!? そんなことできるわけがないだろ!」

「簡単ですので大丈夫ですよ。私がお手本を見せますね。まずはガイドマークを見て上下を確認し、上目蓋を持ち上げながら……ほら、もう付けられました」

「い、痛くないのか?」

「全然痛くないです。ほら、試してみましょう」

意外にもビビりまくっているドニーさん。

コンタクトレンズに馴染みがある人でも、コンタクトを入れるのは怖いという人もいるしなぁ。

馴染みがなければ、そりゃ怖がるのが普通か。

「ドニー、せっかく佐藤がプレゼントしてくれたんだから試してみなよ」

「うぅ……お嬢様がそういうのであれば、分かりました。その代わり、目が見えなくなったらサポートしてくださいね」

「目が見えるようになるためのものですから、そんな心配をしなくて大丈夫ですよ」

「心配するに決まっているだろ!」

そう叫んだあと、大きく深呼吸を繰り返して落ち着きを取り戻した様子。

そして覚悟が決まったのか、私の渡したコンタクトを手に取った。

「上の目蓋を押さえながら……あー、両目を開けておいた方が付けやすいですよ。そうです。そのまま黒目につけてください。つけた後はまばたきをして馴染ませるんです」

怖がってはいたものの、流石は元冒険者。

私の指示に完璧に従い、一発でコンタクトをつけてみせた。

「痛みとかはないですか?」

「ああ。今のところは一切ない」

「それではゆっくり目を開けてください」

ドニーさんは私の言葉に従い、ゆっくりと目を開けた。

どんな反応を見せるか楽しみだったのだけど、ドニーさんは口を大きく開けて固まったまま動かない。

「……ドニー、どうなの?」

「……………………これは凄い。本当に凄い! 右目だけ綺麗な世界が広がってる!」

「やっぱり異世界のものって凄いですね。目に入れる眼鏡……ですか」

「つうか、眼鏡なんかよりも何倍も良く見える! それに重さとか違和感もないから、本当に目が良くなった感覚だ!」

ドニーさんは興奮した様子でぴょんぴょんと飛び回っており、興奮を抑えきれないのが伝わってくる。

最初は微妙な反応だと思ったけど、しっかり喜んでくれていたみたいで良かった。

「寝る前には外してくださいね。それと使い捨てですので、使用後は捨ててください」

「こんなに凄いものが使い捨て……だと?」

「一応30日分入っていますので、また必要になったら働きに来てください。ちなみに次からは、12日間働いてくれたら30日分をお渡ししますのでよろしくお願い致します」

「12日……か。全然安く思えてしまうな」

「そう思ってくれたなら良かったです。それでは、もう少しコンタクトレンズを試してみましょう。もう片方もつけて、模擬戦のリベンジをしませんか?」

「目が見える状態での模擬戦か……! それは是非とも試してみたい」

ドニーさんの目はギラギラと燃えており、もう片方の目にもコンタクトを付けてから、試合の準備を始めた。

目がほとんど見えていない状態であの強さだった訳だからな。

目が良くなったドニーさんの変化を楽しみにしつつ、食事の前に改めて模擬戦を行うことにしたのだった。