軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30.処罰と正体

ロザリモンド嬢が部屋を出て行く。

満足そうとは言わないけど、これが妥当だとでも言うように。

「よかったんですか?」

「何が?」

「ロザリモンド嬢の事ですよ。それにご実家も」

「私には彼らの領地に干渉する権利はない」

それはそうだけど、一応旦那様はご親戚だ。

「継承権の剥奪って簡単にできるんですか?」

旦那様がロザリモンド嬢に伝えたのはこれだった。

「もともと、私に子供ができずに直系の血筋が失われるようになった時、一番の継承権を持つのは皇族だ」

「……そうですっけ?」

確かにそっちとの関係もかなり深いけど、それでも公爵家の立ち位置はかなり特殊だ。皇族にさえも意見できる一族だけど、もし皇族出身の皇子が公爵家当主に就任したら、なんとなく今ある国民が持つ絶対的な信頼が失われそうだ。

それはおそらく、皇族に忖度するように追従するようになると思われるからだけど。そうなるかどうかは、公爵家を継ぐ人間の素質の問題だ。だけど、やはり血の繋がった家族から頼られたりすればそれが意に沿わないことでも、手を貸す可能性もある。

「下手な貴族がこの地位につけばどうなるかは明白だ。ロザリモンドの家のような権力欲の塊にこの地が治められるわけがない。だからと言って、皇族にできるのかといえばそれはまた違うが、他に任せるよりかは皇族に任せた方がましだろうな」

「なぜですか?」

「ここはある意味この国の盾となる場所だ。もし戦場になったら、皇族出身の皇子の方がまともに働くだろう? もし逃げたりでもしたら、世論が皇族批判に走るだろうし、自分たちの身を守るためにな。他の貴族だったらそうはいかない」

そう言われればそうだけど、それロザリモンド嬢の実家は知らないんだろうかと思う。

「知っているだろうが、私が死ななければ皇族は手出しができないのもまた事実。これはいわゆるお家騒動だからな。皇族が介入すれば問題が悪化する。それに、ロザリモンドも言ってただろう? 皇族は今私に思うところがあると」

あー。皇女殿下の件ですか。

「私がいなくなれば、もしかしたら皇女殿下を新しい当主に宛がうつもりだったかも知れないな」

考えそうな事だ。

まあ、旦那様に比べれば人として格下の相手でも一応公爵様になるのだから、結婚相手として考える可能性がある。

「国主といえど皇帝陛下も人の子だ。私には分からない思いがあるだろうな。ただし、もしそんな事になったら皇太子殿下がさっさと皇帝陛下から権力を奪い取るだろうが」

そういえばそんな事を聞いている。

皇女殿下に厳しい態度で接することができる相手だと。旦那様とは同世代の相手だったはず。

次期皇帝陛下である方は、旦那様と考えが似ているような気がした。

「継承権の剥奪は当主が行える制度だ。それこそ他領の親族にも効力があるが、手続きが面倒だし本当にいざというときに継承権を持つ者がいないと厄介な事にもなる。そういう事もあって使わずにいたが、今回の場合は仕方がないだろうな」

正当な理由が必要らしいけど、ロザリモンド嬢が色々告白してくれたので証言としては有効だと旦那様。

「その代わりにロザリモンド嬢を皇都邸で受け入れるというのは、それはそれで大変そうですけど」

「せっかく離れが空いているんだから別に構わん。それに目を離している方が怖い。ロザリモンドも言っていたが、あれは素の性格もあると」

旦那様はロザリモンド嬢に領地からの追放処分を言い渡した。その代わり、住まいを失うであろうロザリモンド嬢に皇都邸の離れを提供した。なんだかんだでたくましそうなロザリモンド嬢ならなんとかしそうな気はしたけど、そこは一応謝礼代わりのようだった。

ほかにも旦那様が言っていた通り、めちゃくちゃな性格は演技もあったけど、素の部分も大きいと知ったから。

さすがに放置するのはためらわれたようだ。

「まあ、悪い人ではないですよ。ちょっと、たまに話が合わない……と言いますか話を聞かないところはありますけど」

「仕事でも手伝ってもらえばいいんじゃないか? あれでも一応それなりに知識はあるんだ。話し相手でもいいが」

「……結局旦那様はわたしにロザリモンド嬢を押し付けたいだけなんじゃないですか?」

「女同士の方が話やすいだろう。公爵夫人としての仕事は多岐に渡るが、親戚のロザリモンドは公爵家や公爵領に関しては詳しいし、相談相手としては一番良い相手だと思う」

なんかもっともな事をいってるけど、騙されちゃいけない。

面倒事をわたしに押し付ける事をお得意としている旦那様の言葉を鵜呑みにするほど、わたしは旦那様を信用していませんからね!

でもロザリモンド嬢の性格はともかくとして、旦那様の言う事も確かなのも事実。

最近わたしに振り分けられる仕事が増えてるし、誰か仕事を手伝ってくれる人がいるといいなぁとは思ってた。

色々考慮したとしてもロザリモンド嬢はうってつけではある。公爵夫人になるために知識を蓄えてきたと言うのは嘘じゃないと思うし。わたしも勉強しているけど、さすがにロザリモンド嬢には敵わない。

「分かりました。もし働いてもらうのならお給金が発生しますけど、契約はどうするんですか?」

「その辺はロザリモンドとの話し合いになるな。やる気があるかないかという話にもなる」

ロザリモンド嬢ならなんとなく頷いてくれそうな気がする。

まあ、どうなるのかはこれからだろうけど。しばらくは旦那様も忙しいだろうし。

「ロザリモンドの件はこれでいいだろう。それからリーシャ」

唐突に旦那様が話を変えてきた。

「なんですか?」

「一つ聞きたいんだが、君は何か動物を呼び寄せる特殊能力があったりするのか?」

「はぁ?」

思いっきり疑問符を張り付けて、旦那様に返した。

「外、見ろ」

旦那様が示すのは背後の窓。

何だろうと、窓の外を見下ろし、そして――。

「……白い動物がいっぱいですねーー……」

遠い目になった。

「現実逃避するな、リーシャ。どう考えても、誰のせいかは分かるだろう」

いえ、全く分かりません。

いやぁなんかレーツェルそっくりの動物が十匹以上いて? たむろってのんびり毛づくろいとかして? うん、わたしのせいじゃありません。

「おそらく、これが村で言っていた大型獣の正体だろう。向こうとの約束もあるから、飼い主に一言言っておく」

飼い主って誰でしょうね……?

「とりあえずしばらく放し飼いはやめておけ。さすがに出会い頭に遭遇すれば誰もが驚く」

「わたしからもいいですか、旦那様」

「なんだ?」

「わたし、この子たちの飼い主になった記憶はありませんけど?」

ええ、全くもって。何言ってるんでしょうかねぇ?