軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4-6

「断固として拒否する」

話を聞き流したのは流石にまずかった。

危うくデペス誘引の再現という名目でフィオラと一戦やる羽目になりかけており、途中でそれに気づいた俺が研究員に待ったをかける。

「ケチケチするな、減るものでもなし」

「弾薬が物理的に減っているだろうが」

理屈はわからないが無尽蔵に出てくる弾薬を減っていると主張するのはおかしいかもしれないが、一部は回復に時間がかかるので間違ってはいないと強弁する。

エデン側としてもデペス誘引は可能となればそのリターンは計り知れない。

フィオラとの利害は一致しており、この件は回避が難しいと思われたが、そもそもの話が大規模な作戦の前段階なのである。

本命に支障を来すような実験をホイホイと行うことなどできるはずもなく、俺がそこを突くと研究員は何も言い返せず、黙ってフィオラへと目線を向ける。

選手交代となったわけだが、当然我を通すことにかけては他の追随を許さぬ戦争狂。

しばしフィオラとの押し問答が続いたが、思いがけない方向から救いの手がやってきた。

「ならば、私がその役割を担うとしよう」

出てきた相手はまさかのリオレス。

どうやら異界渡りの一件から研究所に出入りしているらしく、騒がしいので様子を見に来たのとのことである。

それならばと俺もエデンの外に出ることを承諾するが、フィオラがそれに物申す。

しかし検証だけならそもそも戦う必要がなく、一人一人が該当しそうな行動を取れば良いだけのはずである。

「戦闘を行う必要はなく、ダメだった場合にやってみればよいだろう」というのがリオレスの意見。

この主張には俺も頷いて援護射撃。

研究員の方も「まずは試してみよう」という意見が多数を占めている。

検証するにしてもこちらの方が都合が良いのは間違いないので、これは当然の結果だろう。

加えてデペスに反応がなければ軽く戦って様子見をする。

ここまで押せばもうフィオラの逆転はない。

悔しそうにしているが、人前なので以前のように駄々をこねるような真似はしないようだ。

なので俺は研究員と話を詰める。

「釣れた場合は?」

「すぐに戻ってください。敵の規模と位置を把握し、迎撃してもらいます」

バイクという移動手段を持つからこそ、俺がやる必要があるのだろう。

瞬間的な速度で匹敵する、或いは時間当たりの移動距離を上回る手段を持つ者はいるだろうが、俺以上にお手軽な移動手段はないはずだ。

(ヘリとか出すことができていたら色んなことに使われそうだな)

一応バイク以外もあるのだが……緊急修復車両というカテゴリのビークルとなっており、APを回復させる効果を持つ。

しかしながら「車両に乗るだけでアーマーを回復させる」というどう考えても説明のしようがない効果を持つ車両なので出す気が起きない。

おまけに自分以外にはどんな効果を発揮するのか予想ができないのも理由となり、完全にお蔵入りとなっている。

それはさておき、話がまとまったので研究所を出る。

若干一名最後まで食い下がっていたが、これを無視してリオレスとともにゲートを出る。

バイクの後ろにはリオレスが立っており、座るという選択肢がないことを疑問に思いながら荒野を走る。

(いや、まあでかいバイクだからいいんだけどさ)

ヘルメットのバイザーに表示されているデータで距離を把握できるので、割と正確に目的地へと辿り着けるだろう。

そうやって目的地へとバイクを走らせているとあることを思い出した。

(そう言えば、フィオラを後ろに乗せた時は……他者に聞かれたくない話があると思われていたな)

念のために聞いておくか?

会話もない、ただただバイクを走らせることに飽きた俺は何気なく聞いてみる。

「何か話すことがあるのか?」

俺の問いかけにリオレスは何も答えない。

「うん、まあそうだろうね」と少し恥ずかしくなったが、時間を置いてリオレスは口を開いた。

「ここまで離れれば大丈夫、ということか?」

まさか正解だったとは思わず、俺は反射的に「ああ」とだけ返す。

指定された座標へと到着し、バイクを停止させるとリオレスは飛び降りる。

俺もビークルを解除して検証に備えつつ、リオレスの話を聞く。

「スコール1、お前は一体何者だ?」

その質問に思わず「またか」と口に出してしまったのは仕方のないことだ。

前回はローガンに問われた。

そこにリオレスはいたはずなのだが……何故再びその問いを俺にするのか?

