軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

学業婚約者重視と言われたのに幼女の保護者に任命

「簡単に言うと王妃にも覚悟を示せだったね」

ヘルママがグリエダさんに渡していた手紙を読みながら、彼女から聞く。

ハイブルクの染みである変態執事アレハンドロと面会した学園の応接室を二日連続で借りることになった。

普段は入ることがない部屋を連続で使用することになると、悪い事をしている気分になるのはなんでだろうね。

「私達貴族にとって良い王というのは、自分にとって都合良く動いてくれるモノだ」

短い文しか書いていない紙を日に透かし、触れて凹凸がないか確認。

「別に王妃の子でなくとも、周囲を私達側の貴族達で固めたヘレナ側妃の子供、第二王子や第一王女でもいいとヘルミーナ様はおっしゃられてね」

むう、炙り出しならすぐには見れない。でもヘルママはそういうことするからなぁ。

「私も同感だった。アリシアも同意していたな」

ふーむ、周囲の飾り枠が暗号?モールス信号の基礎は姉と次兄にイタズラする時用に教えて、そしてあっさりとヘルママにバレたんだよな。この線と点で…チチ・オデキ・オシリ?

「王妃は王家に嫁いだ身で、今行使している権限の正当性は王代理であることに立脚しているが、それは継承権を持つ娘である第二王女がいることが前提だ」

シオ・スリコミ・アーッ。

「ヘルミーナ様は戴く者が姿を見せもしないで味方をすると思うなと、王妃を脅したよ」

イタイ・イタイ・イタイーッ。

「それでアレスト、ハイブルク、セイレムに第二王女の身柄を一時的に預けることになった。王妃にはそれぐらいしか信用を得る方法は無かったからね」

ミタワネ・ナラ・オネガイネ。

「ひっ!」

「セルフィル、君は何を読んでいる?」

「いえ、なんでもないデス」

グリエダさんが手紙を覗いてきたが読めるのは数行の俺への頼み事だけだ。

ハイブルクの闇の部分がバレることはなかった。

まさか殆ど忘れかけていたクソ親父の現状を知ることになるとは、怖い怖いよっヘルママッ!

昨日お尻をペンペンしたのは頼まれごとをしなかったら塩を擦り込まれるのっ!?イヤーッ!

よし、暗号なんて知りません。俺はヘルママの忠実な子供です。

「まあしょうがないですよね。王妃様も自分の派閥を作りませんでしたし、愚王の傍にいたから嫌だったのかな?」

「離すのじゃっ。ビクンビクンして怖いのじゃっ」

「わからないでもないが、まずは緩くても地盤を作らないと何も出来ないと思うよ」

「あ~、それは僕達が甘やかしすぎたせいが多々ありますね。まあヘルママが引き締めてくれるでしょう」

俺が愚王から国盗りしたときに手に入れた、エルセレウム王国の貴族が持つピアス。

当主の代行としてその貴族の権力を行使出来るようになるピアス。その手に入れた殆どを俺が面倒臭いと安易に王妃様に渡してしまった。

ハイブルクやアレスト、セイレムには返還されたが、愚王についた貴族達のピアスは返却されず。王妃はピアスを使って、その家の当主が許可しないと見られない書類を強制公開にして、不正を暴き出すことに使った。

