軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五話 ネグリ山廃坑I 『達人の着流し』

全身を獣の皮でびっしり纏い、ねじれた黒い角を二本生やした黒髪。金色の瞳は鋭くもやる気がなく、風体は細く頼りがない。

こだまでしょうか、いいえ、わたしです。

「っつーかあの女神め、最後の最後に地雷隠し持ちやがって。えっちな行為に臨む直前で性別男だと暴露されたようなもんじゃねえかちくしょう」

翌日はよく晴れていた。

不気味な森も、お天道様の下では破壊力が四分の一以下。おどろおどろしい枝垂れた木々も、日光の前では可愛いもんだ。

そんな訳で何事も無く塔のあった森を通り抜け、北のダンジョンに向かっていた。

……それにしても。

やたらあのダンジョンに意識が向くのはあれか。女神が言ってた破片センサーか?

まあそんなことは良いんだ。

今回の問題は、破片を吸収するとめっちゃ強くなるけど次からはめっちゃ痛いよ? めっちゃ痛いよ? という、もはやヤレと言われているようなこの前フリのような何かである。

手に取ってから考えればいいか、とは思うのだけれど、如何せん前回は問答無用で胸元に飛び込んできたからちょっと怖い。

幼女が飛び込んでくるなら鳩尾さえ気をつければいいのだが、おそらくあの破片どもはEX○Mシステム搭載しているか、レーザー・ウ○ング発動中か知らんが、手やらなにやらすり抜けてくるくらいは余裕でありそうだ。

「その辺、気をつけないとなあ」

さて、森を抜けると北のダンジョンに向けては低い山を越える必要がある。その間、道らしいちゃんとした道は無い。

なのでこうして俺は、身体能力任せで木々を跳び伝い目的地へまっしぐらだ。

瞬間移動とかの魔導が使えたらいいんだが、悲しいかな妖鬼に魔導の適性は皆無のようだ。

なもんで、俺は今軽やかに全力でダンジョンへ向かって疾走している。

風になれ、俺!!

「ママ、あれなにー?」

「しっ、見ちゃだめ」

両手を広げ風を感じ、そのまま木々を跳び移って進んでいく。

そういえば、魔獣や魔族とカテゴライズされる中にも知性があるものとないものがいる、というのがこの世界の設定だった気がする。

魔族はたいがい言葉を喋ることができるし、中には人間と共存している者までいる。

魔人という呼称だったり魔族という呼称だったりはするが、要は人と同じ程度の知能を持つものを魔族と呼び、その中でも人間に近いものは魔人と呼ばれたりもするという訳だ。

俺、魔族で魔人。

北のダンジョンはどんな場所かというと、古い鉱山の跡地だ。

本来は訪れる必要は無いダンジョンだが、ユニークモンスターやレジェンドモンスターと言った強いエネミーが時折ポップするので有名だ。ちなみに本来モンスターってのはダンジョン内に発生する瘴気で出来た現象を指す。ユニークモンスターやレジェンドモンスターはダンジョン内にたまたまいる魔族。

