軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話王城の惨状その1

「やってられますかぁっ!」

俺は手に持っていた書類を折る。

「必殺な便利屋さんを王妃様に取られ、隠し財産は凍結され、公爵子息なのに臨時のアルバイトでお城に二十四時間拘束はおかしいっ!」

折って折って折り詰めて見事な見事な鶴を折った。

夏休みの度に折らされる二県の内の一つ生まれは伊達ではない。もう一つの県人とはその話だけで仲良くなれる。そしてテレビ放映時の規模で仲間割れをする儚き間柄。

「拘束は我慢しますっ! でも僕はラブコメがしたいんですっ! ダッシュ君の様な灰色の青春はもう送りたくないので、すっ!」

俺は言葉と共に鶴を飛翔させる。

折り鶴は飛ばぬと思うだろう。だが空飛ぶ鶴の折り方もあるのだ。まあそんなの覚えてないから、ペン内蔵型にしたのを投擲しただけ。

「愚王の執務室でグリエダさんと二人きりで、『ま、これもイチャコラか♪』とか考えてました。でも、騎士団とか貴族の私兵の訓練に頻繁に呼ばれてます! ヘルママは義理の母になるのだからとめっちゃ呼び出します! ほぼ日中ボッチの事務処理アルバイトは泣くっ! 啼くのですぅーっ!」

募集要項詐欺! ヘルママは絶対に必殺な便利屋さんを王妃様に取られたことを根に持って、俺に嫌がらせをしているんだ。

「誰が灰色の青春ですかぁっ! グワッ!?」

「あ」

飛翔したペン内蔵折り鶴はジャストタイミングで扉を開けたダッシュ君、の額にペン先を嘴に付けてたから突き刺さった。

◆◆◆◆◆◆◆◆

「そろそろ宰相様にセルフィル様をチクってもいいですか」

「怖ろしいことを考えるようになったね。愚王派の貴族の大半が元貴族の犯罪者になったから、後処理仕事マシマシで殺意マシマシの宰相に僕を生贄に捧げようとするとは」

頭に布を巻いてジト目のダッシュ君が絶対的権力者上司の俺を売ろうとしてきたのに感心した。

鶴がクリティカルヒットして出血したダッシュ君を介抱し、お供にした俺は城内を徘徊していた。

ボッチで無限の事務処理は脳を破壊する。なのでグリエダさんが訓練から戻って来るまでの間は休息(という名の気晴らしの覗き)を決行することにしたのだ。

「僕より仕事を捌いているのはこの城に十人もいないと思うのです。だから少しは忙殺されている連中を見て心を癒していいと思いませんかダッシュ君」

「僕が一人寂しく書類を片付けていたセルフィル様を見るようにですね」

反抗期? 反抗期なのかな?

「ところでどうしてメイド服なんですか?」

「顔が無で、今更の事を聞いてきますね」

程よく国の中枢でこき使われて、感情が動かなくなってきたのだろう。真のブラック社畜……いや、真の国畜に近づいている証明だ。

長兄から絶対に引き抜かれるなと厳命されているから、どうなっても高級取りで食いっぱぐれることはないぞダッシュ君! その代わり労働に見合うかはその時の状況次第だ。俺の予想では、この国はあと数十年はどこも忙しいと思うけど。

「いい指摘です。ここはどこですか?」

「え、廊下ですけど」

「そうではなくて、ここはお城です。貴族よりも使用人が多く働いています」

「はぁ」

「だからメイド服なんですよ」

「人数が多いからというのはまぎれるのはわかりましたけど、どうして男のセルフィル様がメイド服を着る……。すいませんでした。そういうご趣味でしたね」

「前に僕が女子生徒の制服を着用したから女装趣味ではないですからね」

可哀そうな人を見る目をするダッシュ君を注意しておく。絶対にグリエダさんの前で言うなよっ! 『セルフィルはそういう趣味だったのかい? よし今から幾つか見せてもらおうかな』とか言いそうだ。

「変装するなら執事など男性の方が良かったのですよ。でも僕の体型だと成人男性とは見られなくて」

「ああ、男の子供の使用人は滅多にいませんもんね」

「それ以上、僕の頭頂部をしみじみとした目で見つめたら、大DOGEZAギプスを付けてもらいますよ」

すいませんごめんなさい。ハイブルク公爵様のなされたようなことはしたくないですと、謝るダッシュ君をお供にし、王城内を徘徊することにした。

「では王城探検に出発しましょうか。えいえいおー!」

「ぉー」

「おーなのじゃ!」

ん~?

掛け声にやる気ゼロMAXのダッシュ君の他に、もう一つやる気MAXの掛け声が追加されていた。

「どうしてここにいるんですかリリィ?」

いつの間にかほぼ確玉座持ち第二王女のじゃ姫リリアーヌがダッシュ君の隣で拳を振り上げていた。

「暇だったから一緒に遊ぶのじゃっ!」

「う~ん、子供の説明は詳細省いてど直球」

リリィがのたまうには、お勉強を自主的に休んで愚王の寝室で昼寝をしていたらしい。隣室がうるさかったから覗いてみると、メイド服の俺とダッシュ君が部屋を出ていくのが見えたからついて来たそうな。

「わらわも置いてあっためーど服に着替えたのじゃ。お忍びはまぎれる事にしんずいがあるのじゃ」

「僕の予備を着たのか~」

どうりで少し丈が余っている。ん、少し? ……よし忘れようか、きっと俺の幼少期のものを間違えて持って来たのだろう、あの変態執事が。

「そこまでやる気があるのなら同行を許可しましょう。ただし僕の言う事は聞く事、それが約束出来ない子は連れて行きません」

「約束するのじゃっ!」

元気に応えるのじゃ姫。

俺が事務処理で心が病みかけたように、この子も慣れない城での暮らしで心が疲労しているのだろう。決してハイブルク邸で獣や魚を獲り放題で過ごしていたから窮屈に感じたのではないと思う。

「では僕達は冴えない、中身はモテない、オジサマにモテモテ男なダッシュ君について行くメイドAとBです。呼び止められて仕方なく己の持ち場から離れて付き従うメイドになります」

「僕はそんなことしたことありませんっ!」

「はいはいはい。でもメイドを付き従えて歩く貴族には憧れたでしょ?」

「……」

そこで沈黙するのがダッシュ君らしい。