軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2-9

英霊たちが続々と作戦室に集まってきている。

いつも通りの光景だが、いつもと違うものもある。

ジェスタが笑っていない。

普段は笑みを絶やさないマッチョが珍しく真剣な顔つきのままである。

何処となく「これまでと違う」と感じ取っているのであろう、俺だけでなく少なくない人数が気を張り詰めているように思えた。

「んー、なんかあるなら早めに言っておいてほしいと思うんだが?」

ジョニーの言葉にジェスタが考える素振りを見せ、第八期がほぼほぼ揃った頃合いでモニターに今回の襲撃者の姿を映し出す。

モニターに映ったのはどう見ても機械――四足型ロボットの姿がそこにはあった。

さらに映し出される今回の敵。

同系統と思しきロボットが追加されたわけだが、何と言うか既視感のあるデザインである。

(四脚の平たい五角形のロボットと円筒形の背が高いロボットね)

一言で言うとSF漫画でよく見るガードロボットとか殺人マシンとかそういう見た目である。

となれば、この二種類は遠距離型。

しかも機動力があって硬いタイプと見るべきか?

その予想は大当たり。

ジェスタはこの「機械型」の厄介さをじっくり丁寧に語り出す。

曰く「クソ速いビームが死ぬほど飛んでくる。一部魔法の効き目が薄く、防御性能が高い。その癖、足にタイヤが付いているので走行速度も馬鹿にできない」とのことである。

弱点としては対空性能があまり高くないらしく、平たいタイプAに至っては射角の関係で高度を取れるならボーナスエネミー。

円筒型のタイプBもタイプAほどではないにしろ、射角が不十分なら射程距離の関係でかなり安全に戦える、とのことである。

空を飛べるジェットパックが切実に欲しくなる戦場である。

機械型の情報を開示し始める頃には全員が集合しており、ジェスタはモニターに映る今回の敵に対する注意点などを話へと移る。

「こいつの厄介なところはとにかくビームの回避が困難な点だ。一発一発の威力は大したことはないんだが……見ての通り数が数だ。攻撃が集中すると大怪我ですまない場合もある」

現にこれまでの英霊たちもこいつを相手にした時に初めての死者を出している、と改めて俺たちに注意を促す。

さらに厄介なことに機械だけあってこいつらの攻撃は正確無比。

立ち止まろうものなら一瞬で集中砲火にあう、と強く警告を発するほどである。

「今回ばかりは言わせてもらうが……連携して戦わないとマジで死人が出るぞ?」

その言葉に俺を含む最近集まっている面々が顔を見合わせる。

(何という都合の良さ。これは楽勝フラグなのか?)

防御陣地が機械型にどれだけ有効かはまだ不明だが、そう簡単に破壊されることはないはずである。

いっそのこと他の遠距離攻撃主体の英霊たちも中に入れて戦うべきではなかろうか?

前衛が遊撃に回り、後衛は陣地に籠って戦う。

負傷すれば防御陣地でリアディが治療もできるので、シンプルな戦術だが悪くないように思える。

「いっそのこと、こっちの防御陣地に入れて戦うのはどうだい?」

俺が言おうと思っていたことを先にレダに言われた。

だがこの提案にはジェスタが難しい顔をする。

「敵の規模次第では有効なんだろうが……今回の数だと突破されてエデンに到達されるのがな」

ジェスタの言葉にレダは「あー」と失念していたとばかりの声を出す。

考えてみれば敵の群れの横幅に対して防御陣地は確かに小さすぎる。

ゲームならば如何様にもなる気もするが、ここは現実なのでそう上手くはいかない。

とは言え、危なくなったら逃げ込める避難場所として機能することには違いない。

それをアーシダが口に出すとジェスタも「そうだな」と首肯する。

防衛陣地を上手く活用するのであれば、我々がど真ん中に構える必要がある。

楽勝かと思ったら最も危険な場所に配置されることになった。

(まあ、火力を見るには丁度いいと思っておこう)

