軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 剣聖フリース その1

噂とは違っていたが、中々に面白そうな場所だったねえ。

飛行しながら私を警戒し続けていたムーンレイヴンに、スライムとは思えない色をしていたスライム、それから私に喧嘩を売り続けていたお嬢さん。

3名共に実力者なのは窺い知れていたし、せっかくならお嬢さんとは一戦交えたかったけど、女性を傷つけるのは私のポリシーに反してしまう。

だからこそ、ムーンレイヴンか変わったスライムと戦わせてほしかった気持ちがあるけど、私はよく手加減が下手と言われるからね。

従魔として愛されているのが分かったし、もし殺してしまった時が大変なため、私の方から言い出すことができなかった。

今日は面白そうな相手を遠くから眺めているだけであり、色々と鬱憤が溜まってしまっている。

若い頃に切磋琢磨した冒険者。

ドニー・イヴァン・グティエレスがまだ王都を拠点としているなら、ぜひお手合わせをお願いしたいところだねえ。

ただ、一つ気がかりなことは、風の噂でグティが冒険者を引退したと聞いたこと。

私よりも一回り年上だったし、冒険者を引退したことに驚きはないんだけど、腕が鈍っていたら今の私の相手にはならない。

私も大分前に冒険者を引退してはいるけど、それは己を更に磨くために時間を費やすため。

グティが戦いから身を置き、平和な余生を過ごしているのであれば……肩透かしを食らってしまうからねえ。

血が滾ってしまっているため、グティが昔と変わらないことを祈りながら、私は王都を目指して歩を進めたのだった。

帝都も賑わっているが、王都はそれ以上に賑わっているねえ。

二十年ぶりの王都の風景を楽しみつつ、私はグティ探しを行うことにした。

グティの情報を得たいのであれば、冒険者ギルドに向かうのが一番。

まだ王都にいるのであれば、グティのことを知らない冒険者はいらないはずだからねえ。

そう思って聞き込みを開始したんだけど……十数人の冒険者に聞き込みをしても、グティの情報は一切得られない。

グティが弱くなってしまっていることはあっても、いないことはないと高を括っていただけに、情報が手に入らないことへの落胆が大きい。

「……これは困ったねえ」

噂で聞いたドラゴンもデマだったわけで、これでは王国にやってきた意味が皆無になってしまう。

いや、モヤモヤとした分、マイナスという方が正しいかねえ。

そんな状況に私が呆然と立ち尽くしていると、後ろから鎧を着込んだ人が話しかけてきた。

鎧の感じからして、王都の兵士みたいだね。

「すみません。聞き込みをしている声が聞こえてきたのですが、グティって方はグティエレスって名前ではないですか?」

「んー? そうだが、君はグティを知っているのかい?」

「やっぱりそうでしたか。グティエレスさんは王国騎士団に所属していて、王女様の護衛もされている方です。会いたければ、王城に行けば会えると思いますよ」

「王国騎士団……王女の護衛……。なるほど。貴重な情報をありがとう。恩に着るよ」

「いえ、兵士は困っている人の味方ですので。それでは」

貴重な情報をくれた兵士は、爽やかな笑顔でそう言うと去っていった。

グティが王都にいたのは朗報だけど、気になるのは王国騎士団に属していて、王女の護衛をやっているという点だねえ。

戦いから身を置いた訳ではないようだけど、私に言わせてもらうと同じようなもの。

騎士団に属して、護衛までやっているという点で会う価値がないように思えてしまうが、ここまで来たのであれば挨拶だけでもしようかね。

兵士の情報を頼りに、私は王城へと向かった。

王城に着き、グティエレスとして聞き回った結果、冒険者から総スカンを食らったのが嘘のように、私はすぐにグティの元へと通してもらうことができた。

中庭で王国騎士団の若者たちを指導しているのは、紛れもないグティ本人。

あの鬼人と呼ばれた男も、年を取るとこうも変わってしまうんだねえ。

「まだ終わってないぞ! あと百回素振りだ!」

「――グティ、久しぶりだねえ」

声を荒げて指導をしているグティに声を掛けると、すぐに私のことを分かってくれたみたいで酷く驚いた表情を見せた。

「お前……フリースか?」

「ああ、そうだ。覚えてくれていて良かったよ」

「忘れるわけないだろ。そんな変な格好をしている人間なんて、後にも先にもお前くらいしか会ったことがねぇ」

「いやあ、久しぶりに会って変な格好はないでしょう。とりあえず、グティが元気そうで良かったよ」

もうすっかり様変わりしているかと思っていたけど、意外にも体つきや発している圧は当時とあまり変わらないように見えている。

流石に年は取っているが、これはもしかしたら……少しは楽しめるかもしれないねえ。