軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第367話 許諾

農作業を終えた夕方。

私が作業をしながらチラチラと様子を見ていたこともあってか、作業が終わるなりベルベットさんの方からやってきてくれた。

「佐藤、私とローゼのこと見すぎだから! 集中してないの丸わかりだったし、変なミスしてないわよね?」

「その点は心配いりません。作業中は集中していましたし、ちょっと一息ついた時に様子を窺っていただけです」

「器用にこっちを確認してたのね。まあ、ならいいけど」

「それで、返事の方は決まりましたか?」

私は迫るようにベルベットさんに尋ねた。

プレッシャーをかけるのは良くないと分かっているけど、あの作品を読んでしまったら世に広めたいと思ってしまうのは、1人の漫画好きとして当然のこと。

「今終わったばかりなんだし、まだ決まるわけないじゃない。……って言いたいところだけど、休憩中にローゼと話して決まったわ。この作品をどうするかは佐藤に任せようってことになったの」

「ということは……売り出していいということでしょうか?」

「うーん……そういうことになるわね」

その言葉を聞き、私は思わずガッツポーズをしてしまう。

日本の文化であった漫画が、異世界にも広がる大きな一歩。

ここまで嬉しいのは久しぶりだ。

「ベルベットさん、ローゼさん、ありがとうございます。それでは、すぐに漫画を売り出してくれる方に連絡を取ってもいいでしょうか?」

「うん。まずは会ってみたいけど、私とローゼにその方を紹介してくれるかしら?」

「もちろん紹介します。ただ、ベルベットさんはすでに知っている方ですよ」

そう告げると、ベルベットさんは小首を傾げた。

「この間、旅行に行ったときに会った方を覚えていませんか? オーラバードを購入したお店なんですけど」

「あっ! ルダークの街で出会った、あの怪しい店主のこと?」

「そうです。クリスさんと言いまして、この間遊びに来た時に漫画を勧めたんですよ。そしたらドはまりしてくださったので、きっと今回の件に協力してくれると思うんです」

「確かに売っていた商品もすごかったし、バーネットとも仲良くしてたものね。期待はできるんだろうけど……ちょっと怪しすぎない?」

「怪しいことは否めませんが、本気で売りに出すつもりなら、クリスさんの手を借りない手はないです」

クリスさんは確かに怪しい。

けど、それ以上に大きな力を持っているのは間違いない。

王国内だけでなく、外の世界にも広めるとなれば、その力を借りるのが最善だ。

「うーん、わかった。全面的に佐藤に任せる。ねぇローゼ! ローゼもそれでいいよね?」

「……はい。よく分からないので、2人に任せます。私は面白い作品を作ることができればそれでいいので」

「ありがとうございます。ベルベットさんとローゼさんの作品を読んで、漫画を描いてみたいと思ってくれる人が増えたら、良い作品がどんどん増えていくと思います」

「……ふふ、そうなってくれたら嬉しいですね」

とりあえず許可をもらえて一安心。

ベルベットさんとローゼさんには引き続き漫画を描いてもらいつつ、私は2人の作品を売るために動き出すことにした。

まずはレティシアさんに連絡を取り、その後、王都にある『ニールマート』へ向かおう。

『ニールマート』の店主はちょっと苦手だけど、そんなことも言っていられない。

善は急げというし、今から王都に向かうとしよう。

レティシアさんに話を通し、『ニールマート』でクリスさん宛てに手紙を出してから3日後。

何の気なしに農作業をしていると、遠くから馬車がやってくるのが見えた。

提携している馬車ではなく、豪華絢爛な馬車――。

やってきた人物の予想は大体つく。

蓮さんたちか、ドニーさん。

ベルベットさんとローゼさんは帰ったばかりだし、さすがにこの2人はあり得ない。

……いや、クリスさんの可能性もあるのか?

でも、クリスさんに手紙を出したのは3日前。

最短で届いたとしても一昨日。

さすがにそれでここまで来るのは早すぎる。そう思っていたんだけど――。

「佐藤、手紙を読んで急いできたわよ」

馬車から降りてきたのは、まさかのクリスさんだった。

飛んできたことは聞かずとも分かる。

私としては嬉しい限りだけど、色々と大丈夫なのだろうか。

「クリスさん、来てくださってありがとうございます。まさか本当に来てくれるとは思っていませんでしたし、逆にこんなに早く来て大丈夫なんですか?」

「これと思ったらすぐに動くのが私の流儀なの。ビジネスチャンスでもあり、私が“面白そう”と思ったことでもある。動かずにはいられないでしょ?」

「ありがとうございます。そう思っていただけたのは嬉しいです」

馬車に同行していた部下の方は、疲れ果てた表情をしていて少し気の毒だった。

けど、クリスさんの情熱はありがたい。

ついてきてくれた部下の方には休んでもらいつつ、私は早速、手紙で伝えた件についてクリスさんと話をすることにした。