軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第383話 コロッセウム

ガロさんの案内でギナワノスを回っていたんだけど……正直、今のところの感想はあまり面白くない。

何せ、居酒屋かバーにしか行っていないのだ。

しかも珍しい酒を扱う店ではなく、客の少ない店か値段の安い店の2つ。

冷静に考えれば、ガロさんは長年ギナワノスに住んでいたわけだし、生活のうえで使う店ばかりになるのもおかしくはない。

大通りの騒ぎからしても、有名人なのは分かりきっているしね。

変に期待していた私が悪かったということで、最後の居酒屋も退店した。

「……うっぷ。1店舗につき1杯しか飲んでいませんが、僕、もう何も飲めません!」

「ふぉっふぉ。最近の若いのはだらしがないのう。……ひっく」

「ジョエル君はお酒じゃなくてジュースでしたからね。お腹もたぷんたぷんになりますよ。それより……そろそろコロッセウムを案内してほしいです」

「僕もコロッセウムに行きたいです! 居酒屋はもうこりごりですよ!」

面と向かって嫌だと言えるジョエル君の性格6うらやましい。

持ち前の明るさもあってか、嫌味を感じさせないからね。

「うーん……ひっく。もう2軒くらいは回ろうと思っておったんじゃが、嫌と言われたら行けんのう」

「コロッセウム行きたいです! 中に入れるんですか?」

「知り合いがおれば入れるとは思うぞ。……ひっく。ただ、武闘大会前じゃから、もしかしたら入れん可能性もある」

「運次第って感じですか。入れることを祈りながら、コロッセウムに向かいましょうか」

まだ居酒屋巡りをしたがっているガロさんを、半ば強引にコロッセウムへ誘導する。

酒好きなのはいいけど、お酒自体はものすごく弱いからね。

飲むスピードが遅いので、必然的に長居になってしまっていた。

ここまでを反省しつつ、私以上に暇だったであろうライムとマッシュにも気を配りながら、初めてのコロッセウムへとやって来た。

遠目からは何度も見ていたけど、実際に入るのは今日が初めて。

歴史ある建物でありながら、定期的に補修されているのか、きれいな状態がしっかり保たれている。

「初めてこんなに近くまで来ましたけど、迫力がすごいですね!」

「そうかのう? ……ひっく。ワシはもう慣れておるから、特に何も感じんの」

「えー! 佐藤さんはすごいと思いますよね?」

「もちろんです。ずっと来たいと思っていましたし、シンプルに感動しています」

慣れすぎているガロさんと、感動している私とジョエル君――その間に熱量の差を感じる。

コロッセウムに行きたがらなかったのも、命を削っていた時期の記憶があって、あまり良い思い出がないのかもしれない。

「中もすごいですね! 広いのに誰もいません!」

「本当に入ってしまって大丈夫なのでしょうか? 不法侵入の罪で捕まりませんよね?」

「……ひっく、大丈夫じゃ。もし何かあっても、ワシが全責任を負うからのう」

何かあってからじゃ困るけど……もう入ってしまったし、今さら引き返すこともできない。

ガロさんの後を黙ってついていくしかない。

静かなコロッセウム内に、ジョエル君の感心する声と、ライムのペッタンペッタンという足音が響く中、正面から三人の兵士らしき人物が歩いてくるのが見えた。

街中で見る兵士とは違い、明らかに体格が普通ではない。

背筋が伸びる思いでいると、こちらに気づいた兵士たちが走って近づいてきた。

「おい! お前たち、何を勝手に入っているんだ!」

やはりというべきか、出会い頭にしっかりお叱りを受けてしまった。

私とジョエル君は体を縮こませ、ひたすら平謝りをしている中、ガロさんは飄々と話し始めた。

「勝手に入ったのは悪かったのう。……ひっく。ただ、ここの支配人とは知り合いなんじゃ。すまんが、呼んできてくれないか?」

「支配人と知り合い……? それは本当なのか?」

「……ひっく。嘘なんかつかんわい。支配人の名前はブライアントじゃろ? ガロが来たと言えば伝わるはずじゃ」

「……確かに合っている。それに……ガロ?」

ガロさんの名前にピンと来たのか、兵士たちは顔を見合わせて固まった。

それでも、まだ完全には信じ切れていない様子だ。

「ほ、本当にガロなのか? 偽っていたと分かったらただじゃすまないぞ」

「騙るにしても、ガロは騙らんじゃろ。……ひっく。酔いも覚めてきたし、ちょっと相手をしてやってもええぞ」

「あっ、そういえば……さっき“大通りにガロがいる”って騒ぎになっていたと、新入りが話していました」

「じゃ、じゃあ本当にガロ……いや、ガロさんなのか?」

「そうじゃと言っておる。とにかくブライアントを呼んでくれば、すぐに分かる」

「失礼しました! すぐに呼んできます!」

態度を一変させた大柄な兵士は、ベシッと最敬礼してから、ダッシュで支配人を呼びに行ってしまった。

兵士の態度の変化には驚いたけれど、やはりガロさんは“レジェンド”なのだと、あらためて実感した。