軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 シーラ視点

私の名前はシーラ・ベット・フェルランド。

今は従者として奴隷の如く働いていますが、これでも歴とした貴族の出。

小さい頃から戦うことが大好きだったため、将来は王国騎士として国を守りながら名を上げるという夢を持っていたのですが……。

無駄に顔が良く、そして胸も大きかったことから私は大臣の目に止まってしまった。

そして14歳の頃に従者として王の下で働かないかという誘いを受け、私の両親はその提案を即座に受け入れた。

そこに私の意思など関係なく、運良く王様の妾にでもなることができれば、晴れて王族の一員になることができる。

そんな浅ましい考えの下、私は王城で働かされることとなった。

それでもまだ王の護衛として働かせてくれれば不満もなかったのですが、私に命じられるのは雑用ばかり。

磨き上げた戦闘の腕が発揮される機会は訪れることなく、あっという間に七年の歳月が経ってしまった。

お洒落に一切の興味も持たなかったことからも、王から夜のお誘いを受けることは一度もなく、私を気に入っていた大臣からは幾度となく誘われましたが断固として拒否。

そのせいもあって冷遇され続け、22歳になっても私は雑用係から昇進することはなかった。

私がそんなこんなで燻っている中、数百年ぶりに魔王が誕生したという情報が王国全土に轟いた。

真偽のほどは分からなかったのですが、実際に魔物の動きが活発になったことや、王国で唯一のSランク冒険者の証言から魔王誕生は確定的となった。

普通の人ならば魔王の誕生に怯えるところですが、ずっと戦闘職に就きたかった私としてはこれ以上ない好機。

不謹慎ではありますが、荒れ狂った世界になってほしいと願っていたところ……王は王国に伝わる秘術『勇者召還』を行うことを決めた。

『勇者召還』とは、その名の通り異世界から勇者を呼び出す秘術であり、その秘術は無事に成功した――かのように思えましたが……一人のおじさんが巻き込まれて召還されてしまった。

活気に満ちた勇者達とは違い、見るからに冴えないおじさん。

冴えないけれど心の広い持ち主のようで、この世界が救われるまで残ってくれると言ってくれたのですが……その不運なおじさんの護衛として私が使命されてしまった。

前々から護衛任務につきたいとは進言しておりましたが、巻き込まれてしまったおじさんの護衛では何の意味もありません。

王に何か助言したであろう大臣の顔は悪い笑みを浮かべており、幾度となく夜のお誘いを断った私への当て付けだということはすぐに分かった。

あと半年で王国騎士の入隊試験を受けることができる15歳になるというところで、従者として働くことを決められ――。

魔王の誕生で戦闘職が求められるというタイミングで、巻き込まれおじさんの護衛を命じられる。

私の運命はそういうものだったのでしょう。

心を無にし、全てを諦めておじさんの護衛を行うことを決めたのですが……別荘へと向かう道中、私はおじさんからとあることを提案された。

「護衛をさせてしまってすみません。慣れるまではお願いしたいのですが、慣れたら護衛の任を解いてもらうように私から王様にお願いしますので、どうかそれまでお願い致します」

慣れるまでという曖昧具合は気になったものの、それでも全てを諦めた私にとってはあまりにも救いの言葉。

なんでこんなことを言ってくれたのか分からず、頭が真っ白になってしまいましたが、私は何とか言葉を返す。

「い、いいのですか? 王命である以上、私はあなたの護衛を続けますよ?」

「王命であろうと、シーラさんにご迷惑をお掛けしてしまうのが嫌なんです。ただ、この世界に慣れるまでの間は守って頂けたらありがたいですね」

「本当にありがとうございます。怪我一つないように私が全力でお守りします。あの……今更失礼ですがお名前は何と言うのですか?」

「佐藤浩一です。佐藤と読んでください」

「佐藤様ですね」

「いやいや、様はやめてください! そんな大層な人間ではないので。どうしても敬称をつけたいのであれば、さんでお願いします」

「分かりました。佐藤さんを全力でお守りさせて頂きます」

大袈裟かもしれませんが、生きる希望が湧いた気がしましたし、何より佐藤さんの護衛の任務が嫌ではなくなった――どころか、心の底からお守りしたいという気持ちになれたのが非常に大きい。

従者である私にも気を使ってくださるし、王城で雑用をするよりも何倍も良いかもしれない。

馬車に揺られ、のほほんとしている佐藤さんを見ながら私はそんなことを考えた。

佐藤さんの計らいで、私も別荘に泊まれることになった。

野宿も覚悟していたのですが、佐藤さんは本当に優しい方。

下心しかない大臣と違い、居候のような形である私に最大限の配慮までしてくださいましたし。

あそこまで優しくされたということは、体を求めてくることを覚悟していた私の……そんな覚悟すら恥ずかしくなってきます。

とにかく目覚めの良い朝を向かえることのできた私は簡単ながら朝食を作り、佐藤さんに振る舞った。

王城での生活で唯一楽しみだったのが、食事というくらいには食べることが好きな私は、それと同じくらい料理も得意――と自負していたのですが……。

私の作った朝食を食べた佐藤さんの反応は、想像していた以上に薄かった。

美味しいと口では何度も言ってくれていたので、口に合っていないということはなさそうですが、食べる前の反応と食べた後の反応がどうしても気になってしまう。

ただ、料理は一日交代で作ることが決まり、異世界の料理を食べることができるのは非常に楽しみ。

私は気分よく片付けを行い、佐藤さんの護衛に力を入れることにした。

リビングで少しくつろいだ後、おもむろに外へと出ていった佐藤さん。

私も少し離れてついていき、遠巻きから様子を伺っていると、佐藤さんの前に畑が現れた。

あれは、スキルを発動させたという認識で間違っていない――はず。

あまりにも常識外れ過ぎるスキルですが、例え勇者でなくとも、異世界からこの世界にやってきた者には強力な適性職業やスキルが身に付く。

馬車の中で少し話を聞いたけれど、佐藤さんは適性職業が【農民】と極めて一般的なものだったため、その分スキルが強力なものをもらうことができたのだと推察できる。

その結果が、瞬時に農地にできるというものというのは……強力なのかどうか微妙なところではありますが。

でも、農民からしたらこれほどのスキルはないだろうし、佐藤さんは世界を救うわけでもなく、ただこの世界で生活をするだけなのだから、生活を豊かにできるスキルは強力といえるはず。

何故か私は心の中で、佐藤さんのスキルを必死に肯定していると……。

佐藤さんはどこから持ってきたのか分からない苗を取り出し、作り出した農地に植え出した。

その様子はとても楽しそうであり、大自然の景色をバックに楽しそうにしている佐藤さんを見ているのは非常に心が安らぐ。

護衛の任務でありながら、こんなに安らいだ気持ちになっていていいのか不安になってくるけの、魔物の気配もなく平和そのものなのだから仕方がない。

城の中で数年間もモヤモヤとした気持ちが、のほほんとしているおじさんを見て安らぐことになるとは、数日前の私に言っても信じられないだろう。

勝手に癒されていますが……私も手伝った方がいいのでしょうか。

いやでも、農作業なんて生まれてから一度もしたことがないため、かえって迷惑になってしまう可能性の方が高い。

でも、楽しそうな佐藤さんを見ていると、不思議と私もやりたくなってきてしまう。

手伝うか、それとも見守るだけに留めるか、モヤモヤと悩んでいる間にどうやら作業は終わってしまったらしい。

これは今日の夜に、明日から手伝った方が聞くべきでしょう。

私はそう心に決め、引き続き護衛という名の“佐藤さん観察”を行った。