軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

殴り返される覚悟はあるか?(何十倍で)

ジジイ二人が笑ってはいけない二日酔いを乗り越えて回復した後、ゆっくりと魔法協会に向かった。

向かうと事前に伝えていた到着時間を大幅に超えているが誤差誤差。途中で俺がプロデュースした喫茶店で昼食をとったの誤差の範囲内だ。

そして到着しました魔法協会。

「はぁー」

思わず声が出てしまった。

見上げる先には周囲の倍も建物がある。

「ん? セルフィル様は見たこともなかったのか?」

「僕の行動範囲外にありますから初めてですね」

「そっかそっか、なら今度行ったことがない所に連れて行ってやるよ」

「お断りします。ロンブル翁のお勧めは子供に悪い影響しか与えないので」

興味の無い場所にわざわざ向かうほどお暇じゃないのよ俺。

えー行こうよーと、ダダをこねるなジジイ。となりの真面目そうに見えていたのに中身は品の良いロンブル翁が興味を示しているから誘えや。

「しかし、圧倒されますね。高位貴族の屋敷よりお金をかけてませんか」

目の前の建物はエルセレウム王国魔法協会の本部だ。

無駄に高くて無駄にでかい。彫刻があちらこちらに飾られているけれど一つ一つの方向性が違い過ぎて逆に全体で見ると纏まりがある、かもしれない。あ、ウチ産等身大フィギュアも飾られてる。

「著名な彫刻師の作品ばかりですね。あそこの一体で兵百人の年間予算を超えますよ」

エイプ子爵の言葉に内心でうへぇとなった。美術館や教会でもあるまいし、成り上がると芸術収集に走るのだろうか。

減点方式で評価しながら魔法協会の建物に入っていく。

建物内ではローブを着た者たちにジロジロと見られた。

魔法使いは基本、某超有名魔法少年映画のようなローブを着用している。これは魔法使いとそれ以外の人類との区別がハッキリとわかるように、魔法使いたちで作った自分ルールだ。

なので協会に所属していない野良の魔法使いでも雇われるのに有利なために着ているのが多いらしい。

と、豪奢なローブを着ている魔法使いじゃないロンブル翁が教えてくれた。

魔力を身体強化に使用する魔力使いなのにローブを着用しているのは、単に魔法使いに喧嘩を売る輩がおらず、新しい夜のお店に入る時にすんなり入店出来るという呆れた理由であったが、それだけ力があると魔法使いは世の中の一般常識になっている証拠でもある。

ちなみにロンブル翁は、二、三十年前から夜のお店の界隈では本人が有名になりすぎてあまり効果はないけど、 稀(まれ) にちやほやしてくれる店があるので着ているそうな。

「お待ちしておりましたわ。ハイブルク公爵家の末弟様」

入ってその奥に受付があるのを確認して向かっていると、一人の女性が声をかけてきた。

エイプ子爵が前に出ようとするのを手で制す。

「ええ、ハイブルク公爵の末の弟、セルフィル=ハイブルクです。公爵家の者に図々しく声をかけてきた貴方はエルセレウム王国魔法協会副会長のマティルナ=ケクランでしょうか。あ、ごめんなさい。貴方がケクラン伯爵の何人目の娘かまではわからないんです。そこまで調べるほど暇ではない公爵の弟ですから」

にぃーっこり笑顔で嫌味たっぷりに応えてやった。

初対面で末弟と呼ぶのは、お前は家を継げる格じゃねえよと言っているようなものだ。まあマナーギリギリアウトの同格か格下への嫌味で使われるぐらいで、俺がハイブルク公爵家の一族と知っていて、貴族でも高位の者に対して使用すると大変な侮辱をしていることになる。

エイプ子爵が前に出ようとしたのは相手を咎めるためのものだ。

……愚者即斬とかじゃないよね?

代わりに俺が何倍もの嫌味と、お前よりも情報は集めているんだからなとやり返したのである。

「……こ、これはこれはわたくしのお名前をご存じとは」

「ええ有名みたいですね。貴族の娘と魔法協会の副会長の席を笠に着ていろいろとやられているようで」

口の端を引き攣らせながらも、自分の発言の話を上手く逸らそうとする女性、マティルナ=ケクランだけど、俺は追加の嫌味でさらに大きく引き攣らせる。

娼婦の情報半端ないのよ。

マティルナが会長のデコルに連れてこられた時に、デコルの見えないところで見せた見下す態度とかだけでなく。十分の一まで値切られた商人や競売を権力で負けさせられた貴族の愚痴まで教えてくれたのだ。しかも、協会の人物の中でダントツに彼女のそれ系の情報が多かった。

うん、女性を敵に回すと怖いね。

それでどうして彼女がマティルナだとわかったのか。

十分の一で買いたたかれたブツを着用しているのが見えたからである。

その名も白の網タイツ。

俺が調子に乗っていた頃に作成された負の遺産だ。生地をどれだけ現代日本に近づけられるか試行錯誤していたときに、何故か網タイツって伸びるよなと考えに行き着いた。

そしてなんかいた大きい蜘蛛を餌付けして糸を吐いてもらい紡いで、女性下着のレースを編む職人総出で作った最高傑作蜘蛛柄白網タイツが出来たところでヘルママに見つかり怒られた。

蜘蛛も職人も取り上げられて、コストに超が三つほど付く蜘蛛柄網タイツは王都のハイブルク家経営の下着専門店に、貴族でも引くお値段を付けられてこっそりと飾られていた。

まさか値切りに値切られたとはいえ、あれを購入する人物がいて出会うとは思わなかったよ。

ちなみに『華と蝶』の女主人メリダさんのタレコミだ。お金を貯めて買おうとしていたのを買い叩かれてかなりのおかんむりであった。

日中に見るのはちょっと憚れる白タイツを自慢したいのか、やたら深めのスリットのはいったスカートが痛い。

「どうしました? ハイブルク公爵の末弟は魔法協会から直々に呼び出されたんですよ。早く案内してもらえますか。もしかすると、貴方が呼び出しました?」

「……こちらにどうぞ」

ギリリッと聞こえる歯ぎしりをして睨みつけながらも、マルティナは案内し始めた。

彼女はいくら煽られても俺を帰らせることは出来ないのだ。

魔法使い全員を撤退させると国を脅迫出来るのは会長しか出来ないと判断しての煽りである。自分の上司が呼んだ国からの使者である俺に帰らせたり危害を加えたら彼女は破滅するだろう。

まあ帰れと言われたら素直に帰って、無体な事をされたと報告するだけだ。

「貴方の方から微風が来るのですが止めてくれませんか。僕の敏感な御鼻にはちょっときつくてきつくて」

「……申し訳ございません」

ギリリリリィッ、人って寝ている時以外でも歯ぎしりって大きいのね。

怒りで漏れ出た魔力の風でお前のきっつい香水の匂いがこっち来るんだよと、婉曲しないで丁寧にしただけの侮辱発言にもマルティナは歯ぎしりが大きくするだけで耐えた。

馬鹿にするならその後どうなるかぐらいわかっていてしてほしいものだ。

会長の部屋はどこにあるのかな? その間は魔法協会副会長の忍耐力がどのくらいか試すことになっちゃうぞ。