軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イメージチェンジ

「ヴィオラって、雰囲気変わったわよね」

「そうかしら?」

「ほら、服装の系統とか以前とは違うじゃない?」

ある日の昼下がり、ジェイミーと自室でお茶をしていたわたしは、過去の自分を思い出しながら「確かに」と頷いた。

記憶喪失のフリを始めた際、別人アピールのために服装や髪型の系統を変えたのだ。それからは妙に今の感じがしっくりときていて、ずっとそのままでいる。元々のわたしはいつもアップヘアで、明るい色のドレスを好んで着ていた。

「今のヴィオラも好きだけど、私は以前のヴィオラも好きだったの。たまには元に戻してみたら?」

「そうね、実は買ったまま着ていないものもあるし」

事故の直前に買って、袖を通していないものだってある。

この後二人で買い物に行く予定だったわたしは、折角だしとジェイミーのリクエストに応え、クローゼットに仕舞いっぱなしだったドレスに着替えることにした。

◇◇◇

「そうそう、その感じ! これがヴィオラだわ」

「なんだか落ち着かないんだけど、変じゃない?」

「大丈夫、とても可愛いわよ」

レースが沢山付いた淡い桃色のドレスを着た自分の姿を鏡で見ると、言いようのない違和感を感じてしまう。この姿の期間の方が長かったはずなのに、なんだか不思議だった。

それからは髪を編み込みのアップヘアにまとめてもらい、ジェイミーと共に街中へと向かう。

ウインドウショッピングをして、流行りのカフェでスイーツを食べ比べて、次はどうしようかと店を出た時だった。

「……ヴィオラ?」

聞き間違えるはずもない声に振り返ると、そこにはやはりフィルの姿があった。彼のふたつの金色の瞳は、何故か驚いたように見開かれている。その後ろには、レックスもいる。

そんな彼らは、今日も道を行き交う女性達の視線を集めていた。我が婚約者ながら素敵だな、と思っていた時だった。

フィルはわたしの両肩を掴むと、ひどく不安げな表情でこちらを見つめて。やがて、口を開いた。

「俺のことが、好きか?」

「……は?」

そんなことを大勢の人々が行き交う道のど真ん中で尋ねられたわたしの口からは、間の抜けた声が漏れる。訳が分からなすぎる上に、周りからの視線が痛い。

レックスが思い切り吹き出したのが、視界の端で見えた。

「ええと、どういう……?」

「俺のことが好きかと、聞いている」

「それは分かっています」

何故か焦ったような表情を浮かべる彼に対して、わたしは恥ずかしさを必死に押さえつけると、小さく頷いた。

「……もちろん、好きです。すごく」

するとフィルは安堵したように深い溜め息を吐き、「良かった」と深い溜め息を吐き、わたしの肩に頭を預けた。

「あの、いきなりどうしたんですか?」

「……すまない。その姿の君とはあまり上手くいっていなかったから、少しだけ怖くなった」

そしてようやくわたしは、フィルがどうしてこんな質問をしてきたのかを理解した。この姿のわたしは、長年彼と気まずい関係だったのだ。大嫌いだと言ったのもこの姿で。

彼が不安になる気持ちも、分かる気がする。それでも時と場所は、もう少し配慮して欲しい。

わたしは心配症な婚約者の手を取ると、微笑んだ。

「大丈夫ですよ。今のわたしは、フィルが好きですから」

「ありがとう。絶対に俺の方が好きだ」

「ふふ、そうでしょうね」

その後、一部始終を見ていたジェイミーとレックスに冷やかされ続けたのも、翌日フィルから最近着ているようなドレスがお店を開けそうなくらい沢山届いたのも、また別の話。