それがわからず俺はただ黙って首を傾げて見せる。

「何が言いたい?」という俺の疑問は言葉にせずとも伝わったのだろう。

リオレスは腰の剣に手をかけ、そこに至る理由を話す。

「剣以外に取柄はない、と言ったが……他に何もできないわけではない」

あれからリオレスは自分が何をしていたかを軽く説明する。

ジャミトス遺品は綺麗さっぱり消失していた。

残されたデータをエデンは調べると言っていたが、彼はそれだけでは足りなかった。

だから独自に調べたのだと言う。

「ジャミトスの残留思念を調べた」

その言葉に「サイコメトラーかよ」と声が出そうになるがギリギリ堪えたが、次のセリフで俺はポーカーフェイスを僅かに崩してしまう。

「ジャミトスは、お前のことを『異物』と呼んでいた」

心当たりはあるか、というリオレスの問いに俺はどうしたものかと考える。

(ありすぎて答え辛い。というかあの爺さんそこまで解析してたのかよ)

どう答えたものかと思案し、視線を一度空へと向ける。

その瞬間、リオレスの剣が俺の喉元へと突き立てられた。

内心冷や汗が流れたが、呼吸を一つ挟みポーカーフェイスで取り繕う。

「……俺自身、自分がどういう状況なのか把握できていない。正直に言えば、何もわかっていない。憶測ですら根拠のなさに妄想と言える有様だ」

むしろ俺が聞きたいくらいだ、と己の状況の不明瞭さを不気味に思っているとさえ言ってやった。

突き付けられた剣は微動だにしない。

だから俺は続ける。

「俺は怪しいか?」

真っすぐにリオレスを見つめ問う。

彼の目的は復讐である。

それ故に手段は問わない可能性が高い。

これまで俺はスコール1として信用を積み重ねてきたつもりだ。

その結果は、リオレスが剣を下ろすという形で証明された。

「お前を相手に確実に勝てる保証はない」

そっちかよ、と言いたくなったが「できれば戦いたくはないな」と苦笑するリオレスを見て安堵する。

俺の信用はちゃんと仕事をしてくれていた。

ともあれ、俺は折角の機会なので情報の共有をしておく。

「ああ、そうだ。ジャミトスは死ぬ前にこう言っていた。『エデンをあまり信用するな』と、な」

そこに二度目となるが、エデンが重要な情報を喪失、或いは忘却していることを付け加える。

こうして改めて考えるとジャミトスは何かに気づいたから殺された、という説が事実な気がしてくる。

しかしここに異界渡りという別世界でも確認される存在がかかわることで、この推測が間違ったものだと思ってしまう。

(そもそも世界を渡るなんてそんな……)

そこまで考えて俺はあることに気づいた。

あるのだ――世界を結びつけるものが、確かにこのエデンには存在している。

「……世界を渡る。英霊召喚は別世界から……?」

思いついてしまった考えをまとめるように小さく口に出す俺。

「世界を渡る手段がエデンにはあるが、物質は未だ不可能とされている。異界渡りを怪異や現象とするならば、エデンは何かしらのかかわりがあってもおかしくはない」

リオレスは既に俺が出した結論に到達しているらしく、まとめようと思った内容を先に口に出す。

「時系列に関しても、英霊召喚は過去に遡ることができる以上、どちらが先かの議論は不毛だ」

追加された俺が達していない結論に「そうだな」と頷く。

(脳みそのスペックが違うのか? いや、そもそも思案している時間が違うんだから仕方ない)

わかっている振りをするのがそろそろ辛くなってきた。

でも頑張る、僕スコール1だもん。