軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第97話 宴

台所に向かうと、私が表彰式を行っている間に先に来ていたであろうノーマンさんの姿があった。

自前の包丁を研いでおり、やる気満々といった様子。

「ノーマンさん、今日は来てくださりありがとうございます」

「こっちこそ呼んでくれてありがとな。模擬戦大会も見応えがあってめちゃくちゃ

面白かったし、更に異世界の食材を調理させてもらえるなんて感謝しかない」

「そう思ってくれているのはありがたいです。ちなみにですが、今回はノーマンさんが食材を見て自由に作りますか? それとも異世界の料理を作りますか?」

「うーん……。いつかは異世界の食材で自由に作ってみたいが、今回は異世界の料理をレシピ通りに作らせてもらう。時間もない訳だしな」

「分かりました。それではレシピをお教えいたしますので、一緒に作っていきましょう」

「ああ、よろしく頼むぜ」

ノーマンさんと握手をしてから、早速調理を行うことにした。

簡単に作れる美味しい料理をたくさん作る――が今回のテーマ。

材料は昨日の内に買ってあり、後は調理するだけとなっている。

ノーマンさんにはレシピの書いてある紙を渡し、分からない部分があれば適宜教えるといった流れになる。

教える時間が取られるだろうけど、基本的な調理に関してはノーマンさんの方が早いため、あまり気にならないと思う。

とにかく腹ペコの参加者たちが待っているし、急いで作りあげるとしよう。

調理開始から約1時間ほど。

ノーマンさんが加わっただけなのだが、恐ろしいほど早く予定していた全ての料理を完成させることができた。

教える時間がかなり取られると想定していたんだけど、飲み込みが早いこともあって一切時間が取られなかった。

大衆食堂で働いているというのもあるのか、全ての工程が凄まじい速度で行われていったお陰で、私は味を見ながら最後の調整を行うという役目しかしていない。

結果的に任せきりのような形になって申し訳ない気持ちになっているが、ノーマンさんの目がキラキラと輝いていたのが唯一の救い。

調理工程も珍しいものが多かったようで、本当に楽しそうに料理をしてくれていた。

「――はぁー、本当に楽しかった。もう終わりなのが悲しくなってくる」

「ノーマンさん、ありがとうございました。お陰様で、もう作り終えることができました」

「量を作るのは慣れているからな。また何かイベントごとがあって、異世界料理を作るっていう時は遠慮なく呼んでくれ。いつでも駆けつけるからよ」

「はい。遠慮なくお声掛けさせて頂きます。作った料理をノーマンさんも楽しんでください」

ということで、作った料理を外へと運び出し、ロッゾさんとシッドさんが作ってくれた簡易的なテーブルの上に乗せていく。

料理は全部で8種類。メインのキーマカレーとミートソーススパゲティ。

唐揚げ、チキンナゲット、フライドポテト、生野菜のサラダ。

あとはデザートとして、バニラアイスとプリンを用意してある。

デザートだけは昨日の内に作っておいたもの。

冷やしておけて簡単なものということで、またしてもバニラアイスとプリンだけど、どちらもいくら食べても美味しいから問題ないだろう。

「すっげぇ美味そう! 模擬戦大会だけで満足できる大会だったのに、日本のご飯が食べられるのは嬉しすぎるぜ!」

「もう少し勝ち進めていれば、遠慮なく食べることができたんですけど……。いえ、今日は体重のことを気にせず食べます」

「そうそう! ダンジョン攻略とかでカロリーは消費するし、どうせ抜くならこっちの世界の料理でしょ!」

「だな。佐藤さんの料理を前にカロリーとか洒落臭い」

蓮さん達はいつものように喜んでくれており、今すぐにでも食べ始めたいってほど目が本気。

既に振舞ったことのある人達は、喜んでくれているのが分かり切っていたため心配していなかったけど……問題なのは推薦されて来てくれた2人だろう。

初戦負けしてしまったし、悪い思い出にしないためにも料理で良い思い出に塗り替えてもらいたい。

ブリタニーさんに関しては、私が格別美味しい料理を振舞うってことで引き留めたし、口に合わなかった時が少し怖い。

「ブリタニーさん。どうぞ遠慮なく食べていってくださいね」

「ふーん。これが佐藤が言っていた美味しい料理かい。確かに良い香りはするね」

「香りだけじゃなく、味も美味しいと思います。余っても仕方がありませんので、美味しかったらいっぱい食べてください」

「ありがとね。遠慮なく食べさせてもらうよ」

ブリタニーさんは笑顔を見せてくれた。

後はジョエル君に声を掛けてから、食前の挨拶を行うとしよう。

「ジョエル君、頭の方は大丈夫ですか? 気持ち悪さとかがあれば、すぐに言ってください」

「全然大丈夫です! 木槌でしたので、見た目ほどダメージはありませんので!」

「それを聞いて安心しました。大丈夫なようでしたら、料理を食べていってください。元気が出ると思います」

「はい! 見た目から凄く美味しそうですもん! 一流の料理人を呼んで作ってもらったと聞いたのですが、その話は本当ですか?」

「本当ですよ。食材も一級品だと思いますので、ジョエル君もきっと美味しいと思ってくれるはずです」

「良いところを見せられませんでしたが、遠慮なく食べさせて頂きます!」

ジョエル君も楽しそうにしてくれている。

私はホッと胸を撫でおろしつつ、前に出て食前の挨拶を行うことにした。

みんな待ちきれないと思うため、長々とは話さずにサッと短くまとめる。

「今日は本当にありがとうございました。皆さんのお陰で素晴らしいイベントになったと思います。次回大会も開催できればと思っていますので、その時はぜひ参加頂けたら幸いです。ということで……冷めてしまいますので、ご飯を食べましょうか。――いただきます」

「「「いただきます!」」」

全員での食前の挨拶の後、一斉にご飯に飛びついていった。

中でも一番動きが速かったのはシーラさんであり、決勝戦で敗れてしまって少し心配していたけど、元気に食べているところが見られて良かった。

みんながこうして楽しそうにご飯を食べているところを見られ、我ながら本当に良い催し物だったと思う。

この大会を開くことができたのはみんなのお陰だし、参加、協力してくれた全員に感謝をしつつ……私もノーマンさんが作った日本料理に飛びついたのだった。