軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第369話 迷子?

クリスさんとの話し合いを終え、その結果をすぐにベルベットさんとローゼさんへ報告。

それからあっという間に1週間が経過し、気温が一気に下がってきた早朝。

今はクリスさん待ちの状態で、色々と動きたい気持ちはあるものの、私は何もできずにいた。

ベルベットさんとローゼさんからも一言だけの返事が届いただけで、今のところ進展はゼロ。

待つしかないと分かってはいるけれど、この“待ち”の期間はどうしてももどかしい。

そんな気持ちを抱えながら昼食のサンドイッチを食べていると、宿の方から誰かがこちらへ向かってくるのが見えた。

やって来たのはルーチアさんだった。

この時間に畑へ来るのは珍しいし、一直線で私の方へ向かっていることから、何かしらトラブルがあったのかもしれない。

「ルーチアさん、こんにちは。どうかしましたか?」

「ついさっき、知らない子供が1人で宿にやって来たんだ。今はソアラとルナが面倒を見てくれているが、どうしたらいいか分からなくて、指示を仰ぎに来た」

「知らない子供ですか? 泊まっているお客さんの子供ではなく?」

「今日泊まっている客に子供はいなかった。もしかしたら隠れて連れている可能性も考えたが、今のところ確認は取れていない」

うーん……誰だろう?

ここは街や村からも離れていて、最も近い街が馬車で30分ほどかかる王都だ。

子供が1人で来られる距離じゃないし、パッと思いつくのはアス君くらい。

けどアス君なら、もう1人で来ることはないはずだし、来るとしても真っ先に私のところへ来るだろう。

「分かりました。私も心当たりがありませんので、すぐに宿へ向かいます」

「助かる。私は先に戻って、もう少し話を聞いてみる」

「ええ、お願いします」

急いで宿へ戻っていくルーチアさんを見送り、私もサンドイッチを一気に完食。

その子供がどこからやって来たのかを考えながら、宿へと向かった。

宿に着くと、フロントにはソアラさんの姿があった。

私の姿を見るなり、バックルームを指さす。

「佐藤さん、おはよう。例の子はバックルームにいるから」

「ありがとうございます」

どこか疲れた様子のソアラさんにお礼を伝え、バックルームへ入ってみると——。

そこではルーチアさんが両手両足を地面につけ、馬の姿勢でいた。

その背中には、楽しそうに笑う可愛らしい少女が乗っている。

真っ白な髪が綺麗に編まれ、服も汚れひとつない。

パッと見た限りでは、迷子という感じは一切ない。

「ルーチアさん、来ました。その背中の上にいる子が、先ほど言っていた子供ですか?」

「あ、ああ。変な格好で悪い。馬をやれば話してくれるって言うから、こうしてるんだが……」

「きゃははっ! わーい! もっと速く走ってー!」

ソアラさんやルナさんが疲れた様子だった理由が、これでよく分かった。

2人も同じことをさせられたのだろう。

この様子だと、馬役をやっても話してくれない可能性が高い。

とはいえ、少女は楽しそうだし……ルーチアさんには申し訳ないけど、もう少しだけ頑張ってもらおうかな。

ルーチアさんが馬を演じ始めてから、10分ほどが経過。

少女はまだまだ楽しそうだが、ルーチアさんの方は明らかに限界が近い。

予想以上に激しい動きを求められ、四つんばいで動き回るという普段しない動作で体力が削られているようだ。

これ以上続けても埒が明かないし、止めよう。

「そろそろ満足してくれましたか? ルーチアさんが疲れて倒れてしまいます」

「んー? まだ遊びたい!」

「もう限界に近い。満足したと言ってくれ」

「やだ! もうちょっと遊ぼう?」

可愛らしくおねだりする少女だったが、ルーチアさんは器用に少女を背中から下ろし、そのまま椅子へ倒れ込んだ。

滲む汗が、馬役のハードワークさを物語っている。

「ねぇ、君はどこから来たのかな?」

「…………知らない人には話しちゃダメって言われてる」

「じゃあ、お名前だけでも教えてくれるかな?」

「…………や! おじさんは変態さんなの?」

ぐっ……的確に私の心を抉る一言。

だが、子供相手には自信がある。ここは私の得意分野。

「なるほど、分かりました。……君はお菓子は好きですか?」

「お菓子? ……甘いやつ?」

「はい。甘くてとても美味しい食べ物です」

「好き! クッキーが好き!」

よし、食いついた!

食べ物が使えるなら、こちらが圧倒的に有利だ。

表情には出さず、タブレットを操作して『Walkers』のクッキーを購入。

普通のクッキーより少々お高いけど、私が市販品で一番美味しいと思うクッキーだ。

まずはこのWalkersのクッキーで胃袋を掴む。

そして、それを交渉材料にして、少女から情報を聞き出していこう。