軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第256話 迷子

みんなで談笑しながらご飯を頂いた翌日。

早朝から戻ることになっていたため、ヤトさんには別れを告げ、ドレイクさんの背に乗って帰ることになった。

行きは気分が高揚していたため、空の旅も楽しく終えることができたけど、帰りは目新しさが薄れたこともあって、かなり苦しい旅路だった。

よく考えれば、飛行機に8時間乗るのもきついんだから、空の旅が楽なわけがない。

若干のトラウマになりつつも、私たちは無事に別荘へ戻ってくることができた。

到着後すぐに農作業を行い、終わった瞬間に泥のように眠った翌日。

昨日は夕方くらいには眠ってしまったため、今日はかなり早く目が覚めてしまった。

シーラさんも同じだったようで、リビングで紅茶を飲みながら漫画を読んでいた。

「シーラさん、おはようございます。早く目が覚めたんですか?」

「おはようございます。昨日は早く寝てしまったので、変な時間に目が覚めてしまったんです。佐藤さんもですか?」

「はい。全く同じ理由で、この時間に目が覚めてしまいました」

やはりシーラさんも早くに目が覚めてしまったみたい。

私も紅茶を淹れ、シーラさんの目の前に座る。

昨日までのバタバタが嘘のように、平和すぎる時間。

無言が続いているけど、この無言も心地いいなぁ。

そんなことを考えながら、ぼーっと紅茶をちびちび飲んでいると……急に外がまばゆい光に覆われた。

一瞬、寝ぼけて見間違いをしたかと思ったけど、あの光は間違いなくワープゲートが開いたもの。

サツマイモがどうなったのかの報告のため、そろそろミラグロスさんが訪ねてきてもおかしくはないけど、この時間帯はさすがにおかしい。

シーラさんも不思議に感じたようで、私たちは頷き合ってから様子を見に行くことにした。

何があっても大丈夫なように、シーラさんは剣を抜き、私を守るように先導してくれている。

私はそんなシーラさんの背中に隠れながら、ワープゲートの前にやってきた。

「人の気配があります。……誰かいますか?」

シーラさんは声を少し張り上げ、そう声を掛けたのだが、返事は何もない。

このままでは進展がないと悟ったのか、大きく深呼吸をした後、シーラさんはワープゲートのある小屋の扉を蹴り開けた。

「誰ですか!」

剣を向け、中に突入したシーラさんの後を追って中に入ると、ワープゲートの前で蹲っていたのは……小さな子供の魔人だった。

小学校低学年くらいの男の子で、困り眉が特徴的な可愛らしい顔立ち。

今にも泣き出しそうであり、危害がないと判断した私は、シーラさんに剣を下ろすよう伝えた。

それから膝立ちとなり、目線を合わせてなるべく優しい声音で話しかける。

「君は誰かな? …………ミラグロスさんの知り合い?」

「……! ミラグロスお姉ちゃんのこと、知ってるの?」

「うん。ミラグロスさんは私の友達です。君とミラグロスさんの関係は?」

「ミラグロスお姉ちゃんは……僕のお父さんのお兄ちゃんの子ども?」

首を傾げ、指を折りながら説明してくれた。

この子の言っていることが本当なら、この男の子はミラグロスさんの従兄弟なのか。

「なるほど。君はミラグロスさんとは親戚なんだね。お名前は何ていうの?」

「……アス」

「アス君って言うんだね。私は佐藤と言います。よろしくね。……それで、アス君はなんで一人でここに来ちゃったのかな?」

「ミラグロスお姉ちゃんから、絶対に入っちゃダメって言われたの。だけど、気になっちゃって、トイレに行くついでに入ったら、この場所に来ちゃったぁ……ごめんなざい!」

アス君は途中で涙声になると、最後は大泣きしてしまった。

まぁ、この年頃なら「入るな」と言われたら入りたくなってしまうもんね。

アス君が誰かも分かったし、危険ではないことも分かったため一安心。

ミラグロスさんたちが心配していないかだけが不安だけど、多分向こうもまだアス君がいなくなったことに気づいていないはず。

手紙で知らせてあげたいところだけど、こちらから手紙を送る手段がないんだよなぁ。

コウモリの魔物が手紙を運んできて、そのコウモリの魔物に手紙を持たせることで文通ができていたけど、こちらから送る方法はない。

残る方法としては、ワープゲートを使って向こうに赴くことだけど……ワープゲートの使い方が不明。

魔力がどうとか言っていた気がするけど、下手に使って壊してしまったら最悪だから、ミラグロスさんから訪ねてくるのを待つしかない。

なんとなくだけど、こちらに来たことを察してくれそうだし、何かしらアクションを起こしてくれるはず。

それまではアス君を預かろう。

「謝らなくて大丈夫だよ。向こうに家があるから、ミラグロスさんたちが来るまで休んでよう。怪我とかはない?」

「……うん。佐藤さん、ありがとう」

「どういたしまして。アス君は何か好きな食べ物はある?」

「好きな食べ物……? お肉か甘いもの?」

「そっか。じゃあ、このお姉さんと少し待ってて。甘いものを用意してあげる」

「いいの? ありがとう!」

困り眉のままだけど、目に輝きが戻った。

やはり食はすべてを解決してくれるし、困った時のリーサルウェポン。

シーラさんにはしばらくの間、アス君のお守りをしてもらうことになるけど、悪い子ではなさそうだし困らせることはないはず。

私はとびきりのスイーツを作り、アス君とシーラさんを笑顔にさせてあげよう。