軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第459話 王都の働き手

2組の冒険者にプロモーションの依頼を出してから、約1週間が経過した。

王都に滞在し、漫画を売る日々も終え、別荘に戻って夏の作物を育て始めている。

漫画をどう売るか試行錯誤する日々は新鮮ゆえに非常に楽しかったものの、やはり農作業は落ち着く。

今日はまだ種、苗植えだけなこともあり、午前中で仕事が終わってしまい、のほほんと畑を見ながらくつろいでいる。

「佐藤さん、お疲れ様でした。……王都の方は大丈夫ですかね?」

私がライムの友達である様々なスライムに囲まれながら、のほほんとしていたところ、シーラさんが駆け寄ってきた。

私たちは農作業があったため、こうして別荘に戻ってきてしまったが、レティシアさんとベルベットさんは今日も引き続き漫画を売ってくれていると思う。

シーラさんが心配している点は、王都に残された2人も多忙を極める点から来ているもの。

ベルベットさんは言わずもがな、外交などの王女様としてのお仕事があるだろうし、シーラさんは知らないけど漫画を描く方の作業もある。

レティシアさんはさらに忙しく、王都の橋渡し役として私たちが滞在していた時も、既に色々な仕事を掛け持ちしている状況だったからね。

クリスさんとのやり取り、『サトゥーイン』の予約管理、馬車の時間と本数指定と予約管理、在庫の作物と今後収穫される作物の状況説明と販売管理。

ざっと挙げるだけで、この仕事量を1人でこなしてくれていた。

それに加えて、漫画の販売までも手伝ってくれていたからね。

王都を去る前にある程度のまとまったお金を残し、人を雇ってもいいと伝えてきたため、レティシアさんなら上手くやってくれるだろうと思っていた。

ただ、これまでも誰か雇っていると思っていたわけだし、レティシアさんが「1人でできる」と判断していたら、誰も雇わない可能性まである。

……いや、その可能性の方が高い。

「久しぶりの別荘でぼけーっとしていましたが、ちゃんと王都のことを考えた方がいいかもしれませんね。結局、『ニールマート』の従業員も雇わずに帰ってきてしまいましたもんね」

「はい。私もそこが気がかりでして、レティシアさんなら大丈夫だとは思うのですが……最終日は客足も多くなっていましたし、心配ではあります」

そう、レティシアさんなら上手くやってくれることは間違いない。

だからこそ、危険を秘めているのだ。

漫画のことに気を取られすぎていたけど、最優先事項はレティシアさんの負担を減らすこと。

ということで、私は飛び起きるように立ち上がり、王都へ向かうことができる人を選抜することにした。

真っ先に候補として出てきたのは、レティシアさんと同じ獣人族の皆さん。

【ドランクバンク】の皆さんに依頼を出したこともあるし、親和性は非常に高いと思う。

気がかりなのは、この世界は差別がかなり横行しているということ。

レティシアさんは見た目の良さも活かしながら上手く躱しているようだけど、それでも平気で侮蔑的な言葉を投げかける人がいるらしい。

それに加え、クリスさんから頼まれて匿っている状態だからね。

人目の多い王都で働かせるのは、さすがにまずいか。

そうなってくると、送ることができる人材がここにはいない。

ゴブリン部隊を送れるなら送りたいけど、最悪の場合、討伐されてもおかしくないからね。

立ち上がったはいいものの、腕を組んで悩んでしまう。

「佐藤さん、悩んでいるのでしょうか? でしたら、ロッゾさんに相談してみるのはいかがですか? 長年、王都に住んでいましたし、人望も厚かったのでアドバイスをいただけるかもしれません」

「確かにそうですね。ロッゾさんかシッドさんであれば、相談に乗ってもらえるかもしれません。今からロッゾさんの家へ行ってきます」

「分かりました。私は走って王都の様子を見に行ってきます」

私はロッゾさんの家へ向かおうとしたが、シーラさんの言葉に「ん?」となり、立ち止まって振り返る。

既にシーラさんは王都へ向かって走り出しており、私が呼び止める暇もなく行ってしまった。

最近は全くなかったけど、そういえばシーラさんは走って王都へ行くことがしばしばあった。

距離的にも1時間はかからないと本人は言っていたけど……どうせなら馬車で行けばよかったのになぁ。

心の底からそう思ったものの、私にシーラさんに追いつける足はないため、凄まじい速度で遠ざかっていくその背中を見つめることしかできない。

……よし。考えても仕方がないし、私もロッゾさんの家へ向かうとしよう。

ということで、シーラさんに感化されるように、私もロッゾさんの家へ全力疾走で向かった。

大した距離を走ったわけではないんだけど、全力で走ったこともあり、着いた頃には息も絶え絶え。

シーラさんに感化され、無駄に走ったことを後悔しながら、ロッゾさんの家の扉を叩いたのだった。