軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第262話 ベルベットの意見

その日の夜。

農作業でお疲れのところ申し訳ないけど、ベルベットさんに時間を取ってもらった。

理由はもちろん、ローゼさんが描いた漫画を見せるため。

ローゼさんからはすでに許可をもらっているので、何の心配もなく見せることができる。

「佐藤、呼び出してどうしたの? 何か伝え忘れていたことでもあった?」

「いえ、新しい用事です。ベルベットさんに読んでもらいたいものがあるんです」

「読んでもらいたいもの? 何それ?」

首を傾げているベルベットさんに、私はローゼさんの漫画を手渡す。

最初は何のことか分かっていなかったようだけど、内容を見てすぐに理解したようだ。

「……えっ! もしかして漫画!?」

「はい。漫画と呼ぶには文字が多すぎるんですけど、ローゼさんが描いた処女作です。ぜひ読んでみてください」

「ローゼが描いたの? ……読ませてもらうね」

ベルベットさんは真剣な表情で、ローゼさんの漫画を読み始めた。

2人とも地盤がしっかりしているため、処女作の完成度は内容だけなら同程度。

ベルベットさんがどう判断するのか、とても楽しみだ。

「…………面白い! 確かに漫画というよりは小説だけど、所々に挟まれているイラストは綺麗だし引き込まれる! これが初めての作品って凄いね!」

「ですよね。私もそう思っていたので、ベルベットさんも同意見で嬉しいです」

「――でも、私に見せてよかったの? 絶対に嫌がったでしょ。というか、勝手に見せたわけじゃないよね?」

目を見開いて私に詰め寄ってくる様子は、もし勝手に見せていたら手を出されそうな勢いだった。

同じ立場として、無断で見せていたとしたら許せないのだろう。

「ちゃんとベルベットさんに見せる許可を取っています。あっ、もちろんベルベットさんが漫画を描いていることは伝えていません」

「それならいいんだけどさ! でも、ローゼさんも漫画を描いていたんだ。知らなかったけど、すごく嬉しいかも」

「処女作ということから分かると思いますが、最近描き始めたばかりです。ベルベットさんから、どうしたら漫画っぽく描けるのか、アドバイスをもらいたいとも言っていました」

「どうしたら――かぁ。難しいけど、まずはネームを書きまくって慣れていくしかないと思う」

うーん……アドバイスとしては弱い気もするけど、近道がないという証明でもある。

面白いストーリーを描けて、イラストもしっかり描けるのだから、慣れるまでは努力あるのって感じかぁ。

「やっぱり近道はないんですね。よければですが、ベルベットさんから直接伝えてあげてもらえませんか? ベルベットさんに見せることは伝えてあるので、直接アドバイスしてもらった方が喜ぶと思います」

「えー! アドバイスできるほどじゃないんだけど……せっかく見せてくれたし、アドバイスする?」

「是非してあげてください。ベルベットさんが漫画を描いていることは伏せても大丈夫ですから」

「もちろん伏せるよ。言ったら、私のも見せることになるし、絶対に言えない」

「まぁ、既に読んではいますけどね」

大絶賛だったし、ベルベットさんにもカミングアウトしてほしいけど、無理強いはできない。

今回の件でローゼさんがアドバイスをもらって、2人の距離が縮まってくれれば、私としては嬉しい。

「だとしてもダメ! それにしてもすごい作品だなぁ。小説を読みまくってるって言ってた意味が分かる。さっき佐藤が言ってたように、ローゼさんなら私の作品のネタを出してくれるかもね」

「きっと出してくれると思いますよ。ローゼさんが原作に徹してくれるかは分かりませんが」

2人が協力してくれれば鬼に金棒。

でも、ライバル関係として切磋琢磨してもらうのもいいし、どんな形になっても距離が縮まって悪いことはない。

「とにかく分かった。別荘に戻ったら、さっそくローゼさんと話してみる。それで、滞在期間中はアドバイスさせてもらうよ」

「ありがとうございます。ベルベットさんにもいい刺激になると思うので、2人の作品がどう進化するのか楽しみにしています」

「そんな劇的に進化はしないでしょ。私はカミングアウトしないし!」

そう言いながら、ベルベットさんは別荘へと戻っていった。

とにかく、今回の一件は大きな一歩だと思う。

私としては、いずれ2人の作品を漫画として世に出すこと。

ここだけの作品じゃなく、全世界に広めたいと思っているし、それがお金に繋がればいいなとも思っている。

まあ、ベルベットさんもローゼさんも王女様だし、お金はいらないと思うけど、

自分の描いたものが評価されてお金に変わるとなれば、また別の嬉しさもあるはずだからね。

そんな密かな夢を抱きながら、2人の関係がどうなっていくのかを楽しみに、私も別荘へと戻ることにしたのだった。