軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-19

翌朝、目を覚まして顔を洗い、朝食を摂って訓練場へと向かういつも通りの風景にいつもと違うものが混ざる。

用件はわかっているが、無視するわけにもいかないので立ち止まって話を聞く。

「何か用か?」

「わかって聞いてますよね?」

そう言って笑うレイメルに溜息で返す俺。

予想通り「自分でも使えそうな武器の練習をさせてほしい」である。

取り敢えず必要そうな武器は解放され、ポイント問題も解決した今となっては彼女たちとチームを組む選択肢があるのも事実。

というよりあの要塞が強すぎる。

機械型のような遠距離攻撃主体の相手には有効であると結論が出てしまっており、単純明快な欠点である火力不足を俺が補えば、戦術として完成してしまうのだから拒否するのが難しい。

俺は仕方ないとばかりに溜息吐いて「前回のメンバーを集めておくように」とレイメルに伝え、射撃訓練場へと向かう。

そうしてしばらく一人で訓練をしていると前回組んだ面々が集まって来たのだが……一人足りない。

名前を思い出すのに少し時間はかかったが、俺は魔術師風の外科医であるリアディがいないことを尋ねた。

「……聞いていないのですか?」

少し驚いた様子のレイメルだが、すぐにその理由を教えてくれる。

「リアディはもう前線に立つことはしないそうです」

いずれ退く予定だったのは知っていたが、こんなにも早くなるとは思わなかった。

詳しく聞いてみたところ、彼女の技術をエデン側が何かに利用できないものかと興味を抱いたらしく、研究職員として引き込んだそうだ。

次回の出撃前に挨拶くらいはするそうだが、研究に夢中になって忘れるかもと言っていたらしい。

何はともあれ、無事に戦線から退くことができたのであれば祝うべきことなのだろう。

少なくとも、ここにいるメンバーはそう思っているようだ。

「俺っちも技術者として何ができるか調べている最中だからな。その時は盛大に祝ってくれよー」

ジョニーの言葉に俺は頷く。

彼の場合、そのリサイクル能力を有効活用した方が良いのかもしれないが、本人の希望が第一だろう。

他の面々も「仕方ないわねぇ」とレダを始めとして頷いた。

「そうなるとアタイも何ができるか考えた方が良さそうだね」

使える弾に制限があり、この問題が解決できないとなると彼女の継戦能力はあまりに低い。

常に俺が一緒に戦うわけではないので、ジョニーの戦線離脱は彼女にとっても進退を決めるレベルの話となる。

これも仕方のないことだと思うが、同期がいなくなるのは少し寂しいものだと感じる。

(まあ、会おうと思えば会える。大袈裟に騒ぐほどのことでもない)

しかしそうなると迫る交流会のタイミングが何とも言えない。

数が減ることがわかっていたからこそ、他の世代との共闘を遅らせるのか?

第七期の連携を見せつけられれば、彼らと同じ戦場では活躍の機会を逃したり委縮する可能性だって考えられる。

蓄積された経験がより良い方向へと向かわせていることを祈りつつ、今回解放された武器の中で使いやすそうなものを出していく。

弾持ちのよいTier1アサルトライフルのファルコン辺りが無難な選択だが、狙撃手であるウィーネリフェルトはスナイパーライフルを欲しがりそうだ。

そんなわけで本日は彼女らに付き合う日となった。

結果としては予想通りファルコンが人気。

DPSは低めでもマガジン火力が高いので弾薬配りの回数が減るので大助かりである。

Tier1ではなく、Tier2スナイパーライフル「ジョーカー」を選択したウィーネリフェルトはその反動の少なさと速射性をべた褒めしていた。

口数が少ない方のイメージだったが、どうやら自分が好きなものには饒舌になるタイプのようだ。

攻撃に参加しないと思われていたケイに至っては何故かレーザーライフルをお気に召したらしく、珍しく楽しそうに的を撃っていた。

余談だが、ジョニーがロケットランチャーの「ハセガワ」という名称の由来を聞いて「俺っちも自分の名前がついた武器が欲しいぜ」とか言っていた。

開発する側としては自分の名前を付けるのはアリなのか、と認識の違いに少しだけ驚いた。

(一作目の『山田ハード縛り』や『山田マルチ祭り』で盛り上がったから、味を占めてたってだけじゃないのかもしれんなー)

動画サイトで盛り上がっていたあの頃を思い出し、黙々と弾薬を配って彼らの練習風景を眺めていた。

ちなみに山田とは「拡散ロケット砲『YAMADA』」という自爆率が異様に高い産廃武器である。

次にこのメンバーで戦うのは何時になるのか?

