軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第427話 魔族の本

最初に驚いて以降は、黙々と漫画を読んでいるマシューさん。

その間にも私たちは、並んでいる本を軽く見させてもらうことにした。

基本的に内容は魔族関連のお話。

魔族といっても多種にわたる魔族がおり、中でも1番多いのは人魔族の本だ。

人間と比べたら圧倒的な力を保有している人魔族のようだけど、魔族全体で見たら能力的には1番平凡らしい。

それに昔は魔族同士で争っていたようで、魔族間戦争の本が非常に多い印象を受けた。

数の多さでは人魔族のものが多いものの、獣魔族、妖魔族はもちろん、翼魔族、悪魔族、天魔族、龍魔族などなど、色々な魔族視点の本が並んでいる。

魔族の種類を見るだけでもワクワクしてしまうため、私も手に取って読みたかったところだけど……どうやらこのタイミングで、マシューさんが渡した漫画を読み終えてしまったようだ。

「佐藤さん! とてつもなく凄かった!」

「喜んでもらえてよかったです。そちらの本はプレゼントさせて頂きますので、よければ受け取ってください」

「よ、よいのか? こんなに凄い本を頂いてしまっても……!」

「もちろんです。マシューさんとは長いお付き合いをしていきたいと思っていますので、良かったら受け取ってください」

「長いお付き合いって、ワシは長くて20年後には死んでしまうぞ?」

「そんな悲しいことを言わないでください。気持ちですので、受け取ってくださったら嬉しいです」

ここまで喜んでくれているのだから、プレゼントしないという選択肢はない。

というよりも、既に抱きかかえるように持っているし、返してと言っても返してくれなさそうな感じもあるからね。

「佐藤さんはワシの恩人じゃ。ここにある本を全て持っていってもかまわんぞ!」

「持っていきませんって。ただ、数冊だけ頂いてもいいでしょうか?」

「もちろんじゃ。何冊でも持っていっとくれ!」

「ありがとうございます。それから、もう1つだけお願いがあるんですが、聞いてもらってもいいですか?」

「何でも言ってくれ。ワシにできることなら何でもやらせてもらう」

漫画1冊でここまで恩義を感じてくれるとは思っていなかったけど、それだけの価値があるということ。

私もドラクエのキャラデザを初めて見た時は興奮したし、マシューさんもそれと同等以上の興奮を覚えてくれていると思ったら、割とごく普通の反応なのかもしれない。

「実はなんですが、私の友人が、今渡したものと同じように絵の入った本を書いているんです。今、売りに出そうという話にもなっていまして、完成した際にはこちらの書店に置いてもらうことは可能でしょうか?」

「ん? この絵の本を書いている友人がおるのか!? よ、読みたい……!」

「ただ、クオリティで言ったら遠く及ばないんです。そちらの作品は最高峰といっても過言ではありませんので」

「だとしても読みたい! ワシにも読ませてくれるのか?」

「もちろんです。陳列する前に、マシューさんが読んでくれてかまいません。それで、置いてもらうことは可能ですか?」

「当たり前じゃ! ワシが全面的に押し出させてもらう! そして、この街のみならず、魔族の間で大流行させてみせる!」

胸を強く叩き、そう宣言してくれたマシューさん。

さすがに魔族の間で大流行させるのは難しいと思うけど、流行らせようとしてくれるだけでありがたいからね。

「心強いですが、あまり気負わなくて大丈夫ですからね。お店で売ってもらえるだけでありがたいので」

「そんな半端な気持ちで置かんわい。ワシに任せてくれ」

「ありがとうございます。とりあえず完成次第、直接持って来られるかは分かりませんが、お届けしますので」

「ああ、楽しみに待たせてもらうよ」

そんな会話の後、マシューさんと握手を交わして交渉を成立させた。

それから私は頂く本を選ばせてもらい、マシューさんのお店を後にした。

「いやぁ、凄く良いお店でした。アデリナさんのお店もマシューさんのお店も素晴らしいですね」

「気に入ってもらえてよかった。どっちも佐藤さんなら気に入ってくれると思った」

本当に私に合わせて選んでくれたんだと思う。

その気持ちが分かって、私はさらに嬉しい気持ちになる。

「それで、この後はどうするんですか? また別のお店へ向かうんでしょうか?」

「うーん……。本当はもう1つ回りたいところがあったんだけど、もう日も暮れ始めてきたから帰ろうと思う。食事の準備もしてくれているだろうし」

「魔族の食事って何なんでしょうか? 今から楽しみです」

キラキラとした目でそう語ったシーラさんだったけど……。

「期待しないで。食料難になるくらい何もないし、確実に佐藤さんの料理の方が美味しいから」

すぐにそう釘を刺してきたミラグロスさん。

とはいえ、料理大会で作ってくれた料理は美味しかったし、少しだけ期待してしまう。