軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-11

続々と帰還する第八期だが、戦死者が出たという報告に誰もが何かしらの反応を見せている。

俺たちが戻ってきた時にいたのは無傷にしか見えないリオレスと、それなりに負傷しているデイデアラの遊撃組に加え、空中で爆撃をしていたジャミトスのみ……かと思いきや、ボロボロになった忍者のような同期が横たわっていた。

名前も知らず、顔も見えない同期ではあるが、呼吸しているように見えるので彼ではないようだ。

というかこの忍者、何処で何をしているかが全くわからない人物である。

恐らくは上手く忍んで活動しているのだろう。

なので声をかけるべきか悩ましく、今は訃報の方が重要度は高いので放置されているのだと思い、俺もそれに倣うことにする。

そんな訳でしばらく続いた沈黙だが、それを破ってくれる者がようやく現れた。

「ついに誰か死んじまったか……」

重々しく口を開いたレダが溜息を吐く。

それを伝えたジェスタも沈痛な面持ちだ。

「戦場に出てんだ。死人が出るのは当たり前だろ?」

「それを口に出すのはどうかと思いますけども?」

デイデアラとアネストレイヤという珍しい組み合わせのやり取りだが、そこに触れる者は誰もいない。

少し騒がしくなってきた辺りで最後の一団が帰還した。

(……九人か。新たに人数を増やして十人で出撃していたはずだ)

いないのはタンク役のあの騎士。

予想通りと言うべきか、前回の戦いが実力不足で起こっていたならば、ここが一番怪しいと思っていた。

明らかに負傷具合が他と違い、誰もが中々に痛ましい姿となったクドニク率いる一団に歩み寄るジェスタ。

「見ての通りだ。イクオスが逝った」

「……聞かせてくれるか?」

ジェスタの言葉に一団の先頭にいるクドニクが頷いた。

しかし口を開いたのはその後方にいる一人の女性。

その内容はあまりに予想外で、あまりにも酷いものだった。

あのデイデアラさえもドン引きしたその内容の一部がこちらである。

「イクオス様と私は愛し合っていたの。あの戦場では何度も何度も私の前に立ち、私たちを引き裂こうとする薄汚い機械から私を守ってくれた。その度に私はイクオス様の愛を感じたわ。だから私はイクオス様をめいいっぱい愛したの。私の愛がイクオス様を蝕むのはとても辛かったわ。でも二人の愛はそれくらいは容易に乗り越えることができる。そう信じてたのにイクオス様は倒れてしまったの。ええ大丈夫、私の所為じゃない。イクオス様は私だけを守ってはくださらなかったの。『皆を守る』という高潔な想いが彼を殺してしまった。私の愛だけじゃイクオス様は足りないって言うの。酷い……おかしいと思うでしょう? 私はこんなにイクオス様を愛しているのに。あんなに愛し合っていたのにどうして?」

そう、この女性は延々と如何に自分とイクオスと呼ばれたタンク系騎士が愛し合っていたかを語り出したのだ。

何故死んだのか?

その部分がいつまで経っても具体的には語られない。

彼女はかれこれ十五分くらいはこうして喋り続けているが……終わる様子がない。

というか、そもそもこいつは誰なのか?

そう思って隣で辟易した顔をしているジョニーにこっそりを聞いてみる。

呪術師「ミドフィ」――二つ名は「泥愛」。

愛するが故に呪う、という俺には理解できない感性の持ち主であり「俺っちが一番かかわりたくない奴」とまで言われた女である。

ちなみにジョニーは呪いとかオバケといった類のものが嫌いらしい。

ともあれ、ここまでは埒が明かないと思ったジェスタがクドニクに説明を求める。

なお、ミドフィはまだ喋っている。

「ミドフィは呪いを伝播させ、周囲の敵を弱体化させる。その感染源となったのがイクオスだ。ああ、先に言っておく。これは同意の上で行われている。イクオスは自身の弱体化を受け入れて戦場へ出た」

驕った末路だ、とクドニクは語気を荒げて吐き捨てるように言ったが……果たしてその怒りは誰に向けられたものなのか?

さらに問題なのは彼女の能力を聞く限り、感染源となる対象がいなければ弱体化が発動しなさそうに聞こえるのだ。

俺は「愛する者=感染源」の図式が頭から離れず、超危険人物というカテゴリにミドフィを放り込む。

かかわりたくないので黙って帰ろうかと思ったら、ボロボロで倒れていた忍者がいつの間にか消えていた。

もしやと思ってリオレスを探すがこちらもいなくなっていた。

だったら遠慮はいらない、とばかりに俺もこの場からそっと消え去ることにした。

「スコール1ならそうした」

これはロールプレイの一環であり、スコール1を演じるが故に取らなければならない行動である。

イクオスとの愛を語るミドフィを無視して俺は自室へと戻る廊下でリオレスと出会う。

というより、俺を待っていたようだ。

「良い剣だった」

そう言って俺が貸し出していたブレードを返却するリオレス。

「もういいのか?」

「明日、最終調整だ。次の戦闘には間に合う」

俺は頷きブレードを受け取る。

損耗具合確かめると刃こぼれ一つない綺麗な刀身である。

(あれだけ暴れ回って傷一つ付いていないとか……リオレスが凄いのか、それともこいつが凄いのか)