そんなことを考えながら、武器スロットのためだけに出したバイクに跨るちびっ子を持ち上げる。

足が届いてないんだから止めなさい。

翌日、自室と端末の両方にメッセージが届いていた。

どちらもアリスから発信されており、本日第七期との交流会があるとのことである。

また急だな、と思ったがここ数日のドタバタの原因が自分だったことを思い出し「まあ、そういうこともあるよな」と掌返し。

以前から言われていたことでもあるので、恐らくこの急な連絡に俺は無関係である。

そういうわけで本日も訓練場。

同じことの繰り返しだが、何か新しい発見がないとは限らない。

そう思っていたらいきなり新しい出会いがあった。

珍しいことに射撃訓練場に先客がいたのだ。

その大男は髷を蓄えた黒髪に和服姿。

武士かと思えば刀ではなく弓を使っている。

和弓のような大きな弓を限界まで引き絞り、放たれた矢はライフル弾のような速度で的を貫通した。

「お主がスコール1か」

こちらに背を向けたまま、ぶっとい右腕で再び矢をつがえる大男。

俺は「そうだ」とだけ言うと隣に立ってスナイパーライフルを取り出す。

放たれた矢が的を貫き、俺が引き金を引くとこちらの目標も弾け飛ぶ。

「儂は第六期の『アイザン』という者だ。ただの戦人だが、存外戦場で死ねずに困っておる」

それを聞かされて何と答えろというのか?

俺はただ「そうか」とだけ言って再び引き金を引く。

「今日は交流会があるそうだな?」

弓が的を射抜き、弾丸が的を破壊する。

アイザンの問いに沈黙で肯定すると「ふむ」と呟いた彼が空になった矢筒を背負う。

「次は地下で会えるとよいな」

そう言って立ち去るアイザンだが、エデンの地下に何かあるようだ。

訓練はほどほどにして、先ほどあったことを廊下で出会ったアリスに尋ねる。

「あー、もう接触していましたか」と何処か諦めた表情を浮かべる。

詳しく聞いたところ、どうやら「強い奴と戦うのが大好き」という人物らしく、暇さえあれば地下にある闘技場で戦っているらしい。

「地下に闘技場があるのか」

俺の言葉にアリスが頷く。

こちらは過去にいた英霊が大量のポイントを使って作らせたものらしい。

今なお英霊同士の対決場として有効活用されており、暇を持て余した者たちの娯楽の場となっているそうだ。

地下には他にも色々と施設があるらしく、俺たちが他の世代とほとんど遭遇しないのは彼らがそちらにいる時間が長いから、だそうだ。

もっとも、出くわさないように新しく来た英霊用に区画を分けているので、余程のことがない限りは出会うことはないらしい。

話を終えたところでアリスと別れ、時間的には大分早いが交流会の会場となった場所へと到着する。

案の定誰も到着していなかったが、一人の職員が準備中だった。

壁に収納されていた机や椅子を既定の位置に並べている。

時折見せるこのアナログさは予算の都合か、はたまた効率を求めた結果か?

ともあれ、このまま眺めているのも具合が悪いのでそれとなくお手伝い。

エデンはどこも人手不足なので助かる、とのことである。

男性職員は並べた机と椅子をチェックし終えるとお礼を言って退出する。

俺も一息つこうかと隅にあるウォーターサーバーから水を拝借。

飲み終えたカップにもう一度水を注ぐとレーションを取り出して齧り出す。

今回はチョコレート味だった。

丁度小腹が空いて甘いものが欲しかったので良い引きである。

満足気に頷いていると女性職員が入って来た。

彼女はレーションを食べている俺を見つけると「交流会で食事が出ますよ」と親切に教えてくれる。

それならば、と残りを彼女に押し付けて出される食事を待つことにした。

運ばれてくるカートに詰まったピザ箱のようなものを机に並べ始める職員。

折角なのでこちらも手伝う。

「ありがとうございます」と素直にお礼を言われて頷いて返し、黙々と作業をしていると簡単にこの昼食の説明をしてくれる。

端末に表示された画像と合わせると「ピザの上に乗ったグラタン」がわかりやすい表現だろう。

「トゥエニア」という今のエデンでも比較的低コストで作れる料理ということで、こういう場ではよく出される品らしい。

保温機能のついた箱の中に容器が入っており、ナイフとフォークで食べるようだ。

そんな説明を聞きながら配膳していると同期が続々と入って来る。

「いや……何やってんだよ、お前」

デイデアラが俺を指差し呆れている。

一部が半笑いだが、そんなおかしなことをしているつもりはない。

箱を開けようとするデイデアラを注意したりしていると配膳が終わり、職員の人もお礼を言って出て行った。

入れ替わるようにアリスが来るともうすぐ第七期が到着するとのことである。

どうなることやら、と水を取りに行ったところ「俺のも」と手を挙げるデイデアラ。

仕方なしに持っていくと今度はレイメルから「私の分もお願いできますか?」と目が見えませんアピール。

折角だから全員分を運んでやる、とトレイを使って配り出したところで七期の皆様が到着。

「……え? どういう状況?」

真っ先に口を開いたのは第七期の規定外領域さん。

折角だからお前らにも水を奢ってやろう。