軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第247話 初優勝

ヤトさんは先に2ストック目を奪われながらも、何とか巻き返して勝利をもぎ取った。

口では手加減したと言っていたけど、内心はヒヤヒヤだったようで、じんわりと汗をかいていた。

そんなこんなで迎えた1回戦は、シード勢が順当に勝ち残る中、唯一シード枠を破ったのはローゼさんだった。

娯楽室では常に漫画を読んでいたし、完全な未経験者のはずなんだけど、経験者たちのプレイを見て覚えたようで、初心者らしからぬ戦いぶりを見せていた。

ヤトさんの対抗馬となり得る相手が現れたことにヒヤヒヤしつつ、準決勝で私が対戦するのはヘレナ。

シーラさんとほぼ毎日ゲームをしている強敵で、初戦でも唯さんに危なげなく勝利していた。

気を引き締めてから、ヘレナとの試合を迎える。

ヘレナが選んできたキャラはフォックス。

フォックスは動きの速いキャラであり、スピードのあるキャラで撹乱してくるのが狙いだと思う。

実際、私は年々動体視力が衰えており、動きの速いキャラは苦手で対応が難しいんだけど……フォックスは64版から登場しているキャラ。

馴染みのあるキャラということで、戦い方は熟知している。

私の弱点を突いたキャラ選択は賢かったけど、古くからいるキャラを使ったのは完全に裏目だった。

まぁ、ヘレナはそのキャラが古参だということを知らなかっただろうから、仕方ないといえば仕方ないんだけどね。

ということで、何度か速さに対応できず攻撃を通される場面はあったものの、蓮さん戦と同様に1ストックも取られることなく、私の完勝で試合は終わった。

「マスター! つ、強すぎます! まさか1ストックも奪えないとは思っていませんでした」

「得意なキャラだったというのもあります。ヘレナも順調に強くなってますね」

「いえ、まだまだ研鑽しないといけません。マスター、絶対に優勝してください」

ヘレナからのエールを受けながら、私は決勝戦に向けた視察を行う。

準決勝第2試合は、美香さん対シーラさん。

去年は一進一退の攻防が繰り広げられていたが、今年は終始シーラさんのペース。

結果として2ストックを取られはしたものの、10回戦えば9回はシーラさんが勝つと思えるような試合内容だった。

「佐藤さん、勝ち上がりました。決勝戦ではよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。まずは……未経験者組の決勝戦ですね」

握手を交わしたものの、まず行われるのは未経験者組の決勝戦。

対戦カードはヤトさん対ローゼさん。

まさかの未経験者であるローゼさんが決勝戦に駒を進めてきた。

成長速度が凄まじく、準決勝の相手であったノーマンさんはそれなりにプレイしていたはずなのに、実力で勝ちきっていた。

この成長速度を見るに、ヤトさんも食われてしまう可能性が高い。

一方のヤトさんは、2戦ともギリギリの勝利で勝ち上がってきた。

圧倒的な優勝候補だと思っていたけど、勝敗はまったく予想できない。

「ローゼ、負けないのじゃ!」

「……イザベラの仇を取る」

お互いに一言掛け合ってから始まった決勝戦。

ヤトさんはクッパ、ローゼさんはゼルダ。

ゴツいキャラが好きなようで、大味な攻撃を繰り返すヤトさんのペースで試合が始まった。

復帰がしづらいため、クッパはあまり強いキャラではないと思うが、初心者相手にはその圧倒的なパワーが際立つ。

一発一発が重く、掴み攻撃で飛ばすことができるため、空中で掴んでそのままバーストを決めたヤトさん。

体力もほとんど削られておらず、1ストックを奪って幸先の良いスタートを切った。

『ゼルダの伝説』のキャラで括ると、リンクは飛び道具が豊富で強いと思うけど、ゼルダは扱いが難しいキャラ。

ここまで勝ち上がったのはすごいが、近づけなければローゼさんに勝機はない。

1ストックを奪われた後もヤトさんのペースで試合は進んでいたが、とあるタイミングからローゼさんが時間差攻撃を習得したようで、形勢が変わり始めた。

クッパは重いためバーストしにくく、ダメージレースでは完全にローゼさんが上回ったが、飛ばすまでに相当なダメージを受けてしまった。

一瞬、2対2まで持ち込んだものの、すぐに返されて2対1。

ローゼさんはあと1回飛ばされたら負け、という状況に追い込まれてしまった。

そこからは一進一退の攻防が続き、復帰ミスでヤトさんが早めに1ストックを落とすというハプニングもあったが……。

序盤のリードと、飛ばされにくいクッパの耐久力により、掴みからの横Bでバーストを決めたヤトさんの勝利で試合は終わった。

「うぅ……。か、勝ったのじゃ! わらわが優勝なのじゃ!」

「……悔しいけど強かった。優勝、おめでとう」

「ぬっはっは! 初めての優勝は嬉しすぎるのじゃ! ローゼもありがとなのじゃ!」

決勝戦を終えた2人は握手を交わし、その光景に拍手が送られる。

後半は危うかったし、3戦ともギリギリの勝利ではあったけど、ヤトさんが優勝できて本当に良かった。

笑顔がはじけていて、その表情を見ることができて私も嬉しい気持ちになる。

負け続けで不憫なキャラになりつつあったからこそ、この優勝はひときわ嬉しかったに違いない。

私もヤトさんに戦績で負けぬよう、初優勝を目指して頑張ろう。