軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-21

地下闘技場に到着して最初に感じたのはその広さ。

地上にあったものの倍以上の広さがあり、地下に作るには些か怖いくらいである。

一体どんな理由でこんなものを地下に作らせたのかと疑問に思う。

観客席は少ないが、ちらほら見える人影はその衣装からエデンの住人ではないことがわかる。

彼らにとってもこの通過儀礼は娯楽なのだろう。

俺の手札はほとんどスコール1が晒しているので、観客の前で戦うデメリットは薄い。

戦わないに越したことはないが、流れ的に回避は不可能。

この地下闘技場では「英霊ならば仮にバラバラに吹き飛んでも復活できる」と豪語するほどのシステムが存在しており、状況さえ整えることができれば、あの最高戦力が本気を出して戦うこともできるという。

なので今回は俺も遠慮なく戦えるらしい。

武器が解放されてからの対人戦闘はまだないため、今回は経験と思って諦める。

大人しく流れに身を任せるのも処世術である。

そんなわけで闘技場内へと入ったが、ここで先を歩く第七期が立ち止まった。

「試合形式は五対五。先に三勝した方が勝ちだ。団体戦もやりたいが、これがお約束らしくてね」

そう言ったイザリアが戦闘メンバーである残りの四人を呼ぶ。

それに応じるデイデアラがメンバーを決めるため、一度離れて八期を集合させる。

いつの間にか仕切っているが、うちは俺を含めてこういうことをやりたがらないのか誰も率先してやろうとしない。

ということで第八期からは、デイデアラを始めとして、俺とリオレスにマリケス、最後にエルメシアが選出された。

「嫌よ」

デイデアラに指名されると同時に拒否するエルメシア。

「まあ、そうだろうな」としか言えない。

代わりを探すデイデアラが最初に目を付けたのはジャミトスだったが、こちらも「断る」ときっぱりと拒否。

手札を晒すとか有り得ん、というのが彼の言い分であり、それを言われると強く出られないのか歯噛みするデイデアラ。

だったらと同期を見渡すデイデアラだが、誰にするべきか決めかねているのか指名する手が動かない。

そこに挙がる一つの手。

意外過ぎる人物――お散歩要塞ことケイが立候補していた。

何故防御特化型が?

そのような疑問を誰もが持っただろうが、ケイはこちらを見て頷く。

「え、それアリなの?」という疑問が口から出かけたが、これだけ自信満々なら大丈夫だろう。

そう思って俺も頷く。

デイデアラも「よっしゃ、これで揃った」とケイの参戦をよしとしている。

「作戦は簡単だ。スコール1とリオレスで二勝は確実。あとは俺が勝って三勝だ」

自信満々に言っているが、それの何処が作戦なのだろうか?

全員が呆れたような目でデイデアラを見ているが、それを鼻で笑って「まだ続きがある」とばかりに両手で俺たちを抑えるような仕草をする。

「あいつらの中に俺の配下がいる」

初手八百長、これがデイデアラの必勝の策。

あとはリオレスと俺が勝てば勝ちとなるので、メンバーはぶっちゃ誰でもよかったとデイデアラは笑う。

しかしそう上手くいくだろうか?

そもそもその配下と戦う組み合わせにどうやってするというのか?

「そこは俺様の腕の見せ所ってやつだな」

そんな疑問に自信満々に答えるデイデアラ。

「つーかよ、俺が勝てない前提で話すんなよ」

不機嫌なのか地の喋りが出るマリケス。

「そうだそうだ」とケイも同意。

マリケスはともかく、このちびっ子はどうだろう。

デイデアラも彼らの意見はもっともだと頷くが、それでも恐らく無理だというのが予想らしい。

「明らかにヤベェのはあの女とハゲだ」

あの女とはイザリスのことであり、ハゲというのは「ザイス」と名乗った修行僧のような見た目のマッチョ。

デイデアラの配下である「ベルクシオ」という名の騎士は自分と同程度であり、残り二人はマリケスといい勝負をするだろう、というのがこのおっさんの見立ててである。

「相性もあるからはっきりとしたことは言えねぇが、正直まともにやり合えば俺もお前も分が悪い。ベルの野郎がここでどれだけ経験を積んだか……ここを見誤れば真剣勝負でも危うい。だから俺様が確実に勝ちに行く」

考えなしではなかったのか、と驚愕の表情を浮かべる第八期。

そういうわけでデイデアラが先鋒を務めることになり、続いてケイ、リオレス、俺と来て最後がマリケスという順番になった。

「ま、先輩方には『勝者は始まる前に決まっている』ってのを教えてやりますか」と笑うデイデアラが闘技場の中央へと歩く。

その背中を見送った俺は、何か忘れているような気がしたが、多分気のせいでいいだろう。

一回戦はすんなり、と行かないまでも割と早い決着だったのではないだろうか?

