軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第253話 プレゼント

雑談をしながら待っていると、ヤトさんが慎重に歩きながら戻ってきた。

その手には、小さくて丈夫そうな箱があり、どうやらその中身をプレゼントとしてくれるようだ。

「佐藤、待たせたのう! これが佐藤へのプレゼントじゃ!」

「ずいぶんと大事そうに持っていますが、そんなに希少なものなんですか?」

「うーむ……。希少かどうかは難しいが、わらわが必死に手に入れたものなんじゃ! 冬にダンジョンへ行かなかったのも、これを手に入れるために頑張っておったからじゃ!」

以前プレゼントとして持ってきてくれた宝玉よりも大事そうにしていたため、とんでもなく希少なアイテムなのかと思ったけど、どうやら希少価値で言えば宝玉の方が上らしい。

中身はまだ分からないが、ヤトさんが自ら手に入れてくれたアイテムをもらえるのは嬉しいし、ここまで大切そうに扱っているということは、それだけ手に入れるのが大変だったことが分かる。

「そうだったんですね。何か大事な用事があるのかと思っていましたが、私へのプレゼントを手に入れるために動いていてくれたんですか。ヤトさん、ありがとうございます」

「礼を言うのは中身を見てからにしてほしいのじゃ! 宝玉のときみたいに、受け取れないと言い出すからの!」

宝玉のときは龍族の秘宝だったから受け取れなかっただけで、今回はヤトさんが自分で手に入れたもの。

だから、どんなものであっても受け取るつもり。

ただ、それでも気持ちが吹き飛ぶくらいとんでもない代物である可能性もあるので、中身を確認させてもらうことにした。

「そういうことでしたら、中を確認させていただきます」

「うぬ! そっと開けるのじゃぞ! 傷がついたら大変じゃからな!」

ヤトさんの目が本気だったため、私はゆっくり丁寧に蓋を開けた。

中に入っていたのは、イルカのような装飾が施された指輪だった。

あれだけ丁寧に扱っていたし、分かる人には一目で分かる逸品なのかもしれないけど……私にはさっぱり分からない。

ただ、細かい部分まで丁寧に彫られていることから、凄腕の職人が作ったものだというのは分かる。

「この指輪って、そんなに凄いものなんですか? すみません、こちらの世界のことには詳しくなくて……」

「佐藤さん! この指輪は、魔法帝ジルフリードが身に着けていたとされる指輪ですよ! 全部で10個あるスペルリングのうちの1つです」

「ほほー! さすがはシーラじゃな! この指輪を知っておるとは思わなんだのじゃ!」

「魔法帝のスペルリングは有名ですから、さすがに知っています! それにしても、スペルリングは10個のうち6つが未発見。この指輪はその未発見のうちの1つですよね? どこで見つけられたのですか?」

隣で見ていたシーラさんの熱量がすごい。

前に身を乗り出している様子からも、このイルカの指輪が本当にすごい逸品であることが分かる。

「ラージャの湖じゃ! 冬にしか入れない洞窟があってな。その洞窟に隠されておったのじゃ!」

「ラージャの湖というと、あの大きな湖ですか。デスフロッグの群生地で、湖の中にも危険な魔物がたくさんいる湖ですよね? あの湖に隠されていたとは知りませんでした」

「わらわも贔屓にしてくれている行商人から聞いた噂を頼りに行っただけじゃ! ただ、本当に冬にしか入れない洞窟はあったし、魔法帝のスペルリングも隠されておった! とんでもなく大変な大冒険じゃったがな!」

ヤトさんは胸を張って誇らしげに語り、シーラさんはそんな話に小さく拍手を送っていた。

この話には嘘偽りはなさそうで、本当に私のために頑張ってくれたことが伝わってくる。

希少なものを頂けるのも嬉しいけど、それ以上にヤトさんが私のために動いてくれた、その気持ちが嬉しくて仕方がない。

思わず泣きそうになってしまうが、場の雰囲気がぶれてしまうので、ここは必死に涙を堪えた。

「ヤトさん、わざわざ私のためにありがとうございます。正直、魔法帝のスペルリングを使いこなせる自信はありませんし、私なんかが持っていては宝の持ち腐れだとは思いますが……ヤトさんの気持ちが本当に嬉しいので、大切に使わせていただきます。本当にありがとうございます」

「ぬっふっふ! 喜んでくれてよかったのじゃ! 寒い中、頑張った甲斐があったのう!」

「ヤトさん、ありがとうございます。あの、ラージャの湖には一人で行ったんですか? アシュロスさんはダンジョン攻略の方に参加していましたよね?」

「あっ、伝え忘れておった! ローゼとイザベラが同行してくれたのじゃ! 文句ばっかり言っておったが、活躍してくれたし、あの2人の力も大きいのじゃ!」

「そうだったんですか。それでは、ローゼさんとイザベラさんがいるときに、お礼としてご馳走を振る舞います。楽しみにしていてください」

「普段良くしてもらっているお礼の品じゃから、そのお返しをもらうのは変な気もするのじゃが……。佐藤のご馳走は断れんのう! ぬふふ、今から楽しみじゃ!」

ヤトさんは楽しそうに笑ってくれており、私はしっかりお返しできるようにご馳走を作ることを決意した。

空の旅に、ヤトさんの故郷、そして嬉しすぎるプレゼント。

今日はいいこと尽くめで、ドレイクさんとマージスさんには無理なお願いをしてしまったけど、エデルギウス山に来て本当によかったと、私は心の底から思ったのだった。