軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第31話 新たな従魔

美香さんがやってきた日から5日が経った。

この間は特に事件もなく、平和な日々を過ごすことができている。

ベルベットさんが来たり、美香さんが来たりと、ドタバタするのも楽しいのは楽しいのだが、シーラさんと二人で農業を行う平和の日々は非常に落ち着く。

そんなことを心の底から感じながら過ごしている合間に……所持NPが8000に到達した。

ベルベットさんや蓮たちがいつ来てもいいように、NPを取っておきたい気持ちもあるけど、流石にそろそろ人手を増やしたい。

スレッドも役に立ってくれてはいるが、あくまで夜にしか働けない上に一つのことしか行うことができないからな。

「佐藤さん、今日も頑張りましょうね」

「あっ、シーラさん。作業に入る前に一ついいですか? NPが貯まったので、今から新しい魔物を購入しようと思っているんです」

「おっ、いいですね。今回は何の魔物を購入するのですか?」

「アンデッド系を増やしてもいいのかなとも思ったのですが、今回はマタンゴを購入しようかなと思っています」

「私が挙げた魔物ですね。スレッドのように欠点がなければいいのですが……。もし畑仕事を手伝えなかったらすみません」

「謝らなくていいですよ。マタンゴに関しては、相談する前から私も購入しようと考えていた魔物なので」

「そうだったのですか。そういうことでしたら、少しホッとしました」

胸に手を当て、小さく息を吐いたシーラさん。

夜しか動けないワイトナイトを推薦してしまったことを、未だに引きずっていた様子。

最終的に決めたのは私だし、スレッドは十分役に立ってくれているので気にしなくていいんだけどな。

シーラさんを見てそんなことを考えながら、私はタブレットを操作してマタンゴをポチった。

ライムやスレッドの時と同じように、目の前に急に魔物が現れた。

イメージしていた通り、キノコに手足を生やしたような容姿の魔物。

顔もついているのだが、お世辞にも可愛いとは言えず……一番ピッタリくる表現は人面犬。

大きさは意外にも大きく、一メートルくらいはあると思う。

「こんなこと言ってはいけないのですが……かっこよくも、可愛くもありませんね。マタンゴの群れに襲われた時のことを思い出します」

「シーラさんはマタンゴの群れに襲われたことがあるんですね」

「状態異常攻撃をしてきますので、マタンゴは非常に厄介なんですよ。それにこの容姿ですから、意外とトラウマになっているかもしれません」

シーラさんがここまで言うのは珍しいな。

購入したマタンゴは、戦闘要員として見てもいいのかもしれない。

「シーラさんにトラウマを植え付けるって、相当な魔物なんですね。私はファングディア相手に腰を抜かしましたし、野生のマタンゴとは絶対に出会いたくないです」

「単体ならそれほどではありませんので、出会ったとしても大丈夫だと思います。それに……私が守りますから」

私がもう少し若ければ惚れていたと思うほど、本当に頼もしすぎる言葉。

自分で戦えない以上、私はシーラさんに守ってもらうしかないからな。

――と、話が脱線してしまったが、とりあえずこれまでと同じように名前をつけてあげよう。

覚えやすいようにシンプルな名前……マッシュがいいな。

「シーラさん、よろしくお願いします。それで……マタンゴにも名前をつけてあげましょう。マッシュはどうでしょうか?」

「いいと思います。覚えやすいですし、呼びやすい良い名前です」

「なら、マッシュで決定ですね。マッシュ、これからよろしくお願いします」

私はマタンゴのマッシュにそう声を掛けながら、手を差し出した。

撫でようかとも思ったが、傘の部分には毒があることを思い出して手を差し出すだけに留めた。

マッシュは私の差し出した手に軽く触れると、口角を上げて頷いている。

精一杯笑ってくれているようで、早くもマッシュが可愛く思えてきた。

「まずはそうですね……。何ができるのかを試させてもらっていいですか?」

まだ理解していなさそうなマッシュに対し、実際に苗植えから水やり、そして収穫までの一連の動作を見せる。

すると、早くも要領を掴んだようで、マッシュは次々に植えられていない苗を植え始めてくれた。

私やシーラさんは腰を落としたり、上げたりしないといけないため、その動作で若干タイムロスになってしまうのだが……。

マッシュは屈まなくても植えられるようで、物凄い速度で植えることができている。

収穫も同様で、私の倍くらいの速度で収穫しては、籠の中に収穫した野菜を入れてくれているマッシュ。

単純な力もあるようで、これは想像していた以上に戦力になってくれそうだ。

「凄いスピードですね。自然系の魔物だから、歩きにくい土の上でも速いのでしょう。佐藤さん、これは……大きな戦力ですよ!」

「物覚えも速いですし、従魔にしたのは大正解でした。新たなマタンゴを増やし続けてもいいかもしれません」

「マタンゴだらけというのは少し絵面が怖くなりそうですが、これだけ働けるとなるとありですね」

想定以上の働きに、手を取り合って喜ぶ。

そんな私達を見て、マッシュは不思議そうな顔を見せつつも、農作業を続けてくれている。

購入したばかりだが、シーラさんに言った通り次なるマタンゴを購入してもいいかもしれない。

私はタブレットを操作し、マタンゴの購入ページへと飛んだのだが……現実はそう甘くはなかった。

スキルの強化と同じように、二体目のマタンゴの値段は30000NPに跳ね上がっており、手が出せる値段ではなくなってしまっている。

気になってスライムとワイトナイトの値段も調べてみたが、スライムは2500NP、ワイトナイトも10000NPと5倍の値段になっていた。

どうやら2体目は、5倍前後に値段が上がってしまうらしい。

初回購入ボーナスで安くなっているのか、それとも3体目を買った時は更に高くなるのか。

まぁどちらにせよ、大量のマタンゴを従魔にして働あてもらうという夢は呆気なく散ってしまった。

【異世界農業】は夢のようなスキルではあるけど、決して楽はできない仕様になっていて、神様が設定したのか分からないけど、調整が上手いなと感服してしまう。

「シーラさん、マタンゴの大量購入は難しそうです。二体目はもれなく金額が上がっていますね」

「そうなのですか……。一気に快適な農業ライフになるかと思いましたが、そう甘くはありませんね。……ただ、マッシュのお陰で作業が速くなっていることは確かですし、私達も負けずに頑張るとしましょう」

「ですね。色々な魔物を従魔にできるということでもありますし、気を取り直して頑張りましょうか」

私とシーラさんはすぐに切り替え、マッシュと共に農作業を行った。

結果として、いつもの作業量は夕方前には終わり、余った時間で新たな野菜の苗を植えることができたのだった。