軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8.ローデシー侯爵の正体

翌日、ローデシー侯爵と共に、全員で首都に向かう。

ローデシー侯爵は、当然アンドレ様と馬車は同乗で、わたしは昨日と同じでミシェルとロザリモンド嬢と同じ馬車だ。

ミシェルの女装は、昨夜だけだったようで、今日の朝に会ったら普通に戻っていた。

「さすがに、女装で戦うのは骨が折れますので」

とは言っていたが、初めて会った時の強烈な印象が頭に張り付いているので、女装姿でも戦えるでしょうと言いかけて、やめた。

むしろ、問題視するところが違う。

「ところで、リーシャ様。できる限りあのローデシー侯爵には近寄らないようにお願いしますね」

「わたしも近寄りたくはないんだけど、アンドレ様と親しいみたいだから、そうは言っていられないんだけど……」

そういえば、ローデシー侯爵とは一体何者なのか結局分からない。

ロザリモンド嬢に視線を向けると、彼女はじっとこちらを見ていた。

「あの、ローデシー侯爵という方、この国では聞いたことないんです。もちろん、わたくしはすべての貴族を知っているわけではありませんが、侯爵くらいになれば、少しは耳にしそうなものですが。それなのに、顔を知っているような気がして……」

「正体不明って、そうとう怪しそうですね。なんだか、あの人妻を狙っているって話――、僕は一瞬リーシャ様の事かと疑いましたよ」

ミシェルとロザリモンド嬢、二人の追及にわたしは両手を振って否定した。

「ないから。そもそも、わたしは国を出たのも初めてだし、それ以前は社交は最低限。とても知り合いになれるとは思えないわよ。それに、わたしと結婚してどんな利益があると思う? わたしの財産なんて北に位置する鄙びた領地だけだし」

結婚による最大の利益。

そんなもの、わたしにはない。

旦那様にとって見たら、わたしの中に流れる血が魅力的だったらしいけど、それだけだ。

「リーシャ様って、かなり古い家系ですけど、それ関係で何かあったりするんですか? 例えば、リーシャ様が知らないだけで、どこかの家系の継承権があったりとか?」

それこそありえない気がする。

ラグナートだって何も言っていないし、もし何かあったら先に言ってくれていると思う。

「ないと思うけど」

「そうですか」

残念そうにミシェルが肩を落とす。

どちらにしても、わたしはあの国を出る気はないので、彼と結婚する気は一切ない。

そもそも、離婚も今のところ考えていないので。

「とりあえず、アンドレ様の目的は一つはっきりしましたね」

「ローデシー侯爵に会わせるって事ね」

友人に、自分の息子の嫁を自慢することは少なからずあるだろうけど、わたしだってアンドレ様に会うのは初めてだ。

自慢するために連れてきたとは思えない。

本当に、ローデシー侯爵がわたしに会いたいと言ったから連れてきた、と言った感じだ。

「首都についたら、どこに連れていかれるのか、非常に気になる」

ただお祭りを見るだけに終わりそうがなかったので、わたしは憂鬱になってため息をついた。

そして、いやな予感は当たるというわけで……。

「ここ、隣国の王宮よね?」

「王宮ですね……」

「王宮だよ。王族が招待してくれたからね」

とんでもないことを言い出す義父は、使用人の後について堂々と中に入ってく。

ローデシー侯爵はわたしの隣で、この王城について説明していく。

「リーシャは初めてだろう? ここは初代が建てた時からずっとこの場にあるんだよ。もちろん、何度か補修はされているけどね。そろそろ、本格的にやばいんじゃないの? って思う時がたまにあるよ」

「遷都されたことがないというのは存知ております」

普通は、時代背景と共に遷都することが多い。

ただ、絶対ではないので、不思議だくらいで、おかしいと思ったことはなかった。

しかし、ローデシー侯爵が言ったように、建物もずっと同じと言うのは、さらに珍しい。

古くなった建物を新しくするには、一度壊す必要があるが、広い王城ならば、一部壊して新たに建物を建て変える事もできる。

「古臭いだけの建物だけど、慣れると意外といい味があるんだよ。それに、面白い怪談なんかもたくさんあってね――」

「聞きたくないんでやめてもらっていいですか?」

怖いのは好きじゃない。

というか、好きな女子の方が少ないんじゃなかろうか。

わたしが睨むと、ローデシー侯爵が肩をすくめて笑った。

「この城に務めている人は、始めはみんなリーシャみたいにかわいい反応するんだけど、慣れると、それで? みたいな反応になるんだよね。リーシャも長くいれば、きっとどうでもよくなるよ」

「……長くいる予定はありませんよ。クロード様がやってきたら一緒に帰ります」

なんだかんだで、皇都の邸宅は居心地がいい。

結婚直後とは比べ物にならないほどに。

あー、わたしの家だって言えるくらいにはなじんでいると思う。

「残念。クロードに負けちゃったよ」

ローデシー侯爵が全く残念そうには思えない声音で、言った。

勝ち負けの問題ではなく、それが普通だ。

夫が迎えに来て、一人で帰宅するとか、外でなんと言われるか。

ただ、迎えに来るというよりは、公務でやってくると言った方が正しいけど。

そういえば、旦那様は大丈夫なのかな……、急な呼び出しだったけど、結局なんだったのか気になる。

旦那様が言うには、皇太子殿下はそうとうやり手っぽいけど。

旦那様とは年が近いけど、その分わたしは離れているため、そこまで詳しく相手を知らない。

おそらく、よく知られているような情報ばかりだ。

遊学を無理矢理終わらせて帰ってきたのなら、この先ずっと国にいると思うので、ぜひ皇族たちを叱り飛ばしていただきい。

そんな事をつらつら考えていると、隣を歩くローデシー侯爵が話しかけてきた。

「リーシャが公務としてやってくるのは、本来なら十日後だったっけ?」

「一応、そのような事は言われていますが」

「じゃあ、クロードが来るまでこの城に滞在するといい。それくらいの権限はあるからね」

「え? 権限」

権限? 城に滞在することを許可する権限――……。

権限って、あの権限だよね? 何かを正当に行うことができるって、そういう事。

そういえば、アンドレ様が、王族に招待されているって……。

唖然として相手の顔を見上げれば、ローデシー侯爵がにやりと笑っていた。

「あ、ようやく気付いた? 私は王族の血を持つ、庶子だよ。侯爵位はつい先日もらったばかり。母が国王陛下の愛人でね、王妃が亡くなってから母が社交界を牛耳ってるんだ。その関係で、爵位がもらえた」

さらりと告白するローデシー侯爵に、わたしは何も言えなかった。

「そちらのお嬢さんは、私の顔を見てどこかで見たことあるって顔してたけど、それはおそらく母の顔だろうね、私は母親似だから」

ローデシー侯爵がロザリモンド嬢に言った。