軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8.夜明けの提案

う……おも……。

朝、何やら重い気配に目が覚めた。

背後には温かい何かがあって、上には重い何か。

なんだとモゾりと動くと、上にのってる何かがずるりと落ちて、再び乗ってきた。

その重い何かを見ると、楽しそうな――。

「リヒト、重いんだけど……」

「わふわふ!」

わふわふ言ってる場合じゃないんだよ!

最近身体が大きくなってきたせいで、持ち上げるのも重くなってきているのに、思い切りわたしをふとんにされると、さすがにきついんだよ。

分かってる?

君、最近大きくなって重くなっているのか、単純に太ってきてるか分からない状況だって。

皇都邸で思い切り遊んでいるけど、いたずらが過ぎて怒られているの覚えてる?

レーツェル見習ってくれないかなぁ?

向こうは大人しく優しい子なのに、どうして君は……子供だから? 子供だからなの?

ふーと息を吐き、身体を持ち上げる。

するとリヒトはすぐに横に下りたけど、次の瞬間はっとした。

隣の存在に。

忘れてた……!

リヒト以上に大きな塊。

一瞬レーツェルかと思ったけど、現在レーツェルは外で大人しくしている。

「……ん」

わたしが起きたことで起こしてしまったのか、隣の熱の塊が目をゆっくり開く。

「……起きたのか?」

寝起きのかすれた声に、なんとなくどきりとする。

いや、いつも旦那様美声だと思っていましたけど、寝起きのかすれ声ってなんでこんな色気を感じるんでしょうね!?

直視するのが難しく、視線を逸らせながらわたしは頷く。

「早いな……」

わたしが身体を起こしているので旦那様も身体を起こす。

カーテンの隙間からまだ太陽がしっかり入って来ていないので、夜が明けてすぐ位だと思う。

寝る時間が遅かったのに、早寝早起きのリヒト君のせいで目が覚めましたよ。

いつもはわたしが起きるまで大人しくしているのに、今日はどうして――と思ったけどいつもはレーツェルも部屋に一緒にいたわ。

今知ったけど、レーツェルが抑止力になっていたのね。

「まだ寝ますか?」

「いや……目が覚めてしまったな」

起こして済みません。

怒るなら、ぜひリヒトを怒って下さい。

「外に、行きたそうだな」

「え?」

「元気なのはいい事だが、実は運動不足なんじゃないのか?」

どうやらリヒトの事らしい。

「野生の動物は基本的に野外で常に行動してる。つまりそれだけ動いているだろう。少なくとも、家の中でごろごろしてるこいつよりはな。つまり、運動不足で力が有り余ってるから早起きなんじゃないのか?」

あー、なるほど。

詳しいですね。動物飼った事ないから知りませんけど……。

でも野生動物に比べたらリヒトが動いていないのは確かだ。

レーツェルもそう。

ストレス、抱えてそうだね、たしかに。

「馬場にでも行ってみるか? どうせ目が覚めたのなら散歩に行っても良いだろう」

「そんなものがあるんですか?」

「ここはこの国で最も広い領地の本拠地だぞ。敷地内で馬育てる位の事はしてる。戦争で必要にもなるし」

あ、軍馬って事ですね。

その育成のための広場は確かにありますよね。

「かなり広いから、走り回っても問題ないだろう。今ならまだ使っていないだろうし、そのために来たんだろう?」

その通り。

二匹の運動目的でした。

「リヒトはともかく、レーツェルはちょっと大きいですからねぇ」

「大きいどころの話じゃないがな」

旦那様がベッドから立ち上がると、側に置いてある鐘を鳴らす。

しばらくすると人が扉をノックする音。

旦那様が自ら扉を開けて、開いた隙間で何やら話している。

すぐに扉は閉められた。

「何を?」

「馬には乗れるか?」

「馬……ですか? まあ、一応ですけど」

ベルディゴ伯爵家の領地はだいぶ田舎ですからねぇ。

馬車より馬の方が動きやすい。

「馬場まではかなり離れている。歩いて行けない程ではないが、馬の方が早いだろう」

「……乗馬服、持ってきていませんけど?」

「こっちに準備しているはずだ。向こうから持ってこなくても一通りは揃っている。準備が整ったら、正面玄関で」

旦那様はさくっと色々決定し、寝室を出て行く。

なんというか普通だ。

すごく普通だ……。

昨日、なんか重要な話をしていたのに、それを微塵も感じさせない。

こちらに気を使っているのか、それとも、昨日の事は幻……。

じゃないんだろうなぁ。

とりあえず、わたしも準備しないと。

この部屋には二つ人を呼ぶ鐘がある。

一つは旦那様が使った当主用の鐘で、もう一つが公爵夫人用――というか侍女を呼ぶ用の鐘だ。

当主用の鐘とは言うが、来るのは執事か従僕なので、そちらを呼ぶ場合は当主用の鐘を使い、侍女を呼ぶ場合は公爵夫人用の鐘を使う。

しかし、わたしが鐘を使う前に扉がノックされた。

「どうぞ」

「失礼いたします」

おそらくこの城の侍女だ。

ちなみに、今回の帰郷で連れてきたのはリルだけだ。というのも、ライラとリーナはまだ侍女としての経験は浅いため、長くこの城で勤めてきた人たちに軽くみられる可能性があるからだ。

まあ、そんな使用人イジメみたいなこと起こってほしくはないけど、公爵夫人に仕える侍女としては経験不足なのもまた確か。

侍女の練度というのは公爵夫人としての威厳にもつながるので、今回は様子見でお留守番。

逆にリルは、実はこの領地の出身で城にも研修で何度も来ているとのことだ。

なるほど。

だから長い間侍女とは違う業務押し付けられても辞めなかったわけね。と聞いたときには納得した。

いくら給金そのままでも、やはり矜持はあるだろうと思っていたのだけど、謎が解けた。

「旦那様よりのご命令で乗馬服をお持ちしました。お支度にとりかかってもよろしいでしょうか?」

「お願い」

きびきびと動き出す侍女。

彼女たちに促されて、わたしはベッドから降りて夜着を脱いだ。