軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第480話 天使

リザードマン族との話し合いを終え、すぐに村へと戻り、ヤトさんとアシュロスさんに農業を手伝ってもらいながら、ほのぼのと楽しい時間を過ごした。

騒々しくはあるんだけど、やはりヤトさんがいると一気に空気が明るくなる。

結局、三日ほど滞在してから、名残惜しそうに帰っていった。

ヤトさんもヤトさんで、最近はいろいろとやることがあるみたいだからね。

アシュロスさん曰く、ここでの出来事を切っ掛けに、色々と取り組むようになったと言っていた。

長年変化のなかったエデルギルス山も変化を遂げてきていると言っていたし、いい方向で影響を与えられているなら喜ばしい限りだ。

そんなこんながありつつも、そろそろ漫画についての動きも見せていかないといけない。

レティシアさんから絶好調という報告だけは来るものの、王都へ直接見に行けていないしね。

広告塔を頼んだ皆さんのことも気になるし、ベルベットさんにも会いたいため、王都へ行ってもいいかもしれない。

そんなことを考えていたタイミングで、本日の仕事を終えたであろうヴェレスさんの姿が見えた。

あまり姿を見せないヴェレスさんなんだけど、今日は珍しく別荘の前まで来ている。

何か私に用事があるのだろうか?

「ヴェレス、お疲れ様です。どうかしたんですか?」

「あっ、佐藤様! ちょっとご相談があるのですが、よろしいでしょうか?」

ヴェレスさんは珍しく神妙な面持ちをしている。

前に嫌な予感がすると言っていたことと、何か関係があるのかもしれない。

「もちろん大丈夫です。私の部屋で話しますか? それともリビングで大丈夫ですか?」

「リビングで大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

ヴェレスさんを別荘の中へ通し、紅茶を淹れてあげる。

もちろん、クイーンニードルの蜜と、お茶請けのクッキーもセット。

「うおおおお! こんなに美味しそうなものまで頂いていいんですか?」

「もちろんです。ただ、話をメインにしてくださいね」

完全に注意が紅茶とクッキーに移ってしまっているヴェレスさんに釘を刺しつつ、本題を聞くことにした。

「分かっています。……前にも軽くお話ししたと思いますが、私が感じている嫌な予感についてです」

「やはりそうでしたか。なんとなくそんな気はしていました。それで、嫌な予感というのはどういうことなんでしょうか?」

ヴェレスさんのことだから、スピリチュアル的なことではないと思っていたけど、この口ぶり的に根拠があってのことだと思う。

今のところ見当もつかないため、しっかりと話をうかがいたい。

「種族についてのことです。私が堕天使ということはお伝えしましたよね?」

「はい。確か、同族を殺めて追放されたんでしたよね? 今回の件はそれと関係があるんですか?」

「ええ。どうやら私は、追放された後も監視をされていたみたいなんです。それが、今回この場所へと移り住んだことによって、天使たちが動こうとしている気配を感じております」

ヴェレスさんが怪しまれているということなのか?

ここでいう“動く”というのは、殺しに来るということだよな……。

「天使たちが襲撃に来るということでしょうか?」

「いえ。あくまで、その可能性があるということです。まぁ私の力も知っているでしょうし、以前やってきた者に関しては釘を刺しております。ですので、簡単には武力攻勢に出てこないとは思っておりますが」

「え? 前に来たことがあったんですか?」

「あれ? お伝えしていませんでしたっけ?」

「絶対に聞いていないと思います!」

天使が来たという報告を受けていれば、絶対に覚えているはずだからね。

ベースはちゃんとしているんだけど、ヴェレスさんはこういううっかりミスがある。

「それは申し訳ございません。仮装をするお祭りをしていたときに、天使が偵察に来ておりました」

「えっ、仮装大会の時にいたんですか? ……あれ? そのときなら、私も会っていたかもしれません」

「佐藤様も会っていたのですか? 何かされてませんか?」

仮装大会のときに、確か見知らぬ天使の恰好をしていた人と会った記憶がある。

私も天使のコスプレをしていたこともあり、その方のクオリティの高さも相まって、はっきりと覚えている。

金髪の細身の超絶美少女で、ロッゾさんの家の裏で葉巻を吸っていた。

名前は確か……ナハスさんだったと思う。

「私は何もされていません。名前はナハスという方ではありませんでしたか?」

「佐藤様にも名乗っていたのですね。ええ、そうです。そのナハスという天使には、しっかりと釘を刺しておりました」

あの人は本物の天使だったのか。

クオリティが高すぎると思っていたけど、本物なら納得がいく。

異世界だからで流していたけど、飾りではない天使の輪っかもついていたもんね。

「それでも動いている気配があるということですか?」

「はい、その気配がありますね。争いになったら迷惑をかけてしまいますので、私の方から出向こうと考えています」

「天使の住んでいるところにですか!? 無事でいられるんでしょうか?」

「それは分かりません。ですので、先に報告をしようと今日訪ねてきたのです」

この村に迷惑をかけないため、一人で天使のところに乗り込むってことだよね。

ヴェレスさんは変な方ではあるけど、もう既に仲間の一人であることに違いない。

確かに巻き込まれるのは嫌だし、被害を受けたくはないけど……。

このまま危険な場所に向かうのを、みすみす見送ることは私にはできない。