まあ基本魔族の方が圧倒的に強い。閑話休題。

また、このダンジョンは達人の着流し、そしてなにより最下層に置かれた換金アイテムが訪れる理由の最たるものであった。

では何故隠しかといえば、ある一定の条件を満たさないとこのダンジョンに入ることができないから。

本来鉱山であったこの場所は、その地下にダンジョンが形成されているなどと地元の人間でも知らないのである。

あるイベントをこなさないと、入ることができない。

それがすなわち最下層にある換金アイテム"マイゾウキン オブ トクガワ"。ふざけた額の換金を行えるこのアイテムの噂を聞かなければ、入ることができないのだ。

「さて……ここか」

山間の一角を切り崩して作られた、開けた場所。トロッコの為に張られた線路が幾重にも折り重なり、廃墟の様相を示している。

炭坑の前に仁王立ちして、暗闇の広がる洞窟の内部を眺めると、なるほど。たいまつがほしくなりそうだった。

「……まあなんかこの体夜目利くし、なんとかなるかな」

その時の俺は知らなかった。夜目と、洞窟の暗闇は関係が無いのだと。

「くらっ!! 真っ暗じゃねえか!! ばーか! 俺のばーか!!」

数刻後、炭坑の前に俺は立っていた。たいまつをもって。

「ちくしょう二度手間じゃねえか。俺の角見てたいまつ職人のじいちゃんは腰抜かすしよぉ」

若干傷ついたのは内緒である。

さて探索開始だ。

このダンジョンは最下層まで十三階。達人の着流しがあるのは九階かそこらだった記憶があるので、ひとまずは適当に降りていく。

モンスターがでれば鬼殺しで一撃。

しかし、珠片の効果もあってかどうかは知らないが、清々しいくらいにモンスターが一発で消し飛んでいく。

どれほど今の俺が強いのか自覚はないが、結構やれるんじゃないだろうか。

女神が言ってたこと? あんな奴の言うこと信じてたら負けだよ。きっと。15個とか、痛みが生じるのも嘘だよ。……嘘、だったらいいな。

「いやしかし、この洞窟はまた雰囲気あるなあ」

炭坑らしく、時折人工的に支えとして作られた木の支柱が目に入る。それ以外は、土を掘ったまま、という雰囲気がそのまま伝わってくるようだ。

階段も、高さや幅員に統一性がまるで無かった。

だからこそ味があるし、冒険してる感があってわくわくしつつ進んでいく。

「階段を下りる時に『ツッチーツッチー』とかサウンドエフェクトを鳴らそうとする奴は俺だけじゃないと信じたい」

グリモワール・ランサーシリーズでなくとも、俺はやたらとRPGばかりプレイするゲーマーだったのだ。そんな俺が、自分が冒険しているという雰囲気に酔わないはずがない。

宝箱の在りかを探す、ってのもなかなか乙なものだしな。

さて、どこにあるかな、達人の着流しは。

階段を下りる際、今回はきっちりとカウントをしていた。

これで七つ目の階段を下りたことになるのだから、そろそろ本気で捜索に精を出さなければいけない。

このダンジョンはそこまで広くはないのだ。ワンフロアをくまなく探すくらいは、身体能力の高さもあって造作もないこと。

ただ一つ気になっていることがあるとすれば。

「そういや、まだユニークモンスターに会ってないな」

このダンジョンは珍しい魔族が時折現れることで有名なのだ。既に八階層目まできているというのに、エンカウントはしていない。

その上のレジェンドモンスターという部類の化け物が出ることもあったが、確率はかなり低いし"遭遇=がめおべ~る(GAME OVER)"というほどの強さを持つ鬼畜仕様なので、こっちは出ないと信じたい。

隠しダンジョンだからという制作陣の遊び心らしいのだが、ゲームならともかく現実ではちょっと勘弁願いたいな。

逆にユニークモンスターは、ダンジョンに入れば一回は出会えるくらいの頻度だったはずなのだが、さて。

妙な魔獣の類いじゃなければ良いが、もし面倒だった場合はどうしてくれようか。

最悪なのは、そのモンスターが神秘の珠片を取り込むこと。

俺のような中ボス相当が魔王軍連中と殴り合えるという話が本当だとすれば、ちょっと本腰入れても死ぬかもしれない。

「……珠片、本当にさっさと手に入れた方が良い気がしてきたな、っと!」

土の壁を、左手の法則で進んできた俺の目の前に転がる宝箱。

このグリモワール・ランサーIIには宝箱トラップが存在しない。もしかしたらこの世界ではあるかもしれないという一抹の不安はあるが、そんなものより好奇心が勝った。

ぱかりと開けてみれば、そこに鎮座するのは群青色の衣服。

当たりだ。ばっとその衣服を取り出してみれば、間違いなく着流し。腰のイカした結び目が、俺に勝利を呼びかける。

「いよっしゃあ! 毛皮先輩ともおさらばだぜ!」

毛皮を盛大に脱ぎ捨て、取り出した群青色の着流しにいそいそと袖を通していく。カッコいい。うむ、和服に身を包んだ妖鬼というのは、なかなか風情があるものではないか。

おや。

何かころん、と音がしたような。

タイミング的には、着流しを引っ張りだした時だ。

宝箱の中をもう一度覗いて見たら、あった。

なんかめっちゃどんよりどす黒い色をした、石ころが。

え、なにこれ神秘の珠片? 呪われてるとしか思えない色してるんだけど。

だが、どうにも本能はこれだと訴えているような気がしてならない。

つまみ上げると、以前のように問答無用で発動しそうな雰囲気はしていなかった。

「……というか、なんでこんなきったねえ色してんだ?」

たいまつに近づけても、その色が変わることはない。

なんだってんだいったい。

「まあとりあえず? 俺の目的は済んだし? この石ころも発動する雰囲気はないし?」

なんかよく分からんけど帰ろ。

くるりと背を向けて、この階層を後にする。マイゾウキン オブ トクガワに興味がないわけではなかったが、どうせ魔人が持ってても御金なんて大した意味を持つのか分からない。せいぜいがたいまつ職人にたいまつを作ってもらう時に使うくらいだろう。

だったら、適当にぶっ殺したモンスターからのポップだけで十分だ。

そんな考えを載せて、元来た道を戻っていると。

「たすけて! たすけてよぉ!!」

「逃げんな魔族め!」

「お?」

なんか、黒髪の幼女がおっさん二人から逃げていた。

……というか、あの幼女飛んでね? 背中から黒い翼生えてるよね?

あのフォルム、どっかで見たことがあると思うんだが、なんだったかなあ。

しかし魔族っつったな。

ってことはあれか、ユニークモンスターかあの幼女。

「待てゴルァ! 好事家が高値で買い取るっつってんだ!」

「その前に俺がお試ししてやるよグフフフフ!」

必死に逃げる、幼女。

好事家というワードが出たということは、……ああ、十中八九吸血鬼、それもヴァンパイアレディか。

あ、なんか幼女の紅玉の綺麗な瞳から涙っぽいものが……。

う~ん。

これは幼女を同じ魔族のよしみで助けた方が、良さげかなあ。

流石にあんなぺド野郎にむざむざ捕まえさせるのはちょっと良心が痛むもんな。

ヴァンパイアハンター の カネール が あらわれた !

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