軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第30話 交流

それからもシーラさんと雑談をしていると、話が終わったのか別荘から四人が出てきた。

想定していた以上に出てくるのが早かったけど……果たして大丈夫だろうか。

近づいてみると、美香さんの表情が明るいことが分かった。

険悪にならずに有意義な話し合いができたことが分かり、私も一安心する。

「佐藤、気遣ってくれてありがとう。お陰でゆっくり話し合えた!」

「それなら良かったです。それで美香さんはどうすることにしたんですか?」

「もう少し、みんなと一緒に頑張ることにした! それでなんだけど……駄目だった時はここで働かせてくれる?」

「もちろんです。といいますか、逃げる時だけじゃなく気楽にいつでも遊びに来てください」

「ありがとう! 逃げる場所があるって分かっただけでも気が楽になったよ!」

「ええ、いつでも逃げてください。逃げることは悪いことではありませんからね」

私は美香さんに笑顔でそう告げて見送った。

これは身も心も壊れるまで逃げることができなかった私からできる、最大限のアドバイス。

そのまま美香さんは笑顔で手を振りながら去っていき、蓮さんだけが一人その場に残った。

「えーっと、佐藤さん、でしたよね。今回は本当にありがとうございました」

「そんな畏まらなくていいですよ。佐藤でいいですし、タメ口で構いません。蓮さんや将司さん、それから唯さんは大丈夫ですか?」

「そういうことなら遠慮なく……俺達もギリギリだったかもしれない。俺と将司は楽しいって気持ちは大きかったと思うけど、それでも命の危険を感じる度に疲弊していたから」

「今回は美香さんが先にまいってしまいましたが、蓮さん達も無理はし過ぎないようにしてください。私だけが巻き込まれた一般人ってことになっておりますが、蓮さん達も巻き込まれた一般人なんですからね」

「……確かにそうだよな。あちらこちらで勇者様、勇者様って言われていたから、俺達も舞い上がっていたけど……元はただの一般人。まずは休みをほどほどに取るところからゆっくり始めようと思う」

「ええ。絶対にその方がいいです。そして、少し長い休みを取る時は是非遊びに来てください。美香さんには軽く振舞ったのですが、ここでは日本の料理も少ないですが作ることができますので」

私が何気なくそう告げると、蓮さんは酷く驚いたような表情を見せて固まった。

「そ、それ本当なのか!? この世界の一番キツいことはご飯がマズいこと! それが改善されるならマジで頑張れる!」

「とはいっても、今は余裕自体がないんです。だから、たまに振る舞えるぐらいですが……」

「たまにでも本気で嬉しい! 佐藤さん、今度なにか食べさせてくれ! 俺たちにできることなら何でもする!」

「でしたら、たまに農業を――」

そこまで言いかけて、連さん達に農業を手伝わせるのは勿体ないという思考に至った。

ここには羽を伸ばすために来てほしいし、別のものを要求するべきだろう。

「すいません。でしたら、魔力塊を集めてきてくれませんか? 魔力塊と物物交換っていうのはどうでしょう」

「魔力塊って魔物を倒すとたまに落とすやつだよな? 確か、鞄に入っていたはず!」

そう言うと蓮さんは鞄から魔力塊を取り出した。

かなり質が高いものなのか、美香さんが持っていたものよりも黒々としていて大きい。

「あー、それです。その魔力塊を集めてきてほしいんです」

「分かった! 日本のご飯が食べられるならいくつでも集めてくる! とりあえず……美香を助けてくれたお礼として、この魔力塊を渡すよ! それから……俺のことは蓮さんじゃなくて、蓮って呼んでほしい!」

「蓮……ですか? 分かりました。私はさん付けが癖ついてしまっているので難しいかもしれませんが、なるべくそう呼べるように努力します」

「努力って、佐藤さんは変わってるな! それじゃもう暗くなっちまうから、俺達は王都に戻らせてもらう! また近い内に来るから、その時はよろしくお願いします!」

「ええ、いつでもお越しください」

蓮さ……蓮は笑顔で親指を立てると、先に馬車に乗った三人を追って馬車に乗り込んだ。

それにしても、さん付けなしで呼べ――か。

長年ブラック企業に勤めていたということもあり、人をさん付け以外で呼ぶことがなくなっていたから変な感覚。

私も学生時代は、さん付けなんかしていなかったはずなんだけどなぁ。

変なところで老いを感じつつも、とにかく魔力塊の入手経路が見つかって良かった。

日本の料理を振舞う対価ということだし、野菜を育てないといけないのは変わりないけど、良い感じでWIN-WINの関係を築くことができそうだ。

蓮さんを蓮と呼ぶことはかなり難しいと思うけど、そう言ってくれたのはかなり嬉しかった。

とりあえず、今もらった魔力塊をスレッドに食べさせてから、私も別荘に戻るとしよう。