俺たちの前には叩きのめされ、情けない姿を晒すデイデアラの姿があった。

あれほど自信満々だったはずが、どうしてこうなったのか?

経緯はこうだ。

闘技場の中央でベルクシオを名指しで指名したデイデアラ。

それに応えるようにベルクシオが出てきて両者が揃ったところで試合開始の合図。

歩み出たベルクシオがデイデアラの前で跪く。

ここまではデイデアラの筋書き通りだったのだが、何か喋っていたかと思えばベルクシオの一撃がまともに入った。

ここからはもう一方的な試合内容だった。

最初の一撃で右腕が使えなくなったデイデアラは追撃で左足を負傷する。

こうなると最早挽回の見込みはなく、ひたすら口汚くベルクシオを罵りながら耐えることしかできなくなったデイデアラはそれはもうものの見事にボッコボコにされた。

「まあ、あれが主君じゃねぇ」とエルメシアが溜息を吐いていたが、八期の大半は同意するように頷いていた。

どこからも援護のないデイデアラの孤軍奮闘空しく、こうして尻を突き上げて倒れるおっさんが出来上がったわけである。

ふらふらと戻って来たデイデアラに「勝者は始まる前に決まっている」と呟くケイ。

何人かが噴出したところで乱闘勃発、直後に鎮圧。

再び汚い尻を突き出して倒れるデイデアラだが、ここでようやく俺はあることを思い出した。

「そう言えば、第七期には未来予知に近い精度の占い師がいたな」

つまりここでの図り事など無意味。

あちら側は全てを知った上で「勝てる」と踏んでベルクシオを送り出している。

「お前そういうことは先に言えよ!」

本当に完全に忘れていたので悪気はないことをリオレスを見ながら負け犬に伝える。

お前も知ってるんだから同罪だよな、という視線から逃れるように顔を逸らすリオレス。

その仕草で察したデイデアラの言葉が「お前」から「お前ら」に変わったのでよし。

「人望なさすぎだろ、おっさん」

マリケスの容赦ない言葉に「はー? あるしー? 俺様人望ありまくりですがー!?」と子供のような反論をするデイデアラ。

宥めるのも面倒だとばかりに放置され出したデイデアラ。

それを無視してケイが「私の番」とだけ言って闘技場へと足を踏み入れる。

その自信満々の足取りを待ち構えるのは第七期の二番手「ヨシュア」という名の二刀流の男。

二本の曲刀をだらりと構え、ケイと対峙して試合開始の合図を待っている。

そして開始の合図と同時に前へと全力で走り距離を詰めてくるヨシュア。

それに完璧とも言うべきタイミングで地形操作による陣地構築で妨害するケイ。

高速でせり上がる床の一撃を食らい、続く圧殺するように囲い込む攻撃をスルリと躱し、三次元的な移動でケイの攻撃をヨシュアは悉く回避してみせる。

まるで曲芸のような動きで迫りくる大小様々な壁を回避する。

それを見ながら椅子を作ってその上に座って足をパタパタと動かし余裕を見せるケイ。

柵を作るように小さな棒のようになった床が次々とヨシュアに襲い掛かり、防衛陣地は迷路のような様相を呈してくる。

ヨシュアが気づいたときには遅かった。

パタパタと動かしていた足が止まり、ケイの口が動く。

捕まえた――恐らくはそんな言葉を口に出したのだろう。

それを証明するように、迷路のように複雑な地形となった陣地が一気に縮小する。

エデンが手掛けた頑丈な材質だからこその芸当。

逃げ場を失ったヨシュアは押しつぶされることはなかったが、移動先を完全に失った。

次の攻撃は完全に回避不能。

ヨシュアの攻撃では自身を阻むこの檻は破壊できない。

あっけない決着――誰しもがそう思った次の瞬間、ケイは背中から隠していた銃を取り出す。

俺が貸し出したTier3のハンドガンであり、型番タイプのレーザー銃である。

分類上はハンドガンなのだが、レーザーピストルという武器であり、消音性能が非常に高い銃である。

所謂サイレントキル御用達の武器である。

止めの一撃となるレーザーが照射され、それを曲刀を交差させることで受け止めるヨシュア。

同時に響くブザー音。

決着――ケイの反則負けにより、勝者ヨシュア。

流れるアナウンスに固まる第八期。

(あれだけ自信満々に俺から銃借りてたのに確認してなかったの?)

俺を見る周りの目が辛い。

もの凄く不機嫌な顔で戻って来たちびっ子だが、同期からの言われようにさらに不機嫌になっている。

どうみてもお前の所為だからな?

あとレーザーピストルを投げつけるように返却するな、二度と貸さんぞ。

また、武器を貸し出した俺にもペナルティが課せられるとのことである。

現在二敗、ボロ負けの可能性が出てきたんだが、これ俺悪くないよな?