軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

雨上がりの後

群生相化した暴れ河馬をわざと暴走させた件で、血流し川の出張所を取り仕切っていたリシが捕まり、他の職員たちも管理責任を問われることとなった。

その後、法廷神殿の場で横領や収賄などの余罪が次々と明るみになり、出張所ぐるみでの犯罪行為が長年続いていたと立証された。

結果として関与してなかった買い取り所の数名を残して、ほぼ全員が収監される流れとなる。

さらに監査役であった治安課の数名も、利益の供与を受けたとして逮捕された。

そのせいで冒険者局はかなりの騒ぎに発展し、任命責任や人員の補充に追われる始末となってしまう。

血流し川の出張所は三日ほど閉鎖されたが、翌週からは人事が刷新されて営業を開始した。

そして以前からの狩り場の仕組みであるが、有効性が認められ、ある程度残されることとなる。

具体的には、下流の狩り場の予約制はそのまま。

ただし長期の専有は認められず、週単位での入れ替えとなる。

上流狩り場はくじ引きの抽選制となり、できるだけ公正な割り振りがされるようになった。

さらに出張所の職員も長くて二年以内には異動させると冒険者局が公言しており、再発を徹底的に防ぐ心構えのようである。

また採石河原への暴れ河馬の解放も、継続して行われている。

もっとも以前ほどの賑わいはなく、むしろモンスターが倒されたあとの川底から蹴り上げられた赤い砂鉄目当ての冒険者のほうが多いくらいだ。

だいたいそんな感じで騒ぎから一週間が過ぎ、血流し川の狩り場は落ち着きを取り戻しつつあった。

そしてトールたちはその間、せっせと石山を高く積み上げていた。

合間合間の雨でスキルポイントがたっぷり稼げたおかげで、ムーとソラの下枝スキルもレベル3まで育っている。

装備もコツコツと集めた砂鉄で、トールとソラ、ムーの赤鉄の胸当てが完成していた。

ただ幼いムーの分は、かなり薄くして重さは減らしてある。

赤鉄製の剣を作る話もあったが、今使ってる鋳鉄の剣の最大切れ味には及ばないため、ナイフだけ一新してある。

あとは流れてきた木の中に赤く変色した赤流木があったため、それを譲ってもらいソラは若木の杖を卒業することとなった。

他には特大の赤水の邪霊から凍った精霊核が無事に回収でき、大と小の二種類の雨晶石が揃った。

次の狩り場は荒野なので、水の補給用として売らずに手元に置いてある。

今のところ、小さい方はムーが気にいって、水を噴射する遊び道具となっているが。

大まかだが装備も充実し、スキルもそれなりに成長はできた。

次へ進む準備も整ったと言えよう。

そして晴れ渡る今日、とうとう石山たちが向こう岸まで連なる光景が完成した。

見た目は悪いが、機能だけなら立派な橋である。

この橋は予約制を継続する冒険者局にとっては、かなり都合の悪いものであるはずだ。

だが特に注意や勧告もされず、橋造りは黙認される形となっていた。

おそらく利用できるのが数名なうえに、トールがこの狩り場を卒業すれば、維持が困難になると調査済みであったからだろう。

ようやく出来上がった橋を、男たちは押し黙ったまま眺めていた。

トールに肩を叩かれて、ロロルフはようやく視線を石山から外す。

「そろそろ行くか?」

その言葉に夢から覚めたような顔つきになったロロルフは、静かに笑みを浮かべて頷いた。

先陣を切るのはディアルゴと三兄弟だ。

「では、失礼して」

「いってくるぜ!」

「ここに来たときのこと思い出すな、兄貴」

「ああ、とうとうだぜ、お前ら!」

タパとタリの双子は、今回は橋の見張りとして残る。

「……よき狩りを」

「……存分に楽しめ」

続いてトールたちである。

「ほら、トーちゃんがおぶってやるぞ」

「ムーはひとりでもいけるけど、トーちゃんがそうしたいっていうなら仕方ないな」

「ユーリルさん、足元、気をつけてくださいねー。かなりすべりますよ」

「はい。あら、いい風ですね」

四人を見送るのは、ベッティーナとゴダンの二人組だ。

あっという間にEランクに上がってきた二人だが、ちょくちょくこの河原へ顔を出していた。

もっとも橋目当てではなく、トールたちへ会いに来るのが目的であったようだが。

「私たちは抽選で河馬を狩るつもりだから、待ってなさいよ。すぐに追いついてみせるから」

「ムー様、お気をつけて」

手を振る四人に別れを告げて、二組のパーティは誰もいない土手を歩き出す。

途中、対岸を進む人影に驚いたのか、次々と声が上がりだす。

熱い羨望の眼差しを受けながら、トールたちはゆったりと上流へ向かっていった。