軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第19話 王女様

そんな書斎室の中にある席に座り、物凄い集中力で本を読み漁っている王女様の姿があった。

本に囲まれながら本を読んでいるその姿は非常に絵になっており、私はつい見入ってしまう。

「佐藤さん、お声掛けしないのですか?」

「どう声を掛けたらいいのか分からず……普通にで大丈夫ですよね?」

「はい。大丈夫だと思いますよ」

見入ってしまっていたのを誤魔化しながら、私は本を読んでいる王女様に声を掛けることにした。

「王女様、少しよろしいでしょうか?」

「はい? 誰かと思ったら……佐藤とかいう異世界人だったかしら。こんなところまで何の用?」

黙って本を読んでいる姿は絵画のように美しかいのだが、口を開くと言葉遣いが悪いせいで少し残念な感じになってしまうな。

もちろん態度に出すことはせず、私は王女様にお礼を伝える。

「王様に私のことを伝えてくださり、ありがとうございました。お陰さまで許可を頂くことができました」

「え、なに? そんなことのためにわざわざ来たの? 別に礼なんていらないわ。私の仕事をしただけだから」

言い回しに若干の刺はあるものの、糞のような上司にいびられていた私にはこの程度は何にも感じない。

年齢的にも思春期真っ盛りだろうし、そう考えると当たりが若干強いのも可愛らしく思えてきた。

「それでも本当に助かりましたので。それだけでなく、滞在費もありがとうございました。今回は大変お世話になりましたので、お礼の品をお持ちいたしました。どうか受け取ってください」

「お礼の品? 街で売られているお菓子とか、ありきたりな安いプレゼントならいらないわよ」

「決して高くはないですが、珍しいものだとは思いますので気に入って貰えると思います」

私はそう言ってから、鞄から5冊の漫画を取り出して机の上に置いた。

本気でいらなそうな態度を見せていた王女様だったが、プレゼントの品が書物だと分かるや否や興味を持ってくれたようで、そっぽを向きながらもチラチラと視線を向けている。

「それは……本、かしら?」

「はい。異世界の本です。小説とは違うのですが、抵抗感がなければ気に入って頂けると思います」

「異世界の本……。ふーん、いらないけれど、どうしてもというのなら貰ってあげるわ」

口ではそう言っているが、完全に興味津々のようで息が荒くなったのも分かった。

今時はあまり見ないツンデレというやつだろうか。

まぁ私に対してではなく、漫画に対してのツンデレだけども。

「恋愛ものですが、面白いので是非お読みください」

「恋愛もの……。ジャンルは好みではないけれど、本は嫌いではないから貰っておくわ。もう行っていいわよ」

今さっきまで王女様が読んでいた本のタイトルが、『英雄グレイドの英雄譚』だったことからも、恋愛ものは本当に好みではなさそう。

ただ、興味は未だに削がれていないようで、視線は渡した漫画に釘付けの状態。

今すぐに読みたいけれど、私達の手前読めない。

そんな王女様の心情が手に取るように分かる。

「受け取って頂けて良かったです。それではまた何かあった時はよろしくお願いします」

「ええ」

あまりにもな空返事に笑ってしまいながらも、私はシーラさんと一緒に書斎室を後にした。

私達が部屋を出た瞬間に漫画に手を伸ばしたのも見え、内容に満足してくれるかは分からないけど、気に入ってくれたのが分かって一安心。

「王女様、喜んでくれていましたね」

「はい。プレゼント選びは完璧でした。アドバイスをしてくださり、ありがとうございます」

「いえいえ。私は本が好きという大雑把な情報しか伝えていませんから」

「それでもプレゼントを選ぶに当たって助かりました。後は……内容を気に入ってくだされば最高なんですけどね」

「その点は心配いらないと思いますよ。本を読まない私でも、夢中になって読んでしまうくらい面白かったので、王女様は今既にドハマりしていると思います。……忘れ物を装って、戻って部屋の中を確認してみます?」

「いや、それは流石に可哀想です! 年齢的にも立場的にも、そういうのは隠したいと思いますので」

「ふふ、そうですね。少し意地悪を言ってしまいました」

そう言って、悪戯っぽく笑ったシーラさん。

最近はただ笑うだけでなく、色々な表情の変化も見せてくれる。

王都に来て、また更に仲良くなれたと思うし、色々な面で今回の王都旅行は大成功だった。

「それじゃ用が済みましたし、別荘に帰るとしましょうか。あの……改めての確認ですが、シーラさんはもう少し別荘に残るということで大丈夫ですか?」

「はい。前にもお伝え致しましたが、もう少しお手伝いさせてください。ご迷惑をお掛けすると思いますが、よろしくお願いします」

「いやいや、こちらこそよろしくお願いします。それじゃ戻りましょうか」

「はい。戻りましょう」

こうして王都を満喫した私達は、王様が用意してくれた馬車で3日ぶりの別荘に戻った。

贅沢を言うのであれば、勇者さん達にも会いたかったですが……。

この距離でしたらいつでも来れますし、また別の機会にするとしよう。

ライムにも、農作業にも恋しくなっている私は、王都に来たときとはまた別のワクワクを胸に――馬車に揺られて別荘に帰ったのだった。