軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

騎士団訪問

「エーレルト騎士団のみなさん、お世話になっております。錬金術師のカレンです。差し入れに参りました!」

「おお! 錬金術師のカレン殿と言えば、血筋の祝福に苦しまれるジーク様を癒したという、あの!」

「去年はEランクだったというのに、またたくまにBランクに昇級されたと聞いたが、事実なのか!?」

「上級錬金術師殿からの差し入れとはありがたい……!」

カレンは大きなバスケットを持って、騎士団の訓練場に登場した。

騎士たちは戸惑いはありつつも、おおむね好意的にカレンを迎え入れた。

やはり、Bランク錬金術師という肩書きが強いのだろう。

それに差し入れもまた強力なファクターに違いない。

Bランク錬金術師からの差し入れともなれば、誰だって歓迎してくれるはずである。

こんなこともあろうかとカレンはオリハルコンの錬金釜を王都から持ってきていた。

王都の錬金工房はハラルドに任せているとはいえ、オリハルコンの錬金釜は貴重すぎて、ハラルドに管理を任せるのは気の毒というものだろう。

錬金術ギルドに預けてもよかったものの、アダマンタイトの錬金釜よりもずっと軽いので、今回はオリハルコンの錬金釜と共にエーレルトにやってきた。

普段はエーレルト伯爵家の人間に嫁いだ妻のための部屋、つまりはカレンの部屋の金庫に預けさせてもらっている。

そこからオリハルコンの錬金釜を引っぱり出して、チャッと作ってきた。

ちなみにセプルとウルテもいるのだが、彼らはカレンに従う使用人の扱いで、貴族社会では客の一人としては数えられないものらしい。

未だにサポーターの扱いに慣れないカレンは咳払いしつつ気を取り直した。

「今度わたしの婚約者となるユリウス様の! 愛するエーレルト領を守るために努力されているみなさんを労るため、疲労回復ポーションの蜂蜜レモン湯を持って参りました」

「疲労回復。そのようなポーションがあるのか」

「初耳だが、さすがは一年でEランクからBランクまで駆け上がった錬金術師、ということだな」

「ありがたい。騎士団長が近頃殺気立っていてな、訓練が厳しさを増していたところだったのだ」

この場にいる騎士たちのほとんどは知らない顔だった。

カレンは王都のエーレルトの騎士たちとは多少の面識がある。

なので、ここにいるのはエーレルト領に常駐している騎士たちばかりなのだろう。

騎士の数が少ないのは、ヘルフリートが今年から復活する狩猟祭のために森辺の会場の設営に向かっていて、それに大半ついていっているからだろう。

「お鍋にたくさんありますので、休憩の合間に飲んでくださいね。それと、みなさんを支えてくれる奥様や恋人のみなさんへのお土産に、美肌のポーションを――」

「美肌のポーション!? 私の恋人がどうしてもほしいと言って王都まで行ってしまった、あの!?」

「いいのですか!? 王都でも品切れ続出とうかがっていますが!?」

「妻がどうしても欲しいというのに手に入らないと落ち込んでいたのです!」

「ありがとうございます! 娘がずっと欲しがっていたのです! これで不在にしがちな父親としての威厳を示せます!」

将を射んと欲すればまず馬を射よ、ということわざがある。

騎士団の騎士たちを落としたければその家族、妻、娘、恋人を落とすのが早いと思って用意した美肌のポーションは効果てきめんだったようである。

カレンはにっこりと笑ってバスケットに入れてもってきた瓶を騎士たちに配っていった。

「感謝はどうぞユリウス様へ。ユリウス様がいるから私はエーレルト領にいるわけですからね」

「ユリウス殿に感謝を!」

「よくぞ錬金術師殿を口説き落としてエーレルトのものとしてくださった!」

騎士たちは口々にここにはいないユリウスに感謝の言葉を捧げている。

ユリウスの教えを拒んだ騎士団長のように、ユリウスに隔意を抱いてはいないらしい。

カレンはほっと胸を撫で下ろした。

「今後ともユリウス様をよろしくお願いしますねっ!」

「もちろんですとも」

「私ごときはユリウス様の足元にも及びませんので、エーレルトの精鋭たちとは違い、ダンジョンにお供することもできませんが……」

「できるだけの努力はいたします!」

和気藹々とした空気である。

常日頃からのこういう活動が、いずれカレンの夫となる者を助けるだろう。

これぞ内助の功、とカレンは胸を張った。

「小回復ポーションはお持ちではないのですね」

「そういったポーションはエーレルト領の錬金術師の方から購入されていると思います。わたしが割り込んで、この地の錬金術師の方のお仕事を奪うわけにはいきません。ずっとエーレルト領にいるわけじゃありませんし」

「ああ、そうですよね」

「ですが現在かなり在庫が少なくなっておりまして、追加の納品も難しい状況です。足りない分だけでも、制作いただけると大変助かるのですが」

「なるほど……騎士団長にご相談してみますね」

「でしたら、すぐにでも騎士団長の執務室にご案内いたします!」

カレンの目的は、最初から騎士団長である。

目論見通り、カレンはスムーズに騎士団長の執務室に案内された。

平の騎士たちを味方につけつつ、目的を果たすために騎士団長に近づく――すべてカレンの計画通りである。

「騎士団長、錬金術師のカレン様がお越しです」

「入れ」

部屋の中にいたのは巨大な男だった。

執務机の側に立っていて、カレンが見上げるほど背が高い。ユリウスよりも高いだろう。

だがそれ以上にこの男が大きく感じるのは分厚い肉体のためである。

盛り上がった筋肉に鎧われた体が窮屈そうに騎士服を身につけていた。

黒髪に、灰色の目をしている。

その容姿は肖像画で見たことのあるヴィンフリート・エーレルト――ユリウスとヘルフリートの父とよく似ていた。