理論上の効率は高いのだからなんとかなるだろう。

その後も機械型の情報共有と他の英霊たちの投入場所や戦域予想を聞きながら、第八期の戦術は決定する。

単騎で遊撃する者はリオレスとデイデアラの二名。

一部の飛行能力を持つ者も遊撃に入るが、こちらは無限に飛べるわけでないので、俺たちがいる防衛陣地を利用する。

それ以外はある程度固まっての行動となっており、周囲との連携が試される。

こういう時こそ集団戦が得意な英霊が力を発揮しそうなのだが……前回の失敗があってかクドニクはだんまりを決め込んでいる。

信用回復のために今は黙って結果を出す、ということだろうか?

(流石に「下手すりゃ死人が出る」と脅してくるくらいだから真面目にやると見るべきか)

「出撃の時間だ。全員が生きて帰って来ることを願っている」

そう言って真面目な顔で敬礼をするジェスタ。

ただ黙って頷く俺たちはゲートへと急いだ。

現地に到着するなり陣地が構築される。

その高さは凡そ三メートル。

「なるほど、要塞だわ」と高さもある程度自由にできるその能力に俺は感心する。

当の本人はというと自分用に作った椅子で暢気に足をパタパタとさせており、二つ名である「お散歩要塞」の緩さが何処から来ているのかわかった気がした。

「敵の射程に入る前にはこちらも展開しよう」

そう言ってアーシダが俺からセンチュリオンを受け取る。

練習の成果を見せる時であるとばかりに張り切っている。

なお、武器貸出の功績は「更新が間に合わない」ということで次回からとなっている。

次回以降はやるかどうは未定なのだが……これも検証だからとやらされる可能性が出てきた。

「ポイントも欲しいが、それ以上に新武器の方が欲しいんだよなぁ」と思いながら、射程に入った機械型をセンチュリオンで撃ち抜く。

一撃に二体撃破し、その爆発が周囲の個体を複数を巻き込んだ。

だがその爆発で倒せるほど弱くはない。

小型に分類される中でもさらに小さいのが機械型だが、金属のボディを持つために防御力は高い。

こいつらも倒せば風化するのだからデペスという寄生生物は不思議である。

俺に合わせて狙撃を開始したアーシダだが、こちらは一度に複数を巻き込むには至らず、一体一体を確実に倒している。

しばらく狙撃を続けていると、そこにウィーネリフェルトが自分のスナイパーライフルを携えて加わった。

彼女も一撃で複数の機械型を爆散させている。

次々と敵陣営で爆発が起こる中、真っすぐに進む群れの勢いは衰える気配はなく、むしろ「加速しているのでは?」と思ってしまうほどの速度で走っている。

そんな大群に空から何かが降ってくる。

点滅する光の玉は地面に落ちると同時に爆発を起こし、範囲内の機械型をまとめて吹き飛ばす。

「……ジャミトスか」

スコープで確認すると笑いながら高高度爆撃を行う魔術師の姿。

空を飛べる範囲攻撃持ちが生き生きとする戦場なのは事前情報通りである。

ふよふよと上空に停滞し、そこからポイポイと光る玉を放り投げている。

その真下では射程距離外なのか、敵を感知している機械型は何もできずにウロウロしていた。

「ゲームじゃねぇんだから」と思ったが相手は機械。

そういうものかと思いきや、しばらくするとアップデートでもされたのか、上空にいるジャミトスを無視するようになった。

少しの間とは言え、一部の敵を釘付けにできたのだから十分である。

その間にも狙撃と爆撃で着実に数を削る。

相手は全て遠距離攻撃持ちなので少しでも多く削っておきたい。

そんなこんなでアーシダがリロードが終わったセンチュリオンを返してくる。

どうやらそろそろ相手の射程距離に入ると見ているようだ。

