軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第207話 秘策

宿の近くで場所を確保できたため、私たちはジョエル君が持ってきた品物を売る手伝いをすることにした。

基本的には不要なものを持ってきたようで、売れ残って荷物になることを考えると、利益度外視でもすべて捌き切ることが目標らしい。

「ジョエル君、こちらは並べ終わりましたよ」

「こちらも並べ終わりました。売れるといいですね」

「ありがとうございます! 売れたら今夜は豪勢にいきましょう! 僕が奢りますので!」

ルンルンな様子でそう言うジョエル君。

売れるといいんだけど……思ったよりも商品がしょぼくて、心配の方が大きい。

ダンジョン攻略で手に入れた屑魔石や、妙な魔物のドロップ品。

それから、何だかよく分からない黒い液体や、薬草のような怪しい植物という、変わったラインナップ。

私なら寄らないお店だけど、果たしてお客さんが来てくれるかどうか……。

ジョエル君は元気に呼び込みをしており、私もそれに続いて声を出す。

そして、商品を並べてから約1時間が経過したが、今のところきちんとしたお客さんはゼロ。

シーラさんの容姿に釣られて近くまで見に来る人はいるが、実際に手に取って見てくれる人はいない。

「……うぅ。売れる気配がありません!」

「ちょっと商品が悪かったように思えます。ジョエルさんが要らないと思ったものだけでは、集客面では厳しいかもしれませんね」

「少しは売りたくないお宝も持ってくるべきでした……! このままでは売れなさそうですし、撤収を考えるべきでしょうか?」

「うーん……もう少しだけ粘ってみませんか? 私も何か策を考えます」

このままではあまりに不憫なので、何かしら売れる策を練ることにした。

せめて一つでも売ることができれば、ジョエル君にとって良い思い出になるはずだから。

「佐藤さん、良い策がありますか? いくら佐藤さんでも、ゴミを売るのは難しいと思いますよ」

ジョエル君の商品を“ゴミ”と言い切るシーラさん。

悪気が一切ないからこそ、その言葉の切れ味は鋭い。

「集客さえできれば、買ってくれる人もいると思います。そこで、何かしら料理を作ろうと思いまして……シーラさん、手伝ってくれませんか?」

「ここで料理ですか? 確かに売っている人がちらほらいましたが、料理なんて作れるんですか?」

「“料理”と呼べるかは分かりませんが、簡単なものならあります。シーラさんには魔法でサポートしてもらいたいのですが、いいですか?」

「もちろんです。一体何を作るんですか?」

「それは完成してからのお楽しみということで」

ということで、私は宿で耐熱容器を借り、フリーマーケット内で砂糖と水、それから串になりそうなものを購入。

さらに、タブレットを操作して、比較的安価で手に入れたブドウとミカンを用意した。

これで準備はバッチリ。

耐熱容器に砂糖と水を入れて加熱し、溶けた砂糖水を串に刺した果物にかけてから、氷魔法でカチカチに凍らせる。

りんご飴のような要領で作った、タンフルという韓国で流行っているスイーツの完成。

冷たくて、食感も楽しい。

外側はともかく、中の果物はスキルで購入した日本のものなので、きっと美味しいはずだ。

「佐藤さん、すごいですね! こんなに簡単に美味しそうなスイーツが完成するなんて」

「シーラさんのおかげです。あとはこのスイーツが集客効果を発揮してくれればいいのですが……」

誰も寄り付かなければ、無駄に労力とNPを消費しただけになる。

だからこそ、誰かしら来てほしいと願いながら、映えるようにタンフルを並べた。

すると、珍しい料理だったこともあり、ちらほらと人が集まってきた。

値段はやや高めに設定していたため、最初の1本が売れるまでは少し時間がかかったが、最初の客の反応が良かったこともあり、次々と売れていった。

人が人を呼ぶとはまさにこのことで、あっという間に私たちの周りは大勢のお客さんで埋め尽くされた。

そんな中でもジョエル君の商品はあまり売れなかったが、値引きによる攻勢の結果、目標だった完売を達成。

タンフルは売り出してから1時間足らずで完売したのに対し、ジョエル君の商品は夜までかかったものの、結果として完売できて非常に満足そうだった。

「佐藤さん、シーラさん、ありがとうございました! おかげさまで完売いたしました!」

「本当に売り切ってしまうとは……佐藤さんはすごいですね」

「私がすごかったのではなく、みんなで頑張ったおかげです。良いアイテムも手に入りましたし、商品も完売。気分良く別荘に帰れそうですね」

「はい! 今夜の夕食と明日の朝ご飯は僕がご馳走します! 豪勢にいきましょう!」

まさにルンルン気分といった様子のジョエル君についていき、私たちは夕食を食べに向かった。

この世界のフリーマーケットがどういうものかよく分かっていなかったけれど、来てみて本当に良かった。

心からそう思えるほど、楽しく充実した一日を過ごすことができたのだった。