軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第94話 月と太陽

そして、いよいよ第2試合の個人的目玉カード。

美香さん対シーラさんの試合の番が来た。

どちらも純粋な剣士であり、両者シンプルに強いという勝敗が全く読めないカード。

ファンタジー世界の人でありながら、技術重視の戦いをするシーラさん。

日本から来た異世界人でありながら、ファンタジー的な戦い方をする美香さん。

2人とも純粋な剣士なんだけど、戦い方は全く別のため本当に面白そうな一戦。

「それでは佐藤さん、行ってきますね」

「はい、頑張ってください。応援しています」

「ふふ、ありがとうございます。力になります」

笑顔のシーラさんがゆっくりと試合会場に向かった後、私の後ろから美香さんが走ってきた。

「シーラだけでなく私も応援してよ! 贔屓はズルだからね!」

「もちろん美香さんも応援していますよ」

「本当かなー? 佐藤はシーラ贔屓が凄いから!」

そう茶化すように笑いながら、美香さんも試合会場へと向かった。

こうして並んでみると、見た目も正反対な感じで面白い。

肌が白くて清楚な感じなシーラさんと、肌がほどよく焼けていてギャルっぽい美香さん。

今はギャルというよりも元気っ子って感じでもあるけど、とにかく月と太陽のような対比であり目を惹かれる。

「シーラ、よろしくね! 絶対に負けないから!」

「よろしくお願い致します。私の方こそ負けません」

「それでは――始める!」

挨拶もほどほどにすぐ試合が開始された。

純粋な実力者同士の戦いのため、ロッゾさん対マッシュの時のような膠着した試合展開になると思っていたのだけど……試合開始と同時にお互いが斬りかかりにいった。

最初は拮抗した試合展開であり、観客席から感嘆の声が上がるほど互角でハイレベルな斬り合い。

ただ、美香さんはスキルを使って一気にギアを上げたようで、アクロバティックな動きでの攻撃にシフトし出した。

飛んだり跳ねたり回転したりの、映えながらも実用的な攻撃を駆使したことで、シーラさんは一気に防戦一方となった。

美香さんは優位に立つと更に調子が上がるみたいで、多彩なバリエーションの攻撃を様々な角度から打ち込んでいく。

ただ――シーラさんは冷静さを失わない。

太陽のような笑顔で攻め続ける美香さんとは対照的に、ガードをしながら氷のように冷たい視線を向けて観察している。

そして、跳ねる前の一瞬の隙に合わせた、シーラさんの水平斬りが腹部に直撃した。

美香さんがあれだけ攻撃していたのに、先にクリーンヒットさせたのはシーラさんという面白い状況。

ここで美香さんの動きが止まってもおかしくないと思ったんだけど、美香さんは更に楽しそうに笑いながら、攻撃の手を速めていった。

その姿は舞を舞っているようで、今度は動きを読み切ったはずのシーラさんの右腕を美香さんの一撃が捉えた。

一進一退の攻防に歓声が上がる。

そんな歓声に呼応するように、2人の動きはどんどんとよくなっていく。

そして再びシーラさんのカウンターが決まり、取り返すように美香さんが猛攻でクリーンヒットさせる。

一生続いてほしいと思うほどの試合だったけど、終わりは突然やってきた。

3発目を狙って、更に猛攻を繰り返していた美香さんの動きが急に鈍くなったのだ。

どうやらだけど、自分の動きに体がついて来られず、足を痛めてしまった様子。

本来ならヒーラーの唯さんのカバーがあるため、まだまだ戦えていたはずだけど、今回は外部からのサポートがない。

息も切らしてしまったようで逃げる余力もなく、足を引きづりながら何とか回避しようとしている美香さんを介錯するように、シーラさんが鋭い一撃でトドメを刺した。

「勝者——シーラ!」

「……はぁー、悔しい! でも、楽しかったなぁ! シーラ、ありがとね!」

「ふぅー、本当に強かったです。美香さん、こちらこそありがとうございました」

「それ、こっちの台詞! 意味が分からないくらい強すぎるって!」

本当にその通りで、シーラさんは明らかに強すぎる。

ドニーさんと戦った時よりも更に強くなっているし、私と一緒に畑仕事をしながらどう強くなっているのか不思議でたまらない。

「お褒め頂き、ありがとうございます。勇者様に褒められるのは光栄ですね」

「シーラも私達と一緒に来る? 勇者の一員として全然やっていけると思うけど!」

「いえ、私には佐藤さんを守るという大事な役目がありますので」

「そう言うと思った! 私もシーラの立場なら、勇者なんかやらないもん! じゃ、準決勝も頑張ってね!」

もはや当たり前のように勧誘されるシーラさんが誘い断ったのを見て、私はホッとする。

これだけの実力がありながら、本当に畑仕事を手伝ってもらっていていいのかとは毎回思わされるが、シーラさんが決断しているのだから私は意思を尊重するだけ。

シーラさんが離れたいというのであれば笑顔で送り出すし、残るというのであれば笑顔で受け入れる。

「負けちゃったー! でも、私も中々強かったでしょ?」

「美香さん、お疲れ様です。本当に強かったです。見ていて本当に楽しくて、ずっとワクワクしていました」

「佐藤がそう言ってくれて良かったぁ! 自分でも本当に楽しくて、楽しすぎたせいで限界超えて動いちゃった。完敗だったし大満足はしているけど、悔しいから第2回も絶対開催してね?」

「ええ、機を見て必ず第2回を開催します」

「ありがと! じゃあ唯に治してもらってくる!」

そういうと、足を引きずりながら唯さんの下に向かった美香さん。

負けた側だけど、満足気な表情で良かった。

「佐藤さん、また勝ちました」

美香さんが去ったのを見て、シーラさんがピースしながら戻ってきた。

「シーラさん、2回戦もお疲れ様でした。美香さん相手に勝ったのは本当に凄いです」

「正直ギリギリでした。美香さんが足を怪我していなかったら勝敗は分かりませんでしたし、終始完全に押されていましたからね」

「防ぎ切ったのはシーラさんの実力ですし、見事なカウンター攻撃でしたよ。月と太陽みたいで本当に面白い試合でした」

「月と太陽……? ふふ、佐藤さんは表現が豊かですね」

つい試合を見ながら思っていたことを口走ってしまい、恥ずかしくなってくる。

「へ、変な感想ですみません。んんっ、次はスレッドとライムですね。どちらも応援しましょう」

「ええ。どちらが勝っても面白そうですし、私は分析しながら見学したいと思います」

勝者がシーラさんの次の対戦相手になるんだもんな。

気楽に見学できていることにホッとしつつも、先ほどのシーラさん対美香さんを見ると戦ってみたくなってくる。

……よし、今日から剣を振る時間を少し伸ばそう。