俺もそのお手伝いをするはめになったが、大幅に力を削ぎ落すことに成功はしている。

だが代わりに、王妃は自分の派閥を持つ機会を失った。

ん~、王妃様の意図はなんとなく予想はついていたからのってあげたんだが、ヘルママが王都降臨でご破算になったね。

わかるのよ、王妃様の気持ちが俺には。

だって、今生の俺の実母が同じ様に必死に俺を守ろうとしていてくれたから。

だから何も聞かずにお仕事(趣味貴族イジメ、とくに宰相)を 粛(きき) 々としてやっていたんだけど、ハイブルク家の者はヘルママには逆らえません。

「でも、これを僕達に任せるのはおかしくありません?セイレム公爵邸あたりに閉じ込めておくほうが安全ですよ」

「やめるのじゃ~。お願いしますのじゃ~」

「王妃が私とセルフィルにと譲らなくてね。いくつか無理そうなお願いをしたら、あっさりと通してくれることになったから断れなくなってね…」

「いったい何を叶えてもらうつもりなんです?まあグリエダさんがいいなら僕もいいんですが」

「このままじゃと死んでしまうのじゃ~。やめてたもれ~」

さっきからちょくちょく俺とグリエダさんの会話に入ってくる声が泣き声に変わってきたので意識を向けることにする。

けっして、のじゃ~からたもれ~に変化したら興味が向いたのではない。

金髪幼女が必死にグリエダさんの左腕の先にあるものにしがみついていた。

「いくら王家でも、初対面で剣を抜くような者を傍に置いておくと酷い目にあうことがわかりましたか?」

「わかったのじゃ~。だからジェロイがお魚さんみたいピチピチしていたのに、どんどん動かなくなっているから離してなのじゃ~」

「動かなくなっても死にはしないけどね」

左手でアイアンクローをしていた人物を解放するグリエダさん。

床に鎧付きの男が、糸の切れた等身大の人形の様に崩れ落ちる。

うわっ、金属製の兜が指の形にへこんでいるよ。全然力を入れているようには見えなかったのに、グリエダさんの握力と腕力はいったいどれだけ重機に近いのだろうか。

「のわっ!?重いのじゃ!ジェロイっ!退くのじゃーっ!」

崩れ落ちた男に巻き込まれて伸し掛かられた幼女は、容赦なく男の頭を叩く。

う~ん、見事な手のひら返し。ルデガルド姉並みに気分屋ですかね。

さすがにアイアンクローでダメージが入っているところに、首からグリングリン動くような打撃はどうかと思う。

さてさて、面倒くさいものをヘルママに押し付けられたものだ。

リリアーヌ第二王女。

王妃様が唯一産んだ王女である。

それぐらいしか情報が無かった。

王族にも貴族にも興味がない俺よりは当主として色々知っているグリエダさんですらそのくらいしか知らなかったらしい。

そんな人物が登校時間の学園の正面門の中心で、堂々と名乗っても不審人物でしかない。グリエダさんが王妃様から軽くその容姿と性格を聞いていなかったら、王女と護衛の鎧を着た男は問答無用で衛士に警備小屋の不審者専用お部屋(牢屋)に連れて行かれていただろう。

そんなことになったら大問題になり、衛士の皆さんは運が良くて斬首。悪かったらプラス一族が国外追放になっていただっただろう。

何をしているか知らず、仕事に忠実でも、それが貴族、王族相手であれば罪になってしまう。

幸いグリエダさんには二人の正体がわかったので、辺境伯の力で強引に応接室に連れ込んでくれた。

そしてのじゃ姫とその護衛の自己紹介をさせようとしたときに問題は起きた。

そこそこ良い鎧を着た護衛と、貴族にしてはそこそこ良い服を着た幼女。

だが身分を示すようなものは持っておらず、グリエダさんが聞いていた容姿だけで、臣下の礼を取ることは出来ない。

ソファに座ったまま相手をしたら、のじゃ姫の護衛が無礼なっ!と叫んで剣を抜いて襲ってきた。

問答無用でグリエダさんが兜ごとアイアンクローをして止めてくれたので無事だったが、確保した護衛には少しずつ力を込めるようにしてもらった。

死ぬような目にあえば反省するだろうという、思いやりのある方法だ。

そしてグリエダさんがヘルママから渡すようにといわれていた手紙を受け取って読んだ。

ついでに王妃からのじゃ姫の身柄の全権限移譲が書かれた書類も渡された。それはグリエダさんに渡されたものと思うのだけど。

「セルフィルが持っていた方が有効に使えるだろう?」

そう言われては信頼に応えるしかない。

俺はグリエダさんに頼られるようなことはだいたい嬉しいのである。

だって暴力で大概を解決できる覇王様に比べて、ショタは愛でられる存在価値しかないからねっ!

「さて、自称第二王女様」

「のじゃっ!?自称ではないぞっ!」

俺の言葉に護衛の下から抜け出しながら驚くのじゃ姫。

「残念ながら貴方が王女だという証拠がありません。一応、城に確認を取りに行かせましたが、その使いが戻るまでは自称がつきます。昼食を取ってゆっくり戻ってくるように言ってありますけれど」

「王女っ!リリィは王女なのじゃっ!」

「明確な証拠を出してください。それがなければ昼すぎまで貴方は学園に不法侵入した幼女か、辺境伯にたぶん王女?と認識されている自称王女です。どちらがいいですか?一応、後の方は暇つぶしに学園を案内しますよ」

「自称じゃないのじゃー!」

脱出を止めて両手を振り回し始める自称第二王女。

どうする?とグリエダさんが視線で確認してくるけど放置です。

「さて不法侵入幼女、自称王女様どっちがいいです?」

「自称王女でいいのじゃぁ…」

ふっ、青い血が流れていると思っているガキンチョには、最初にマウントを取らないとね。

のじゃ姫が王女なのはグリエダさんの確認だけで十分証拠になるだろうが、まあどちらが上か精神に刻み付けておかないと後々が面倒だ。

さ~て、面倒くさい事を押し付けてられたんだからどうしようかな。

まったく大人達はダメダメですなぁ~。

いやヘルママは違うよ?だからこれ以上面倒ごとをショタに持ち込まないで。

出来ることなら宰相にっ!ダッシュ君でも可!

「う~ん、幼い子にはもう少し優しくしてあげようか。年上の子供が年下をイジメるのはよくないよ」

「僕もうすぐ十四ですよっ!?」

成人と認められるのが十五なのに婚約者に子供と言われたあぁっ!

グリエダさんの中では俺はまだ子供なのっ!?