軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第355話 一夜明け

アンデッド軍団の襲撃を受けた翌々日。

昨日は体や精神の疲れもある中、なんとか農作業をこなすことができた。

結局、投石機も一度も使わなかったし、私なんかは何もしていないんだけど、それでも緊張で体が強張っていたからか、久しぶりに全身の至る所が筋肉痛になった。

アドレナリンが出まくったこともあって眠れなかったし、昨日の農作業は久しぶりに大変だったなぁ。

みんなも疲労感を抱えているようだったし、作物を駄目にする覚悟を持ってでも休みにするべきだったかもしれない。

そんな後悔を抱えつつも、昨日は作業後にしっかりとご飯を振る舞って労ったこともあり、今日はみんな調子を取り戻すことができた様子だった。

そして、今日の業務終了後。

アンデッド軍団の襲撃時に後から駆けつけてくれた方々を呼び、ヴェレスさん本人による説明会が開かれた。

ヴェレスさんは詳細に、丁寧な口調でゆっくりと話してくれたんだけど、それでも理解できない方が多数で、正直説明会の意味は成していなかった。

最後に私に謝罪した理由も話していたんだけど、出番を取ってしまったとか、直すために貯めていた魔力を移動のために使ってしまったとか、正直私もまったくピンと来ない説明。

もしかして、ヴェレスさんは頭が良くないのでは……と、密かに思い始めてしまっている。

そんな中、説明だけでは納得しきれなかったドレークさんを筆頭に、ヴェレスさんの力が本物なのかを検証したいという事態に発展。

証人はいっぱいいるし、間違えようもない事実なんだけど、流れで軽い模擬戦が行われることになった。

正直、あの戦いぶりを見てしまったら、誰一人として勝てる人はいないと思ってしまうけど……多分勝てるとか勝てないとかではないんだと思う。

仕掛けたドレークさんも、ヴェレスさんの強さが単純に気になるといった様子。

私の方から怪我だけはないように忠告しつつ、ヴェレスさん対みんなの模擬戦を見守ることにした。

まず最初に戦うのは、言い出しっぺのドレークさん。

ドレークさんは実力者であり、【龍化】を使った際の破壊力はトップクラス。

「うーし、まずは俺からいかせてもらうぜ! その馬鹿げた力を見せてくれ」

「皆さんにもご迷惑を掛けましたので、力の一端をお見せするのは構いません。なんなら、戦いたい方はいっぺんに来て頂いても大丈夫ですよ」

「新参者なのに言うじゃねぇか! 絶対に一泡吹かせてやる!」

そう意気込みながら、木剣を構えたドレークさん。

そして、試合開始の合図と共に【龍化】を発動させ、初っ端から全力で攻撃しに行ったんだけど……ヴェレスさんは余裕の対応。

殺意がないからか、アンデッド軍団戦での恐ろしさはないものの、動きが洗練されていて美しさを感じる。

前回の戦闘ではよく分からなかったけど、単純な力だけでなく戦闘技術も高いことがよく分かるな。

「あったんねぇ! はえーな、くそ!」

「人間にしたら相当速い部類だと思いますよ。……ただ、私には一歩だけ及びませんでしたね」

ドレークさんの力を利用し、軽く足を払うと、一回転して地面に倒れた。

漫画やアニメで見るような、達人らしい動きに思わず感動してしまう。

「底が見えねぇ! 本当に強いんだな!」

「ふふふふ、私よりも強い生物を探すほうが難しいと思いますよ。さて、次は誰でしょうか?」

「私にいかせてくれ。魔法は使ってもいいんだよな?」

「ええ。ご自由に」

所作がいちいちかっこいいヴェレスさん。

こういったところを見てしまうから、馬鹿だとは思いづらくなってしまっている部分が大きい。

それから続くように戦ったルーチアさんもあっさり敗北。

魔法でも牙城は崩せず、マージスさんの守備的な戦い方でも完敗。

そして、ワルフさんが初めて見る【狼化】を使って戦ったんだけど、圧倒的な身体能力での攻撃でも一撃も当てることができなかった。

戦ったみんなが実力者なのは間違いないため、ヴェレスさんの強さが再確認できる結果だった。

本当になんで私に従属しているんだろう。

異世界の料理に心を奪われたのは分かるけど、ヤトさんが懐いてくれていることよりも謎でしかない。

「本気で強いじゃねぇか! 全員でかかっても、一撃も攻撃を与えられなかったんじゃねぇか?」

「いえいえ、そんなことはありません。私も皆さんの力を過小評価しておりました。人間にしてはですが、お強いですよ」

その通りだから仕方がないんだけど、超がつくほどの高みからの発言。

ヴェレスさんも味方だし、こんな感情を抱くのはおかしいけど……みんなが手も足も出なかったのは、私もかなり悔しい。

「完敗したが、圧倒的な実力者を見ることができたのは収穫だ。私がもっと強くなれることも分かったしな」

「俺もルーチアと同意見! ヴェレスさん、喧嘩を売って悪かったな!」

「いえいえ、暇な時であればいつでも戦ってあげますよ」

「そりゃありがてぇ! そういえば……ライムとは戦ったのか? この辺りじゃライムが一番強いだろ?」

「実はなんですが、アンデッド軍団との戦いが終わってから、マッシュとライムの姿を見ないんですよね。友達のスライムたちは住処にいますので、出ていったということはないと思うんですけど」

ライムがふらっと遠出をすることはよくあるんだけど、今回はマッシュもいないし、タイミングがタイミングだけに少し心配。

ただ……ライムとマッシュの強さを考えたなら、まず危険な目に遭うことはないし、大丈夫だとは思う。

何か不満があって顔を見せないのかもしれないし、帰ってきたらいろいろと話がしたい。

そう思っていたんだけど、それからライムとマッシュとは1ヶ月以上も会うことはなかったのだった。