見ただけではよくわからないし、調べたところでわかるものでもなし。

俺は近接スロットを初期のナイフに変更して身軽になる。

最後に「ではな」とだけ言って立ち去るリオレス。

俺はその背中を見送って自室へと戻った。

一方その頃、俺が立ち去ったあの場所ではとんでもないことが起こっていた。

俺がそれを知るのは翌朝の訓練室となる。

この時は俺の頭は明日のリザルトのことでいっぱいであり、戦死者が出たことの影響も深くは考えてはいなかった。

翌朝、目を覚ました俺はリザルトを確認する。

今回のリザルト

Tier5:強化服

Tier5:火炎放射器

Tier8:ミサイルランチャー

強化服は素直に嬉しい。

地道にランクが上がっているのはちょっと気になるが、それでも出ないよりかはずっとマシだ。

エネルギーパック問題も一応は解決したので、この強化服は間違いなくアタリである。

続いて火炎放射器だが……こちらは厳密に言えば「Tier5相当」という区分になる。

所謂「特殊兵装」に分類される武器はランク分けがされておらず、総合スペックでプレイヤーが判断しているだけだったりする。

また今回出てきた火炎放射器だが、正式名称には「Ex」が最後に付いており、これよりも弱いバージョンが存在している。

そちらはTier8相当なので使い物にならないが、こっちはリロード不要で燃料を使い切るまで垂れ流せる隠れた強武器であり、何気に初の撃ち切り兵器でもある。

対地上限定的なところはあるが、今後の活躍に期待できるのは間違いない。

そして待ちに待ったミサイルランチャーが何故低ランクなのか?

しかもよりによって単発式で誘導性能以外に見るべき点が何もない微妙どころを見事に抜いた。

こいつに関しては恐らく使用する機会はないだろう。

最後に何故解放された武器が三つだけなのか?

(やはり貸出では撃破数にカウントされず、装備のアンロックには繋がらないと見るべきか?)

あの要塞で戦うのはすごく楽なのでどちらを取るかは悩みどころである。

今回のように遠距離攻撃の敵が主体の場合はチームで戦うようにするなど、その辺りの相談を彼女らとするのもよいかもしれない。

取り敢えずリザルトを確認したので訓練場で確認をしよう。

そう思って射撃訓練場に来たのだが……一つ問題が発生した。

(火炎放射器って射撃訓練場で使っていいのか?)

そもそもリロードができないのだが、この場合弾に相当にする燃料は元に戻るのか?

仮に戻るとしたらどのタイミングで回復するのか?

武器やビークルは自動修復なのはわかっている。

しかし弾はリロードしないと空のままだ。

「まさかとは思うが、撃ち切り武器はそれっきりってことはないよな?」と不安になり始めたところで声をかけられた。

「やはりここにいましたか」

そう言って声をかけてきたのはアリス……と何故かいるデイデアラ。

「よお」とだけ言って手で挨拶するデイデアラだが、いつもの覇気がない。

あれから何かあったのか?

そう思って聞いてみたところ的中した。

「ミドフィか?」

詳しく聞くためにミドフィの名前を出したのだが、それを聞いたアリスが覚悟を決めたかのように口を開く。

「彼女は亡くなりました」

予想外すぎて思わずフリーズする俺。

「もしかして後を追って自殺でもしたのか?」と思いきや、もっと予想外の言葉がデイデアラから飛び出した。

「殺された。やったのは第五期の女」

気づいたときにはミドフィの胸を剣が貫いており、次の瞬間にはその犯人は彼女の首を掴み、持ち上げていたのだと言う。

「自己愛もここまで来ればいっそ清々しいな。実に醜い」

「こやつは不要だ」と言って致命傷を負ったミドフィを引きずり何処かへと去って行ったそうだ。

生存は絶望的。

アリスは「恐らく送還のために召喚装置のある部屋に向かっていた」と語るが、それは間に合うものなのか?

事前に用意していなければ送還の前に死ぬことになる。

それとも死んだ後でも送還できるのか?

「元々死んでいるのだから」と考えることもできるが、今はそれよりもその女の正体である。

第五期の英霊による第八期への攻撃とも捉えることもできる今回の事件。

その詳細を知るべく、俺はアリスに続きを促す。

「彼女の名は『フィオラ・アルフメルデ』。現エデンの最高戦力です」

つまりポイントなんて吐いて捨てるほどあるやりたい放題の規定外領域到達者が犯人。

「いや、これどうすんの?」と割と最近事情を知った側のアリスに目を向けるも、彼女もどうすればいいかわからない様子。

俺に「いや、ほんとどうなるんだろうな」と天井を見上げる。

「これ、どうなるんだ?」

デイデアラさえも口に出す始末に俺も再びアリスを見る。

「どう、なるんでしょうか?」と疑問形で答えるアリスが上目遣いにこちらを見ていた。

可愛いと思うが、君はエデンの職員なのだからしっかりしてほしい。