軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11.癒しのためがんばります!

さてこの一件、一体どういうことなのか。

とりあえず、先んじてミシェルが情報収集してくれていた。

それを、旦那様の執務室に集まって、主要メンバーで聞くことに。

もちろん側には二匹待機しております。

そのうち一匹は、明らかに遊んでおりますけどね。

「はじめは、下女が発見してね、すごい悲鳴だったよ」

なんでも、その悲鳴をミシェルも聞いたらしい。

邸宅中に響き渡るのではないかという音量だったようだけど、わたしの部屋や旦那様の執務室および寝室は防音性に優れているので、まったく聞こえなかったようだ。

旦那様も、ラグナートが知らせに来るまで騒動を全く把握していなかったとか。

「そりゃあ驚くよね。突然目の前に大型の野生獣が現れれば、死を覚悟するし。こんな大都会のど真ん中で普通そんな目に遭う事ないでしょ?」

「私も聞きましたね、その悲鳴は。正直何事かと思いました」

昼を少し過ぎた時間で、まだまだ明るい 最中(さなか) にまるで化け物を見た時の様な甲高い悲鳴。

即座に調査し、旦那様に報告したと。

でも、ちょっと気になるのは、なんで旦那様がわたしを起こしにきたのかって事ですけど?

リル達でも良かったじゃない!

起きたてでその美形顔を拝むと、ちょっと心臓に悪いんですよ。

「緊急事態だったからな。直接私が行った方が、さっさと起きるだろう?」

それは、まあ……。

リルだったらなかなか起きなかったかも知れない。

だって今日はちょっと疲れていましたので。

外にいる大型獣は、わたしの部屋にいる筈のもふもふ子供を取り返しに来たのだと思ったらしい。

まあ、それにしてはのんびりと敵対心もなく寝そべっているので変だとは思ったらしいが。

とりあえず、この事態の責任者? となるわたしを起こして状況を見せたかったようだ。

「危険だとは思わなかったんですか?」

放置してわたしを起こすまで何もしていなかったようですけど?

「危険だったら、もうこの世にはいない。ここはリンドベルド公爵家の敷地内だぞ。常に領軍の騎士が滞在していて、危険な獣だったら、即座に処分されている」

敵意がなく、大人しいから手を出さずにとりあえず旦那様に知らせたという事らしい。

「そもそも、その優秀だと思われる領軍の騎士に見つからず、どうやってここまで来たんですか? それに、皇都の中だって通らないとこの敷地には入れませんよ?」

「あ、調べてみたけどどうも目撃情報がないんだよね……なので、一つ考えられるのは、皇宮から来たってことなんだよねぇ」

「街中歩くよりは可能性があるって事だな」

我が国の皇都の最も有名な建物は、当然皇宮だ。

この宮は、標高が少し高いところに建っていて、後ろ手には険しい山脈が控えている。

背後は気にすることなく、皇都が戦場の場になっても、前だけ見ていればいいということだ。

わたしは詳しくは知らないけど、なんでもその山脈の地下部分には、山脈を越えられる地下通路があるらしい。

皇族を逃がしたり、皇都の民を逃がすために使うためにこの都が作られたときに同時に作られたのだけど、今まで一度も使われたことがない。

そして、このリンドベルド公爵家の皇都邸の敷地は当然の様に皇宮に一番近い場所。

つまり、ですよ?

この子たちがヴァンクーリだと仮定して、標高の高い山々で暮らしているのなら、それくらいの山脈は楽々と越えてくるのではないか、という事で。

とはいっても、背後にそびえる山は断崖絶壁。

人どころか獣でさえも困難なのは間違いない。

不法侵入さんですねぇ。

人ではないけど。

でも、そんな獣が現れたら、脅威でしかないよね……。

旦那様も頭を抱えそうだ。

仕事増えそうだもんね?

仕事人間だって言われているけど、旦那様は特別仕事が超大好き! というわけでもない。

嫌いではないけど、過度の仕事はご遠慮したいという気持ちもある。あるから、わたしが巻き込まれているのだけど。

「では今後の事を話し合おうか、リーシャ?」

旦那様がにこやかに話し出す。

その顔に一体どれだけ騙されてきた!

うんうん、分かっていますよ。とりあえず、この件はわたしに押し付けたいんでしょ?

分かっていますとも。

面倒事が増えるけど、わたしの答えは一つだ。

「帰らなかったら飼いましょう!」

それしかない。

というか、帰らないといいなぁって思っていたり。

だって、あの毛に包まれて寝たら、最高だと思いませんか?

もう、手放したくないくらいには最高ですよ、きっと!

「……考えが見え透いてるな。欲望のまま欲するのは危険だと思うが? そんなに毛が気に入ったのなら、買ってやってもいい」

いやぁ、それはちょっと……だって、金貨五百枚。

それを身体の下に下敷きにするのは、気が引けますし……。

「ちなみに、一応聞いておきますけど、ヴァンクーリと断定してもいいんですよね? 僕、初めて見るから分かりませんけど」

「否定する材料もないしな。過去に見たヴァンクーリと姿形全く一緒だ。こんなのが数種類いるとは考えたくないな」

それはそうでしょうね。

こんな大きな肉食獣のような獣が何種類もうろうろしていたら怖い。

「……飼うにしても、どこで飼うんだ? そして申請はどうする?」

「ここで飼ってはダメですか?」

敷地広いし。

「駄目ではないが、彼らは満足するか? ヴァンクーリは高地で生きている獣だ。運動量も相当なものだと思うが……。」

「でも、領地は……」

「周知させるまでは、野放しできないな」

そもそも、わたしは結婚以来領地に行ったことがない。

公爵夫人として行かなくちゃなぁとは思っているけど、絶対リンドベルド公爵家の家臣連中がいちゃもん付けてくるの分かってるから、正直面倒。

今のところ、旦那様のところで話が止まっているらしいけど、直接対決は避けられないだろうなぁ。

「行くか? 領地に」

面白がっている旦那様に、わたしはため息と共に頷いた。

「仕方ないです……この子たちのために、多少の苦労は背負いましょう。それから隣国にも行きます。折角なので、色々聞いておきたいこともありますし」

「怠惰な奥様にしてはやる気だな?」

ふっ、当然です。

健やかな心を保つためには、癒しは重要ですからね!

この子たちがいれば、嫌な事でも頑張れそうです!

あ、だからと言ってお仕事は増やさなくていいですからね、旦那様!

何を考えているのか分からない旦那様は、どこか楽し気にわたしを見ながら言った。

「一つ言っておくが、領地でも隣国でも部屋は一緒だぞ?」

そういうことは言わなくていいです!