軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第338話 ぽわぽわ

その後も各所で小さな揉め事はあったようだが、酔っぱらいの男性VSガロさんのような大きな揉め事はなく、オクトーバーフェストは無事に終了した。

一時はヒヤヒヤしたけれど、何事もなくイベントを終えることができて本当に良かった。

「初めての試みでしたが、個人的にはすごく良かったです。これだけたくさんのお酒を飲める機会はありませんし、また開催してもいいんじゃないでしょうか?」

シーラさんは目をとろんとさせながらも、楽しそうにそう言ってくれた。

私も良い試みだったと思うし、先ほどサムさんからチラッと聞いた話では、とんでもない売り上げを叩き出したらしい。

お酒のイベントなだけにヒヤヒヤする場面もあったものの、来年以降も開催していいイベントのひとつかもしれない。

「来年以降の開催はこれからの話し合いで決めると思いますが、私自身も楽しかったですし、前向きに検討したいとは思っています」

「本当ですか? 絶対に前向きに検討してくださいね? はぁーあ……。ぽわぽわしていて気持ちがいいです」

シーラさんは、初めて見るぐらい緩んだ表情になっている。

これは早めに休ませてあげた方がいいかもしれない。

「シーラさん、部屋に戻りましょうか。シャワーは明日にして、今日は水を飲んで寝てください」

「えー。せっかく気持ちがいいのに……。佐藤さん、もう少し飲みましょうよ」

「駄目ですよ。これ以上は危ないですから」

ゴネるシーラさんをなんとかエスコートし、部屋まで無事に送り届けることができた。

別荘まで戻ってきたし、私もこのまま寝たいところだが、流石にお礼を言って回らないといけない。

今回はお手伝いをせず、イベントを楽しませてもらったのだから。

ということで、再び外へ出た私は、お礼を言って回ることにした。

「サムさん、お疲れ様でした。過去一番大変だったと思いますが、大きな問題もなく進行してくださり、本当にありがとうございました」

「おお、佐藤さん。私は自分の仕事を全うしただけだから、お礼なんかいらないよ。それに、メダルシステムのお陰で揉め事も少なかったし、予算も惜しみなく使わせてもらったからね。お酒関係のイベントだったとは思えないくらい、平和に終えることができたのは佐藤さんのお陰さ」

サムさんは爽やかな笑顔で私を褒めると、片手を差し出してきた。

イケメンすぎる所作にキュンとしつつ、私は差し出された手を握り返し、握手をする。

「私ではなく、サムさんのお陰です。それでですが……売り上げはどんな感じだったでしょうか?」

「大まかな計算だけど、予想していた額の3倍以上の売り上げを叩き出しているよ。メダルシステム、罰金システム。それに警備にもお金をかけたけど、揉め事が少なかったこともあって、とんでもない回転率でお酒が捌けたのが大きかったね」

「そんなに売り上げが出たんですか。これは皆さんに特別ボーナスをあげてください。円滑に進められたのは皆さんが頑張ってくれたお陰ですので」

私がそう伝えると、後ろで聞いていた人たちから大きな歓声が上がった。

サムさんにはこれからもお世話になるだろうし、サムさんが雇っている方々や、今回のイベントに協力してくれた人たちには、頑張ってくれた分の対価をしっかり払った方がいい。

「いやいや、約束してもらった分しか受け取れないよ。契約はしっかり守るのが私のポリシーなんだ」

「いえ、ここは私も譲れません。サムさんにはまた仕事を依頼すると思います。その時に手を抜くとは一切思いませんが、普段以上に頑張ってもらうためにも追加報酬は出させていただきます」

一瞬、場が冷えたが、私の言葉で再び盛り上がった。

サムさんの気持ちも分からなくはないけれど、それ以上に私は現場で働く人の気持ちがよく分かる。

大変な現場だったからこそ、予想以上の売り上げが出たのだから還元したい。

「佐藤さんも意外と頑固だからな。……分かったよ。今回は遠慮せずに頂かせてもらう」

「はい。遠慮せずにもらってください」

「……ただ、次に佐藤さんと仕事をしたときは、いつも以上に頑張ってもらうからね。みんなも覚悟してくれ」

「「「おーーー!!!」」」

拳を突き上げ、大歓声に包まれた。

やはり頑張りが認められ、その分の報酬がもらえるだけで気持ちは全然違う。

喜んでくれているみんなを見ながら、私も嬉しい気持ちになった。

売り上げが出せなかったら流石に厳しいが、次も大きな黒字を出せたら追加でボーナスを出してあげよう。

今ここにいる人たちだけでなく、普段から農作業をしてくれるみんなや、建築や料理に携わってくれている人たちにも還元する。

私は心の中でそう誓い、大団円の中、オクトーバーフェストは幕を閉じたのだった。