軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

78.輝くラズ

ラズヴェリー侯爵の相手をして、あれからセシリアの妹であるユフィは、カジュイの郷土料理であるグラタンを振舞ってくれた。

ユフィは本当に料理が上手で美味しかった。それにウルクもグラタンを初めて食べたようで驚いていた。

特にチーズが良く、牛小屋で管理している牛乳から作っているらしい。貴族の食事でも使われていそうだ。

俺も料理の詳細を聞きながら、今度イスフィール家のみんなに食べさせたいなと思う。

それからはセシリアが用意してくれた客室を借りて、一夜が過ぎた。

朝になり、俺はベッドからムクッと起き上がる。

背筋を伸ばし、客室に置いてある鏡の前に立った。

寝癖もあるだろうが、ウルクが言っていた自分のアホ毛を確認する。

「本当にアホ毛がある……」

サッサッと手で直そうとするも、すぐに元に戻る。

まだちょっと眠いかも……ボーッとするし。

俺の隣にあるベッドを見る。

「ラズヴェリー侯爵……まだ寝てる」

実は、客室は二つベッドで男女で別れていた。

ラズヴェリー侯爵も昨日泊まったようで、満足げに眠っていた。

俺は昨夜に言われたことを思い出す。

ラズヴェリー侯爵に守りたいものは、ウルクかと問われた。

もちろんウルクも守りたい人の一人だ。だけど、ラズヴェリー侯爵が聞いて来たのは、そういうことだったのだろうか。

「ラズヴェリー侯爵、ラズヴェリー侯爵……起きてください」

「むにゃ……もう少しだけ……ママ」

……ママ。

いや、聞いてない。俺は聞いてないよ。人の家庭内事情はそれぞれだ。

さらに体を揺さぶって、起こそうとする。

なぜ俺が起こしているか、それは昨夜にラズヴェリー侯爵に頼まれたからだ。

朝から王都で仕事があるらしいのだが、ユフィと少しでも一緒にいたいと泊まっていたのだ。

そうして、一緒の部屋に寝ることになった俺は起こすことを約束した。

「仕事に遅れちゃいますよ〜、ラズヴェリー侯爵」

俺も少し前までは、朝に起きるのが苦手だった。というかトラウマだった。

イスフィール家に拾われてからも、数週間は悪夢を見て起きていたからだ。

怒られて、寝坊して、理由はそれぞれだが、そういう類の夢だ。

今でこそ、のんびりと朝を迎えることができている。

「仕事……っ!」

その単語にラズヴェリー侯爵が起き上がる。

うん、分かる。起きあがっちゃうよね。

ラズヴェリー侯爵は寝癖でボサボサだらけだ。俺に顔を向けて、ため息を漏らした。

「朝か……ユフィに起こしてもらえる夢を見たのだが、アルトだったとはな」

「す、すみません……」

「いや、良い。起こしてくれてありがとう」

ラズヴェリー侯爵は起き上がり、そばに置いてあった上着に袖を通す。

髪や香水を自分に付けて、身支度を始める。

俺はそれを見て驚いていた。

「ご自分で身支度をするんですね」

「ユフィに言われてな。これまでは全て使用人にやらせていた。だが、『男なら自分の身なりくらい自分で整えろ』と怒られたんだ」

「……偉いですね」

思わず、そう呟いた。

すると、ラズヴェリー侯爵が頬を赤くした。

「なっ……! え、偉くなどない! 人として当然のことだ」

俺は微笑みながら、近寄る。

「ふふっ、襟が曲がってますよ。ほら」

かなり上質な上着だ。

流石は侯爵家の名を持つだけのことはある。

それに、俺はラズヴェリー侯爵のことをすっかり気に入っていた。

最初に出会った時から、悪い人ではないと思っていたからだ。

「俺も、よく貴族の身支度をやっていたので心得があるんです。一人でやるのは大変ですから、偉いですよ」

「そ、そうか……そういえば、お前は執事上がりだったな」

「えぇ、寝癖直しも俺が手伝いますから、そこに座ってください」

「た、助かる……お前、本当になんでも出来るのだな」

軽く笑って返す。

ラズヴェリー侯爵の外見を俺の持つ技術で完璧に整える。

よく、こうしてウェンティの髪を仕立ててあげたっけ。

今のウェンティは髪を伸ばしているみたいだ。そういえば、ウルクも髪が長いな。

少ししてから、部屋にノックが聞こえる。

「あの、朝食の用意が────」

「あっセシリアさん、おはようございます」

俺がラズヴェリー侯爵の髪を編んでいる所を発見する。

なぜか呆然としていて、セシリアが「失礼しました……」と言って静かにドアを閉める。

「……どうしたんだろ?」

不思議がっていると、ラズヴェリー侯爵が呟いた。

「そういえば、どこかで聞いた話だが、とある地方だと男同士が髪を編むのは愛情の証だとか……」

「アハハ……流石にそんな勘違いはしませんよ。セシリアさんって、純愛好きっておっしゃってましたし」

「そ、そうだな。うん、将来の姉である彼女がそんな勘違いをするはずがない」

アルトとラズヴェリーはそう考えた。

一方その頃、朝食ができたと知らせに来たセシリアは喜んでいた。

(イケメン同士の髪結び……素敵すぎる! これを作品で活かさない手はない……! 愛情の証を朝から見れるなんて!)

と、内心でガッツポーズをとっていた。

居間へ戻ると、料理を出しているユフィと出会う。

「お姉ちゃん、なんか機嫌良いね」

「ふふんっ、分かっちゃった? 後でユフィにも教えてあげる」

ユフィが首を傾げる。

そこへ、身支度ができないウルクがやってくる。

セシリアが言う。

「ウルクさん、髪ボサボサだけど良いんですか?」

「あぁ……私の髪は長いから、一人じゃ無理なんだ」

「元が良いから、多少は寝癖があっても違和感ないの凄いですね……」

「そうか?」

外見にあまり気を使わないウルクに、ユフィが「勿体無いなぁ……」と声を漏らした。

「そういえばお姉ちゃん。ラズとアルトさんは?」

「もうちょっとで来ると思うけど」

すると、ようやく準備を終えたアルトたちが、居間に姿を現した。

ユフィが驚く。

「ラ、ラズがいつも以上に輝いてる……!」