軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第453話 ニヤニヤ

行列がさらなる人を呼ぶ状態となったおかげで、露店市に並べた100冊近い漫画はすぐに売れてしまった。

私が残りの冊数と、列に並んでいる人の数を数えて早めに列を解消させたこともあり、トラブルにはならなかったけど……。

買えずに悲しそうな顔をしている人たちを見て、ものすごく申し訳ない気持ちになった。

一応、『ニールマート』に在庫があることを伝えてはいるけど、『ニールマート』は変わった場所にあるし、わざわざ探して来てくれる可能性は低いと思う。

「こんなに早く売り切れるとは思っていませんでした。やはり漫画の力は凄いですね」

「シーラのアイデアのおかげよ。試し読みしてからの反応が、明らかに違ったもん」

「まだまだ売れそうだったのに……そこだけが惜しかったですね。まさか完売するとは思っていませんでした」

「私も。多めに持ってきたつもりが、あっという間に完売しちゃったんだもん。……ふふ。でも、売れるってめちゃくちゃ嬉しい」

ベルベットさんは嬉しさを抑えられておらず、笑顔が止められないといった感じ。

シーラさんに勘付かれてしまいそうだけど、まぁシーラさんにならバレても大丈夫か。

「それでは後片付けをしてから、『ニールマート』に戻りましょう。レティシアさんも戻ってきているかもしれませんし」

「他のところはどんな感じなんでしょうかね? 『ニールマート』も盛況だといいんですが」

「私は難しいと思いますね。『ニールマート』は立地があまりよろしくないですし、本が売れるようなお店ではないですから」

他で宣伝しまくって、『ニールマート』に引っ張ってくるというやり方なら、盛況する可能性は大いにあるけど……。

現状で、『ニールマート』で漫画が売れる未来は見えない。

そんな私の予想が正しかったことを証明するように、『ニールマート』は出たときと変わらない状態。

お客さんが入っている気配もしないし、待っているだけでは売れないことが分かる結果だな。

「あっ、佐藤さん。……それにシーラさんとベルベットさんも一緒やったんやね。露店市の方はどないでした?」

「完全勝利! 持っていった漫画、全部売れたわよ」

「それ、ほんまですか? やっぱり手売りは強いっちゅうことやね」

「シーラさん発案の試し読みが効いてましたね。行列が更なる人を呼んで、すぐに売り切れました。レティシアさんの方はどうでしたか?」

「うちの方も順調やと思います。めぼしいお店にチラシを貼らせてもろたから、それ見はった人が来てくれはる——可能性はある思います」

チラシは貼って回れたみたいだけど、少し自信なさ気なレティシアさん。

広告が実売に繋がるかは分からないもんね。

目に見えない分、不安な部分が大きいのだと思う。

まぁその点で言うと、私の作戦も同じなんだけど。

「そういえば、佐藤の方はどうだったの? 有名な冒険者に宣伝してもらうって作戦だよね?」

「はい。冒険者ギルドへ行き、事情を説明してきました。今は受付嬢さんが冒険者を見繕ってくれていまして、選別でき次第、私が声をかけるって感じですね」

「じゃあ、まだ宣伝はできていないって感じなのね。というか、今回の露店市の成果を見ちゃうと、わざわざ宣伝する必要はないように思えちゃうけど」

「いえいえ。もっと広い人々に周知してもらうためには、絶対に必要なことです。レティシアさんのチラシ貼りもそうですが、広告の効果は目には見えませんが大きいですからね」

私はそう熱弁したものの、あまり理解はしてもらえてなさそうな様子。

まぁ広告に関してはこちらで動くため、ベルベットさんには足で動いて、売り回ってもらいたいところ。

「各々の作戦ですから、それぞれが良いと思った方法で動くのが一番だと思いますよ。私とベルベット様は、引き続き手売りで売っていきます」

「そうしてくれますと助かります。それで……私たちがいなかった間、漫画は売れましたか?」

「いいや、誰も来てねぇよ。残念だったな」

そう言葉を返してきたのは、店の奥で新聞を読んでいる店主。

あまりに存在感がなさすぎていないものだと思っていたが、ちゃんと店番はしてくれていたみたいだ。

「そんなにすぐ効果は表れませんよね。気長に待ちましょうか」

私がそう言った瞬間、店の扉が開いた。

恐る恐るといった様子であり、お店に入るのに何度か躊躇ったことがよく分かる。

「すみません。ここで変わった本を購入できると聞いたのですが……」

「おおきに。はい、こちらで売らせてもろてます」

若い女性のお客さんであり、私はすぐに対応する。

多分だけど、先ほど露店市で購入できなかった方だ。

漫画について色々と広告を打ってはいたものの、まずは『ニールマート』の宣伝が最優先かもしれない。

恐る恐る入ってきたお客さんを見て、そんなことを思いながら、私たちは漫画を買いに来てくれたお客さんの対応を行ったのだった。