彼女の衣服が弾け跳び、陣地の周囲に防壁が展開される。

「さて、どれほどのものか見せてもらおうか」

自信満々の半裸筋肉美女が腕組みで高みの見物。

それと同時にアサルトライフル三丁による一斉射撃が始まった。

敵の攻撃はまだ飛んでこない。

つまりはこちらの方が射程は上。

俺もスナイパーライフルをリロードしてアサルトライフルへと武器を変更。

これなら片手でも撃ち続けることができるので、手を止めることなく攻撃ができる。

「スコール1、こっちに弾をくれ!」

ジョニーの声に反応してバイクの弾薬パックから取り出したマガジンを放り投げる。

「こちらにもお願いします」

腰の弾薬パックから取り出してレイメルに放り投げ、ウィーネリフェルトが「弾」と言えばバイクに手を伸ばしてマガジンを投げる。

「忙しいな、おい!」と口には出さないまでも、俺もリロードタイムに突入。

事前の打ち合わせ通りに、こちらの射程が相手を上回るのであれば、機械型を近づけないように撃っている。

そのせいか中々向こうが攻撃してこない。

それとも相手の有効射程はかなり短いのか?

そう思ったところでついにきた。

例えるならば光の雨……大量のビームがこちらに向かって放たれ始めたのだ。

「目に悪い攻撃ですわね!」

声を荒げるアネストレイヤが炎モードへとチェンジ。

そこから間髪入れずに全力の範囲攻撃で前方の機械型を一気に消滅させる。

確かに目が痛くなりそうな光景だったが、もう少し引き込んでからでも良かった気がする。

とは言え、これでまた少しの間だけ敵の攻撃が途絶えることとなる。

「私にも撃たせてくださいまし」とアネストレイヤがジョニーのアサルトライフルをひったくる。

一発でガス欠のお姫様が鬱憤を晴らすかのように銃を乱射。

「お行儀が悪くてよ」と軽口を叩く暇もない俺は弾薬配りと射撃に大忙し。

再び機械型の攻撃が始まると「目がチカチカしますわ!」と文句を言いながらも弾を要求するアネストレイヤ。

防衛陣地に数えるのも馬鹿らしくなるくらいのビームが放たれているが、それを受け止めているアーシダは未だ笑みを浮かべており、自分の陣地に余程の自信があるのか、ちびっ子は暢気に足をパタパタさせている。

(頼りになりそうなことで)

弾倉を放り投げて自分もリロード。

防衛陣地は高さもあるのでその一瞬で戦況を確認する。

ジャミトスは変わらず上空で爆撃。

適当にばらまいているのかと思いきや、戦況を見て危なそうなところに向かって投げているようにも見える。

遊撃二人については……「もう何なんだろうね、あの二人は?」と言いたくなる無法っぷりにリロードの手が止まりかけた。

恐らくは駆け抜けているのだろうリオレスは直線的な動きに合わせて機械型が連鎖爆発を起こしており、デイデアラは敵を一体捕獲してそれを盾に暴れているように見えた。

どちらもまだまだ元気いっぱいといったご様子で、心配するのが馬鹿らしく思えてくる。

パッと見ただけではそれくらい把握するのが精一杯。

リロードが完了して俺も攻撃を再開する。

安定した戦況──このままなら問題なく終わりそうだが……後ろから微かに舌打ちの音が聞こえた。

位置的にはアーシダ。

敵の弾幕は視界を埋め尽くすほどになっている。

(戦いは数だよ、と何かで聞いた記憶があるが……)

一波乱で済めば良いのだが、と今は目の前に敵に集中する。

状況を察しているのか「弾!」と弾薬を要求する声も大きい。

ちびっ子はまだ足をパタパタさせている。

こちらはまだまだ余裕がありそうだ。

これなら最悪敵を引き付けて、バイクで走り抜けるような真似はしなくて済みそうだ。