軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第341話 お酒好きの幼馴染

ガロさんについて知ることができたのは良かった。

模擬戦大会ではいろいろな実力者が来てくれるから、強い人というのは珍しくないんだけど、まさかお酒のイベントで強者と出会えるとは思っていなかったなぁ。

実力はさておき、目は肥えてきた自信があるだけに、昨日のガロさんは衝撃的だった。

対人戦を専門に戦っていた人だからこそのいなし方だったんだと思う。

「それで、ガロさんとジョルジュさんはどういった関係なんですか? 一見、接点がなさそうに見えるんですが」

「ワシとガロは同じ村の生まれなんじゃ。年齢も同じで、小さい頃はよく遊んでおった」

「へー! 幼馴染だったんですか。それで仲が良いんですね」

「……ヒック。小さい時はジョルジュの方が強かったんじゃぞ。よく戦いごっこをしては、ワシはボッコボコにやられておった」

「才能自体はジョルジュさんの方があったってことですか?」

全くイメージがないだけに、ジョルジュさんの方が強いというのはかなり意外。

ここに越してきてから何度も戦う機会はあったと思うけど、一度たりとも戦うことはなかったからね。

「そりゃもう圧倒的にじゃ。……ヒック。村を襲ってきたヴァイスバッファローという魔物も、10歳の時に倒しておったからのう」

「ふぉっふぉっふぉ。懐かしいのう。10歳でヴァイスバッファローを倒したということで、ワシは王都の冒険者にスカウトされて村を出たんじゃ」

「ということは、ジョルジュさんは元々冒険者だったんですか?」

「10年ほどじゃがな。戦闘の才能はあったようじゃが、いかんせん戦うのは好きじゃなかった。冒険者人生に早くも飽きつつあったときに、ワシが出会ったのが酒じゃった。それ以降は冒険者を辞めて酒造で働き始め、40手前で独立。王都で酒を造って売っている中、60手前でロッゾに誘われてここにやってきたって流れじゃ」

10年も冒険者をやっていたんだと思ったけど、10歳の時にスカウトされたって話だから、20歳でお酒に出会って引退したのか。

それで、そこからは酒造の道に進んだって……すごい人生だなぁ。

「ジョルジュさんの過去を知らなかったのですが、濃い人生を歩んでいたんですね」

「……ヒック。ジョルジュは神童なんて呼ばれておったんじゃぞ。15歳でゴールドランク冒険者、20を前にしてミスリル冒険者。史上最高の冒険者になるのではと噂されていた中、突如の引退じゃからな。その噂はまだ村を出ていなかったワシの耳にも届いてきたぐらいじゃ」

「ということは20歳のとき、ガロさんはまだ村を出ていなかったってことですか? ……2人の関係が面白いです!」

そこからガロさんは武闘大会を総ナメにしていくんだもんね。

なんだか漫画にできそうなくらい、2人の人生と関係性が面白い。

「そうじゃな。……ヒック。ジョルジュだけ村を出たのが悔しくて、日々の稽古には励んでおったが、近くで天才を見ていただけに諦めの気持ちも強かった。……ヒック。そんな中でジョルジュ引退の噂を聞いて、ワシはすぐに村を飛び出したんじゃ」

「引退の噂を聞きつけて、ジョルジュさんのところに行ったんですね」

「……ヒック。そうじゃ。才能があるのに引退する親友に何があったのか、心配の一心で様子を見に行ったんじゃが……あろうことか、ジョルジュは落ちぶれたわけでもなく、キラキラとした顔で仕事をしておった」

「久しぶりの再会を懐かしむ間もなく、ガロはいきなり殴りかかってきおってな。ふぉっふぉっふぉ。一言も交わすことなく、殴り合いの大喧嘩じゃったな」

「久しぶりの再会なのに、殴り合いに発展したんですか?」

「活躍する親友に憧れもあったんじゃが、それ以上に嫉妬もあったからのう。……ヒック。そんなジョルジュがあっさりと冒険者を辞め、別の道に進みながら輝いていることに当時は許せなかったんじゃ」

ジョルジュさんからしたら天職に巡り会えた気持ちだったけど、ジョルジュさんの影に隠れたせいで村から出られずにいたガロさんは複雑な心境になったってことか。

「殴り合いの末にガロは姿を消してな。ワシも心配で頻繁に村にも戻ってはいたんじゃが、ガロは村に戻らずに消息を絶ったんじゃ」

「……ヒック。ワシは鍛えておったのに、冒険者を辞め酒造りに勤しんでいるやつにボッコボコにされたからのう。悔しすぎて、ジョルジュに勝つために戦いに全てを捧げることにしたんじゃ」

「そこからガロは闘技者としてメキメキと力と知名度を上げていき、いつの間にか最強のチャンピオンと呼ばれるようになっておった」

「そういう経緯で闘技大会に参加するようになったんですか。ちなみに、2人が和解したのはいつなんですか?」

「ガロがチャンピオンになってすぐじゃよ。ワシを超えたと思ったら、怒りも消えたようですぐに会いにきおった」

「懐かしいのう。……ヒック。和解した年から、ジョルジュの造った酒を毎年飲むのが恒例になったんじゃったな」

人に歴史あり――だね。

二人は思っていた以上に深い関係だったし、何より過去が面白かった。

ジョルジュさんの幼馴染であるガロさんと、私も運命的な知り合い方をしたわけだし、これからも交友を続けていきたい。

楽しそうにしている2人を見て、私は心の底からそう思ったのだった。